Vol. 17(1999/8/29)

[今日の事件]死んだ動物への償いは

動物殺し事件相次ぐ

[ON THE NEWS]
8月17〜22日、千葉県市川市の路上など3ヶ所で計63羽のドバトの死骸が発見された。解剖したところ、首をひねられたのが死因と推測された。

8月22日、愛知県江南市の市勤労会館の池で約100匹のコイが死んでいた。エアガンの弾が落ちていたことから、エアガンで撃たれたとみられる。
(SOURCE:いずれも朝日新聞(東京版)1999年8月23日)

[EXPLANATION]
夏になると動物が殺されるという事件がよく起こります。一昨年は学校で飼育していたウサギが殺される事件がありましたが、これもやはり夏休み中の8月のことでした。

人間が殺された場合、犯人の罪は非常に重いものになります。では、殺されたのが動物の場合はどうなるのでしょうか。今回の2事件については、ハトの方は「軽犯罪法違反(鳥獣の死体の投棄)」と「鳥獣保護法違反(無許可捕獲)」、コイの方は「器物損壊容疑」となっています。両事件の罪状が異なるのは飼育動物か野生動物かの違いからくるものです。コイは飼育されていたので「器物損壊(刑法)」、ハトは飼育されていないので「鳥獣保護法違反」となるわけです。ここでの「器物損壊」とは、その「器物」の所有者(ここでは飼い主)が被害を被った、という意味です。飼育されていない動物、つまり野生動物については「鳥獣保護法」があり、これで守られているわけです。野鳥を勝手につかまえたり、クマを無断で撃ち殺してはいけないのです。
ところが、これらとは別に動物に関する法律があります。「動物の保護及び管理に関する法律」(動管法)です。しかし、実際にはこの法律が適用される事はほとんどないようです。というのも罰則が「3万円以下の罰金」と非常に軽いためなのです。前述の「器物損壊」の場合は「30万円までの罰金か懲役刑」となっており、こちらの方が重罪です。一昨年のウサギ殺しもやはり器物損壊の容疑になっています。
「動物」が「器物」であるというのは何か奇妙な感じがするのですが、まあ、法律用語がそうなっているのならそれでもいいでしょう。ただやはり感じるのは「法律」とは人間のために作られたものなのだなあ、ということです。法律とは人間社会におけるルールですから、そのようになるのは当然なのでしょう。ただ、「器物」というのはあまりにも無機的な扱い方だな、と思います。——もっとも、動物のための法律を作ろうとしても、動物園のゾウも子供が飼うカブトムシも1つの基準で扱わなければならないのは難しいことでしょう。ゾウ殺しとカブトムシ殺し、それぞれの罰は同一でしょうか。差があるとするならばその根拠は? これまた難問です。

ところで、上記の「鳥獣保護法」にも「器物損壊」にも該当しないケースというのも発生し得るということにお気付きでしょうか。「飼い主がペットを殺す」という場合です。これまた難しい状況が考えられますが(安楽死など)、例えば飼い主がペットを虐待死させた場合で考えてみましょう。ペットは野生ではないので当然「鳥獣保護法」にはあてはまりません。「器物損壊」は他人の所有物を損壊した場合にしか適用されませんので、飼い主には罪が無いことになります。実は「動物の保護及び管理に関する法律」があるにはあるのですが、「虐待」についての定義がなく、また罰則も先ほど説明したように「3万円以下の罰金」と非常に軽いのです。動物をとりまく法律はまだまだ完璧ではないようです。
動物虐待に関しては動物愛護団体が法律強化を求めて活動しているということです。動物の命をどう扱うべきなのか。皆さんも一度考えてみてはどうでしょうか。

「動物の保護及び管理に関する法律」については朝日新聞1998年8月18日の記事を参考にしています。また、今回の法律に関する問題全般についても朝日新聞など各種メディアでとりあげられた記事を参考にしました。私は法律の専門家ではありませんので、記述の正確さは保証できないことをお断りしておきます。

※1999年12月、第146臨時国会で「改正動物保護管理法」が成立しました。2000年12月の施行となります。ペットを捨てたり殺したりすることへの罰則、ペット店への管理強化が主な内容です。動物を殺した場合の罰則は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」となっており、以前よりも強化された内容となりました。
(1999年12月18日)


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