Vol. 11(1999/7/18)

[今日の事件]エサを与えるのは良くない事だが…

神奈川県でタイワンリス被害拡大

[ON THE NEWS]
神奈川県で昨年秋からリス被害が急増。樹木やユズ、夏みかん、さらには電話線まで被害を受けている。県は横浜市、鎌倉市など8市町に呼びかけ、「タイワンリス被害に係る打ち合わせ会」を開き、対策を練っている。
(SOURCE:朝日新聞夕刊(東京版)1999年7月13日)

[EXPLANATION]
和名:
タイワンリス
学名:Callosciurus flavimanus
分類:齧歯目リス科

動物関係のニュースなんて数が少ないと思っている方が多いかもしれません。実際、テレビのニュースで取り上げられることはかなり少ないのですが、新聞だと意外と多く載っています(科学面の記事を除いても)。今週もいくつかの話題があったのですが、珍しさでこれを選びました。
タイワンリスはその名の通り、台湾に生息しますが、広く東南アジアにも分布しています。リスの中では南方系といえるかもしれません。下記の書籍によりますと「1935年ころ伊豆大島の動物園から約50匹が脱走し、増殖して全島に生息するに至り」というのが日本での定着の始まりのようです。ただし全国的に分布するのではなく、神奈川、岐阜、和歌山など離散的に分布しています。
本州、四国、九州に生息するホンドリスとは大きさもだいたい同じ。見分け方は腹が白い方がホンドリス、腹も背も同じ色なのがタイワンリスです。

この記事の結論では鎌倉市の広報紙の呼びかけでしめくくっています。——「市民や観光客に愛きょうを振りまいているが、ともに生きるため、あえて、え付けをやめましょう」

この主張、私がこれまでにも書いてきた事と同じです。そうです、野生動物にエサをあげるのはやめましょう……
と、まあ新聞記事に先に結論を書かれてしまったのですが、もう少し突っ込んで考えてみましょう。実はちょっと気になる事があります。
やはり下記の書籍によりますとタイワンリスは「森林にすみ、原産地の台湾では林業の大害獣」と書かれています。なるほど、つまり普段は人家周辺にいるわけではなさそうです。上記記事でも人家に入り込んでくるとは書いていません。ただし、「電線を伝って軒先や戸袋に巣を作る」とは書いてあります。いずれにせよそれほど積極的に人間に近づくわけでもなさそうです。ということは、え付けとタイワンリスの増加の関連性は低いのではないでしょうか。彼らの食生活で人間の与えるエサはどれほどの割合なのでしょう? 新聞記事ではこのあたりについては何も書かれていません。タイワンリスの食性や行動について慎重に検討しなければ見当違いの対策になりかねないのではないでしょうか。きちんとした調査が行われている事を願います。

今回こういうことを思いついたのは、実はあるネズミに関する本を読んでいたからです。リスもネズミも齧歯目。その生活は似ているのかもしれない、という連想が働いたのです。この本については次回詳しく紹介します。

(REFERENCE:決定版生物大図鑑 動物 哺乳類・爬虫類・両生類/発行:世界文化社)


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