Vol. 30(2000/1/16)

[OPINION]私が嫌いな動物

私はこういうホームページを持っているぐらいですから、当然動物好きです。ほとんどすべての動物が好きです。中には毒を持っていたり、気が荒い危険な動物もいますが、好きではなくても決して嫌いではありません。なぜなら嫌う理由がないからです。毒とか性格というのはその動物が本来持っている性質なのですから、それは変えようができないものです。そういう動物に対してはこちら側が慎重に対応すればだいたいの危険は避けられるものです。

そんな私にも唯一、嫌いな動物がいます。それは、
イエダニ
です。
私、ダニ・アレルギーなのです。

あれはもう10年以上前のこと。ちょっとある所に行って、その帰りのことでした。地下鉄に乗っているとなんだか気分が悪くなってきました。座席に座っていたので何とか耐えられたのですが、体を動かすのが非常につらい状態でした。しかし吐き気はまったくありません。なんとか自宅の最寄り駅に着いて、しばらくベンチでじっとしていることにしました。なんとか落ち着いてきたので、よろよろしながら家に帰り着き、すぐに布団に寝ました。ところが、またしばらくすると今度は息苦しいし、体全体が痛むような感じになってきました。「痛い」といっても、ちくちくするような痛みではなく、体全体が痛くなるような不思議な感覚です。この時点で初めて気づいたのですが、体中に赤い発疹が現れていました。これには驚いて、とにかく病院に行くことにしました。私は歩くことも難しい状態だったので(そもそも当時は運転免許も無かったので)、父の運転する車で病院まで行きました。自家用車があったからいいものの、そうでなければ救急車を呼ばなければならなかったでしょう。その日は点滴を受けて、1、2時間後にはなんとか病状も安定し、帰宅できましたが、その後数週間は点滴を受けに通院しなければなりませんでした(毎日ではなかったが)。体の発疹が消えるだけでも1週間以上かかったでしょうか。
この急病の原因がわかったのは、2回目か3回目に病院に行ったとき、血液検査(アレルギー検査)の結果が出ていて、「強いダニ・アレルギー」と宣告されたからです(他のアレルギー反応は無いか、微弱だった)。自宅ではなく、外出先でイエダニにかまれたのだと思われます。

さてその後、一人暮らしをするようになって、お世辞にも清潔な暮らしをしているとはいえないのですが、幸運にもダニ・アレルギーはその後再発していません。抗体だか免疫だかができたおかげなのか、アレルギーの原因が特定の種類のイエダニに起因していたせいなのかはまったくわかりません。今後もダニ・アレルギーが再発しないよう祈るばかりです。
だからイエダニが私は嫌いなのですが、相手が小さいだけにあまり恐怖心が起こらず、日々イエダニの恐怖にうちふるえるようなことはありません。本当はこれではいけないので、イエダニについての勉強もせねばと思ってはいるのですが。
ところで、ここまで私が「ダニ」と書かずに「イエダニ」と書いていることに気がついたでしょうか。ダニは当然のことながらあらゆる陸上環境に適応しており、森林などにはそれこそ無数のダニが生息しています。彼らの役割は「分解者」、つまり動物や植物の遺体を無機物に分解するという重要な役割を持っています。イエダニ(家屋内に生息する種類)もやはり小動物の遺体だとか、人間のフケとか垢を食べているらしいのですが、これは私にとっては迷惑。だから私が嫌いなのは「イエダニ」であって、「ダニ」全体ではないのです。

一般に嫌いな動物としてよくあげられるのはゴキブリ、クモ、ヘビといったあたりでしょうか。
ゴキブリは、屋外に生息する種はやはり分解者として生態系において重要な役割を演じています。ただし、屋内のゴキブリについては「ゴキブリの道を外れた不届き者だ」と私は思っているので、すみやかに退治するようにしています。
クモは動物食で、害虫を食べてくれるいいやつです。家の中にはハエトリグモがよくいますが、このクモは小型のハエなどを食べてくれるので、非常に頼もしい動物なのです。
ヘビは、毒をもつ種類がいるので恐怖の対象になるのでしょうが、そもそもそういう種類は身近にはそういませんし、もし遭遇しても事故になることはあまりありません。ヘビは手足がないので感覚的に拒絶感があるのかもしれませんが、「手足がない→怖い」という論理だてには何も根拠がないと言えないでしょうか。
ある動物が嫌い、といってもその根拠は実はたいしたものでなかったり、誤解だったりするものです。私はあらゆる種類の動物を拒むようなことはしたくないと思っています——ただし、イエダニを除いては。


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