いきもの通信 Vol.31[今日の本]机の上で飼える小さな生き物 

Vol. 31(2000/1/23)

[今日の本]机の上で飼える小さな生き物

机の上で飼える小さな生き物
[DATA]
著:木村義志(きむら・よしゆき)
発行:草思社
価格:1800円
初版発行日:1999年7月26日
ISBN4-7942-0901-0

[SUMMARY]生き物飼育の入門書

第1部は「昆虫少年の飼育体験記」。著者の子供時代からの飼育遍歴が紹介されている。単なるエッセイのようだが、飼育に関するいろいろな知識・知恵が書かれているので、読み物として面白い。
第2部は「机の上で飼ってみよう」。昆虫(カブトムシ、クワガタムシ、チョウ・ガ、トンボ、コオロギ・バッタ、カマキリ、水棲昆虫)、陸貝(カタツムリなど)、両生類(カエル、サンショウウオ)、爬虫類(カメ、ヘビ、トカゲ)、タナゴの飼い方を紹介している。

[COMMENT]生き物が好きな人、生き物を飼うことが好きな人

本書の「はじめに」の冒頭では、「生き物が好きな人」と「生き物を飼うことが好きな人」のことについて書かれています。この2者は重なる部分も多いのですが、重ならない部分もあります。その証拠に、この私自身は「生き物が好きな人」ですが「生き物を飼うことが好きな人」ではありません。意外ですか? このようなホームページを持っているからには、きっと色々な動物を飼っているんだろうと思われる方がいるかもしれませんが、私は動物を飼わない人なのです(きっぱり)。
私は昭和40年代の生まれなのですが、この世代以降はテレビや学習塾が定着したり、もう少し後にはファミコンなどの家庭用ゲーム機が普及したりで、外遊びから屋内遊びへと変化していった時期にあたります。また、各種の開発で空き地や自然環境が激減した時期にもあたります。そのため、身近な自然に接する機会が少ないまま成長した世代ともいえるでしょう。私もそのような子供の一人で、本格的に動物のことに興味を持ったのはほんの5年ほど前のこと。ずいぶんと遅い「デビュー」なのです。本書の著者は昭和30年生まれ。読んでいて世代の差を感じずにはいられませんでした。

私は個人的には、野生動物は個人が飼育するものではないと思っています。フェレットとかアライグマはその典型で、まだ野性味が強すぎて人間になつきませんし、脱走すれば野性に逆戻りしてしまいます。逆に、イヌやネコ、ハムスター(さらにはいわゆる「家畜」も含んでいいと思うのですが)などは人間の存在と切り離すことはできない動物たちで、本当の「ペット」と言えます。彼らを野生化させることは彼らにとっても良くないことでしょう。
飼ってもいい野生動物の例外は昆虫(などの小型節足動物類)で、少々採集したぐらいでは絶滅はしません。もちろん、希少な種は別ですよ。昆虫が減少する原因は昆虫採集よりも、生息環境の破壊(つまり土地開発)の方が影響力がはるかに大きいのです。
本書では大型トカゲなどを扱っていて、わたくし的には抵抗がある部分もあるのですが、納得できる部分も多い本でもあります。この本ではヘビの飼い方についても書かれているのですが、ヘビは実際、意外と飼いやすく、「爬虫類の初心者向け」という側面もあったりします(毒ヘビはその限りではありませんが)。本書についての私の評価は肯定的な面、否定的な面両方があるのですが、肯定的な面が多い、というのが私の判断です。動物を飼ったことがないけど、興味があるという人には格好の読み物でしょう。

ところで、本書の中で大型爬虫類の脱走事件について書かれた箇所があります。だいたいこのような内容です——メディアではそのような動物について「心ない飼い主が捨てた」と言ったりするが、そのような種類は高価で珍しい種類なので、そう簡単に手放すはずがない。これは人間が逃がしたのではなく、動物自身が脱走をした結果である。——
飼い主の心理を考えればその通りでしょうし、爬虫類は人間になつくこともないし、大きくなると力も強いので、この説の真実度は高いと思われます。脱走事件の多くは動物自身の脱走が原因かもしれません。ただし、これはカメの場合には絶対にあてはまりません。運動能力の劣るカメが自ら脱走することは不可能です。公園の池などで見つかる外国産のカメは明らかに人間が逃がしたものです。「動物を飼うなら、動物が死ぬまで責任を持って飼え」とは、ある爬虫類研究者の主張ですが、動物を飼うなら本当にこの心構えを持ってほしいものです。


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