いきもの通信 Vol.9[今日の事件]東京都心サル逃走/そのエサはサルにとって幸福なのですか? 

Vol. 9(1999/7/4)

[今日の事件]東京都心サル逃走

そのエサはサルにとって幸福なのですか?

[ON THE NEWS]
6月16日、東京都港区西麻布でニホンザルの目撃情報が警察に寄せられた。捕獲には失敗した。このサルは8日に八王子市で目撃され、日を追って都心に近い場所でも目撃されたサルと同一と思われる。23日には港区六本木に現われ、主婦が食パンを与えた。ベランダでくつろぐ姿は写真撮影もされ、翌日夕刊1面にカラー写真が掲載された。
(SOURCE:朝日新聞夕刊(東京版)1996年6月16日、24日(夕刊))

[EXPLANATION]
夏も近くなってくると、全国各地から逃走動物のニュースが時々飛びこんでくるようになります。今年は何が出てくるかな〜、と私は毎年楽しみにしています。時々とんでもない珍獣が出てきたりしますからね。さて、今年はしばらく前から東京都心でニホンザルが逃走中です。7月4日現在捕まったという報道はありません。

そうこうしているうちに上記のような記事も載るわけですが、「食パンをちぎって投げると、おいしそうに食べた」ですって!?
野生動物(特に哺乳類)に対して絶対してはいけないこと、それはエサを与えることです。エサを与えると人間に慣れてしまい、また、その食べ物の味も覚えてしまいます。その結果、人家に入って台所を荒すようなことがおきかねません。
「エサを与えない」——これはサルに限らず、タヌキ、クマ、シカ、(野生の)アライグマといった人間生活に近接している野生哺乳類すべてに言えることです(特にクマの場合は人間に致命的な被害を与える危険があります)。一度人間生活に侵入してきた野生動物は侵入を繰り返すので、最終的には捕殺せざるを得ません(動物園は引き取ってはくれませんよ!)。また、お互いに病気をうつしあう可能性もあることを忘れてはいけません。エサを与える事はお互いにとって意外とリスクが高いのです。
エサを自分の手で与える——ああ、動物とコミュニケーションできるなんて幸せ! でもそれが引き起こしかねない結果も知っておいてください。人間にとっても動物にとっても不幸にならないためには、彼らを追い払うことも必要なのです。

※その後の話

この逃走サルは8月14日、上野動物園職員によって捕獲されました。その後、高尾自然動植物園で飼育されています。
1999年12月16日付け朝日新聞(東京版)によると、このサルのDNAを調べた結果、生まれ故郷が南アルプスであることがわかり、飼われていたサルであることは確実、と報道しています。上記の文章を書いた後、実は私もこのサルが飼育されていたサルだろうと確信しました。人間をこわがらないこと、単独行動であること(野生なら群れで行動するはず)から野生サルではないことはかなり確実に思われました。
1999年9月11〜12日には川崎市でペットショップが飼っていたニホンザルが逃走し、小学生がけがをする事件もありました。最近のペットはどんどん希少価値を求められるようになってきていて、えっ、と驚くような動物も売られていたりします。この問題についてはいずれ取り上げたいと思います。

さて、例のニホンザルが野生でないとしても、上記に書いた「野生動物にエサを与えない」ということはやはり重要なことなのです。これも忘れないようにしてください。

(1999年12月18日)


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