いきもの通信 Vol.34[今日の観察]水鳥を撮るなら都会へ行け 

Vol. 34(2000/2/13)

[今日の観察]水鳥を撮るなら都会へ行け

冬は渡り鳥が北からやって来る季節です。いろいろなカモが池や川に来ています。
私は動物イラストを描いていますが、その資料集めのために写真撮影もやっています。この冬はカモなどの水鳥を撮影しようと、何度も出かけました。
私のカメラは中級クラスの一眼レフカメラ(キヤノンEOS5)で、望遠レンズは70〜300mmのズームレンズを使っています。カメラに詳しくない方にはピンとこないかと思いますが、このレンズの性能は「野鳥を撮るには不十分」という位置づけになります。いい野鳥写真を撮るには500mmとか1000mmといった、まるで大砲のようなレンズを使うべきなのでしょう。野鳥が撮れそうな場所ではそういうレンズを持った人によく出くわします。しかし、そういうレンズは高価ですし(数十万円〜100万円超)、とても重いので私は敬遠しています。超望遠レンズ使わずに鳥を大きく撮るには、被写体に接近するしかありません。つまり、いかに野鳥に警戒されずに近づけるかが重要になってくるわけです。野鳥は警戒心が強いのでなかなか接近できません。このレンズの性能ではいい写真が撮れないのは仕方ない——と思っていたのですが、あちこちで撮影しているうちに水鳥に接近することが実はそれほど難しくないことがわかってきました。

例えば、この写真をご覧ください。

上はカイツブリ、下はダイサギです。
両方ともトリミング(フィルムの一部分だけを切り出すこと)はしていません。カイツブリは最大望遠で撮っていますが、ダイサギは最大望遠ではありません。野鳥の写真を撮ったことがある方ならば、異常な近さで撮っていることがおわかりかと思います。この写真の鳥は普通、人間に近づくことはなく、接近することが非常に難しいのです。また、カイツブリは小さい(カモ類の半分くらいの大きさ。ムクドリやツグミぐらいの大きさ)ために、さらに撮影が難しい鳥です。

鳥に接近するてっとりばやい方法はエサでおびきよせることです。しかし、カイツブリもダイサギも動物食で、基本的には生きた動物しか食べません。そんなエサをわざわざ用意するのも大変ですし、それを実行しても彼らは警戒心が強いので接近することはあまりないでしょう(ただし、カイツブリはカモたちにまぎれて人間がまくパンくずを食べに来ることがあることを後日確認しました)。また、人間がエサを与えることは鳥たちの食事のバランスを崩すことになりかねませんから、勧められる方法ではありません。もちろん私はそんな方法は使っていません。

では、どうやって接近したのか。実のところは、偶然すぐ近くで撮れた、というのが撮影時の情況だったのでした。しかし、これでは今後の役に立たないので、私もこの「偶然」の理由をあれこれ考えてみました。うまく写真が撮れた情況、撮れなかった情況を整理し直してみて、初めてわかりました。答は「撮影場所」だったのです。
これらの写真を撮ったのは「都会の公園」です。水鳥たちの生活にはある程度の広さがある水環境(池沼河川)が必要になりますが、都会ではそのような場所は池のある公園ぐらいしかないため、そこに集中して生息するようになります。そして、都会の公園というものは池があってもその広さは大したことはありません。意外と近くに鳥を見ることができるわけなのです。
また、都会の公園には常に人間が近くにいる上に、鳥にエサを大量に与える人間がいるため、人間をこわがらなくなってしまっているようなのです。特に図々しい性格のオナガガモなどは陸に上がってまでエサを食べようとします。警戒心の強いカイツブリやサギ類でさえも人間に慣れてしまっているせいか、非常に接近することもできるのです(ただし、いつでも接近できるわけではない)。私が撮影した情況がまさにそれでした。
逆に、自然がよく残っている郊外では生息環境も広々としていて、そもそも人間に接近することもなく生活できるわけです。そういう場所では水鳥たちは人間から十分な距離をとるようにしていますので、私の持っているカメラでは先ほどのようなアップ写真を撮ることはまず不可能なのです。

とはいえ、都会の公園ならどこでもいつでもアップ写真が撮れるわけではなく、やはり偶然にも大きく左右されます。いつもそこに通っているなら別かもしれませんが、私のようにあちこちに撮影しに行っている場合では、その時その場所での一本勝負にならざるをえません。
また、接近すると言っても、水鳥のそばまでダダダダッと走り寄ったりしては当然逃げられてしまうので、かなり慎重に接近しなければなりません。上の写真のダイサギの場合はその逆に、ダイサギが接近するのをじっと待って撮影しました。なぜなら、そのダイサギはきっとここを通る、と予想できたからなのです(その理由は秘密です)。

これらの写真の撮影場所は明かしませんが、ここまでの内容をヒントに近所を歩いてみたりしてはどうでしょうか。野鳥に接近できる場所が見つかるかもしれません。条件がそろえば、このような場所はいくらでもあるように思います。
都会でも身近に野鳥を見ることができるということ、これはとても貴重な財産だと思います。彼らが住みやすい環境を整備すること——例えば水質の管理や寝る場所の設置を行うことなど——によってこの財産を維持していきたいものです。
ただし、繰り返し言いますが、野鳥(野鳥に限らず動物一般に言えることですが)にエサをやるのは良くないことです。エサに誘われて多くの鳥が集まって過度の密集状態になり、生息環境が悪化したり、カモの場合は交雑が増えてしまったりします。エサを与えるのではなく、全体の生息環境を良くしてあげることが、本当に野鳥のためになることなのです。


[いきもの通信 HOME]