Vol. 2(1999/4/11)

[今日の本]ゴキブリ大全

[DATA]著:デヴィッド・ジョージ・ゴードン/訳:松浦俊輔/発行:青土社/価格:2400円/ISBN4-7917-5701-7/初版発行日:1999年3月10日

[SUMMARY]ゴキブリのすべてを知りたいあなたに

ゴキブリに関する広範な話題を集めた本。分類、進化、成長、生態などの基本事項から、欧米の文化におけるゴキブリや人間生活とのかかわり、ゴキブリグッズ、飼い方、退治方法まで扱っている。

[COMMENT]ゴキブリは本当に悪者か?

最初の書籍紹介からいきなりキツイ本で申し訳ありません。この本、表紙にゴキブリの型押し(ゴキブリのイラストをレリーフのように浮き上がらせている)までしてあるので、たいていの女性は手にも取らないこと必至です。内容も内容だけに爆発的に売れることはまずない本でしょう(これ、誉め言葉のつもりなんですが)。
内容は、アメリカ人の生物学者が書いたものですが、アメリカのサイエンス入門書的な書き方なので、難しくもなく、話題も豊富です。科学的な厳密さや詳しさはもうひとつなのですが、初心者でも読みやすい本です。ゴキブリについての類書は現在ほとんどないので貴重な1冊と言えます。

個人的にはゴキブリは「最も注目している動物」です。ゴキブリは不当に嫌われているのではないか?と私は思っています。例えば、野生ゴキブリ。ご存じない方も多いと思いますが、ゴキブリは野生生活する種類の方が圧倒的大多数です。住む場所は、森林の林床。熱帯林なんかうってつけです。食べ物は、動物の死骸や植物の遺骸(落ち葉など)。つまり、彼らは「分解者」として生態系に大きな貢献をしているのです。ただ、雑食であるがために一部の種は人間生活に深く入りこむことになりました。そのイエゴキブリ(屋内生活ゴキブリの総称)についても、どのような害悪を人間にもたらすのかきちんとした評価がなされているのでしょうか?(病原菌を媒介するというデータはあるようですが) ゴキブリは慎重に再評価されるべき動物ではないでしょうか。
野生ゴキブリを飼ってみたいなあ、とちょっと思うこの頃です。ちょっとだけね。

[追記]同書は4月4日付け朝日新聞の読書欄にてとりあげられました。その後、9日に紀伊国屋書店新宿南店に行ったところ、先月まで店頭から全然減る気配のなかった同書が売り切れていました。この本を売り切らせてしまうとは、朝日新聞の影響力恐るべし。


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