Vol. 4(1999/5/9)

[今日のいきもの]アライグマ

かわいい困り者

[EXPLANATION]
飼育されていたアライグマが脱走し、野生化した…という話はよく聞きます。最近も新聞で「首都圏で繁殖しているのが確実」と報道されました。そこで、アライグマについてちょっと解説しましょう。

和名:アライグマ
学名:Procyon lotor
分類:食肉目(裂脚亜目)アライグマ科
食肉目裂脚亜目には、イヌ科、クマ科、パンダ科、アライグマ科、イタチ科、ジャコウネコ科、ハイエナ科、ネコ科の8つの科があります。「クマ」と名前がつきますが、アライグマはクマの仲間とは区別されます。
タヌキとアライグマを見間違う人もいるようですが、実際に比べて見ると違いははっきりわかるでしょう。タヌキは「イヌ科」です。どこからどう見てもイヌの骨格をしています。ところがアライグマは、前足が短いので、歩いている姿は前のめりになります。足の動きもちょこまかちょこまかしています。
生息地:カナダ南部〜中央アメリカ
それ以外の地域に見られるものは、人為的に移入されたものです。日本にいるアライグマはほとんどがペットとして輸入されたものです。
かつてアライグマが登場するアニメーション番組があったせいか、そのかわいらしい顔が人気なのか、日本人にうける動物ではありそうですね。
食性:雑食
雑食は強いです。ある程度整った環境なら繁殖は容易でしょう。
行動:夜行性、人家を好む
ある家で、屋根裏になにか動物が住みつきました。ネズミかな? と思ったけど、ネズミにしては足音が大きすぎる。じゃあ、いったい何者? 調べるとアライグマだった…という実話があります。人間をこわがらないし、残飯などもあさるので、彼らといざ対峙するとかなりやっかいな相手でしょう。

そういえば、アライグマの行動はタヌキにも似ていますね。夜行性で、人間に接近する傾向がある。アライグマほどではありませんが、タヌキも人間に接近する動物です。キツネが山を好むのとは正反対ですね。雑食性の動物にとっては、残飯、農作物などが容易に手に入る環境は暮らしやすいのでしょう。

野生のアライグマの問題点は、現状の生態系を破壊することでしょう。報道によりますと、北海道ではアオサギの営巣地が消えたり(アオサギが営巣地を移動した)、キタキツネが減ったりしたそうです。行動が似ているという点では、上記のタヌキはかなり直接的な影響を受けることが予想されます。本来いないはずの動物が繁殖するというのは、環境・生態系の維持には好ましいことではありません。野生のアライグマはもともとペットだったと推測されます。これはつまり人間から脱走したといういことですね。人間に接近する傾向があるといっても、それは飼育に適しているということではないのです。アライグマは、かわいいからといって安易に飼っていい動物ではありません。

(REFERENCE:決定版生物大図鑑 動物 哺乳類・爬虫類・両生類/発行:世界文化社)


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