Vol. 16(1999/8/22)

[今日の本]カエルの不思議発見

カエルの不思議発見/「四六のガマ」の科学
[DATA]著:松井孝爾/発行:講談社(ブルーバックスB1255)/価格:800円/ISBN4-06-257255-9/初版発行日:1999年6月20日

[SUMMARY]カエルの手頃な入門書

カエルについてのあれこれをまとめた本。日本のカエル、著者の専門の南西諸島のカエルの他、世界の奇妙な生態のカエルを多数紹介する。

[COMMENT]カエルは想像以上に多種多様な動物

カエルは奥が深い。カエル(無尾目)の種数がどれほどになるかご存じでしょうか。この本によると約4700種だそうです。これは陸生の脊椎動物としてはかなり多い数字です。ただし、この「種」の具体的な数字は非常にあいまいで、少々古い1984年の本では哺乳類4500種、爬虫類5000種、両生類2000種となっています。このうち、比較的大型でよく研究されている哺乳類の種数は現在もあまり増加していません。爬虫類はほとんどが有鱗目(トカゲ、ヘビ)に属します。陸生の脊椎動物の「目」レベルではこれがおそらく最大です。両生類はほとんどが無尾目、つまりカエルに属します。カエルは有鱗目に次ぐ2番目の大グループなのです。もっと新しい1996年発行の別の本では哺乳類4500種、爬虫類6000種、両生類3400種となっており、両生類の増加ぶりが突出しています。いずれも原資料が不明なのでどこまで正確かはわからないのですが、両生類が増加しているのは新種の発見が非常に多いことを意味しています。いずれは有鱗目に並ぶ大グループになるかもしれません。
ところがカエルには研究者も少なく、多種多様な生態もよく知られているとは言えません。大きなカエル、小さなカエル、毒のあるカエル、子育てするカエル(胃袋で子どもを育てるカエルもいる!)、砂漠にいるカエル、胎生のカエル、卵から成体が出てくるカエル(つまり卵の中でオタマジャクシが成長する)…カエルは住む場所も、産卵・子育ての方法、成長の過程もさまざまなのです。これらはいずれも本書に登場するカエルたちです。カエルは水辺でゲロゲロ鳴いている動物——という先入観をこの本で修正していただきたいと思います。
ただ、あまりにもバリエーションが多すぎるせいか、あらゆる内容を新書サイズに詰め込むことは難しく、非常に駆け足の印象があるのが少々残念でした。

さて、この本を読んで困ったのが、国外産の種の和名が私が通常使っているものと異なることでした。例えば、ゴリアテガエルがゴリアスガエルだったり、アカメアマガエルがアカメキノボリガエルだったり…。和名というのは実はどこかの機関がきちんと決めているのではなく、個々人の研究者が命名しているため、このように複数の和名を持っている動物も多くいます。研究者にもそれぞれの言い分があってなかなか統一できないのが実情なのです。
私の場合、爬虫類・両生類に関しては千石正一氏(爬虫類・両生類の研究者で、TBS系テレビ「どうぶつ奇想天外」の監修者)の和名に基本的に従って表記しています。


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