Vol. 36(2000/3/5)

[今日の観察]ネコのフン害を防げ!

私は東京の都心にも近い住宅地域である、杉並区高円寺に住んでいます。ここは残念ながら自然環境に乏しく、動物好きな私には少々もの足りない場所です。高円寺に住んでいて、1つ気になったのは、緑が少ないということ。そこで私もちょっとは貢献できれば、と植物のプランター栽培をしています。といっても大層なものではなく、アサガオとかオシロイバナといった手間のかからない植物を植えている程度です。
さて昨年の秋、冬に育てる植物に挑戦しようとアネモネの栽培を始めました。アネモネのいいところはあまり水を必要としないこと。少々手を抜いても大丈夫、という私にぴったりの植物なのです。種をまいた時期が遅かったせいか、芽が出たのは年が明けてからでしたが、少しずつ順調に育っていく様子を観察できるのは楽しいものです。

異変が起きたのはそんな時期でした。
アネモネのプランターは玄関前(アパートの2階)に置いているのですが、ある日家に帰ってみるとプランターの土が掘り返されているのです。「誰がやったのだ?」と思ったのですが、とりあえず土を平らに戻して置きました。が、掘り返しはその後も何度か繰り返されていました。おかげでせっかく育ってきたアネモネの苗の大半が壊滅してしまいました。人間はここまでしつこくはないので、犯人は動物——ネコ、カラス、スズメのどれかだと推測されました。犯人は間もなく判明しました。ある日、掘り返された土をよ〜く調べてみると、大きなかたまりがごろりと転がっていました。こ、これはもしかして…くんくん…くっさ〜。こりゃ、ネコのフンだ! わざわざアパートの2階まで来てフンをするか?! しかも逃げ道は階段の1か所しかないのに…。この近所には野良猫が多くて、常時確認できるネコだけでも8匹、ときどき見かけるネコ数匹がいます(一応私はそれぞれを個体識別しています)。犯人はここにプランターがあることを知っている、人なつこいネコ君(私は「ソックス君」と名付けている。4本の脚の先が靴下のように白いから。)に違いありません。このネコはプランターの土の入れ換えをそばでじっと観察していたので(しかもちょっと手伝ってくれた)、2階にプランターが置かれていることを知っているのです。
私は動物好きで、そしてネコも好きなのですが、プランターで(手抜きしつつも)大切に育てている植物を荒らされるのは絶対に許せない! というわけでネコ撃退策を練ることにしました。一応、私はこういうホームページを持っていて、動物には詳しいと自称しているぐらいですから、スマートにネコを撃退したいものです。

ネコ撃退と言えば「ペットボトル」なのですが、そんなものが効かないことは私もよく知っています。絵に描いたネコの目にビー玉をはめたネコ撃退グッズもありますが、これも永続的な効果があるかどうかには疑問があります。園芸用品として、ネコやカラスの嫌うにおいを出す化学用品やスプレーがあるようですが、化学的なものは人体とか植物への影響が気になるのであまり使いたくはない気分です。

いきなり結論にいきましょう。左の写真をご覧ください。私が考えたのは「ネコを土に触らせない」という方法でした。プランターの上部にビニールひもを張り巡らし、さらにアサガオ栽培の時に使っていた棒を立てて、それにもビニールひもを巻きつけました。そして念のために夜間はプランターを玄関内に入れておくことにしました。結果はもちろん成功でした。一度、土を前足でひっかいたような跡が残っていたことがありましたが、それだけでした。アネモネはおかげで順調に成育しています。アサガオ用の棒はさすがにおおげさなので最近はずしましたが、ネコはもう来ないようです。今回は、アパートの2階というネコにとっても落ち着かない、少々リスクのある場所でしたので、ネコも簡単に見切りをつけてくれたようです。これはネコ撃退にはラッキーなことだったかもしれません。

とは言え、今回の事例ではネコ撃退のポイントをきちんと考えて対策をたてています。この撃退方法はネコの行動パターンを分析し、導き出した方法なのです。以下ではその分析を説明します。

ネコの排泄行動には決まった「作法」があります。それはこのようなものです。
「ネコは乾いた砂の上に排泄をする。排泄の後は、排泄物の上に砂をかける。」
ネコをよく観察してみれば、このことは確認できるはずです。この行動をもう少し分析してみましょう。

ポイント1…乾いた砂
排泄行動は野良猫でも飼い猫でも同じです。ペットショップで売っているネコ用のトイレというのは、砂を敷くようになっていますが、これはネコの排泄行動にかなったものと言えます。そういえば、児童公園の砂場にネコが排泄するということでちょっと問題になったことがありました。ネコは確かに砂場で排泄します。ネコとっては非常に気持ちいいトイレなのでしょう。
「乾いた砂」の逆に「湿ってじめじめした土」ではどうでしょうか? こういう場所はネコにとっては落ち着いて排泄できる場所ではないでしょう。そんな所で用を足すぐらいなら、もっと乾いた場所に行くでしょう。そこで、土を乾かさないよう毎日水をまくという方法が有効かもしれません。ただし、私が栽培していたアネモネのように、土が乾いていないといけない(水分が多すぎると腐ってしまう)種類の場合はこの方法は使えません。

ポイント2…排泄の後、砂をかける
ネコのトイレ作法は意外ときちんとしていて、排泄したらそのままにするのではなく、必ず砂をかけます。排泄物がかくれるまで砂をかけますので、やっと芽が出たばかりの植物があったりすると壊滅的なダメージを受けます。ネコは排泄後はこの「砂かけ」をせずにはいられないようです。

これら2つのポイントから、1つの撃退方法が導き出せます。
これらの行動を阻止する方法、それが
「ネコが砂をさわれないようにする」
ということなのです。
砂の上になんらかの障害物を設置すれば、砂の上に座ることも、砂をかけることもできなくなります。つまりネコにとってはその場所はトイレとして使えない場所になるわけです。
この考え方を実践したのが、上に書いたようなプランターの上にビニールひもを張り巡らす、という方法なのです。簡単な仕掛けですが、理にかなっていると私は思います。ただ、ネコも意地になってくるかもしれないので、ビニールひもはしっかりと、可能な限り密に張った方がいいでしょう。左の写真程度にはした方がいいと思います(ただし、この写真のプランターは普段は室内に置いてあるものなので、実際に効果があるかどうかは試していない)。ビニールひもの強度が心配な場合は、目の粗い網を上にかぶせるという方法もあります。目の粗さはネコの脚が通らないくらいでいいでしょう。日光と雨をさえぎらないためにもこの程度のものが適当でしょう。網戸に使う網では強度が足りないかもしれないので、金網の方がより適していると思います。
このプランター上部をカバーする方法は、プランターではなく庭で栽培している場合でも応用できます。庭の地面の上にやはりビニールひもを張り巡らしたり、金網を固定したりするのです。
いずれの場合も、ひもや網の強度には念を入れてください。これが弱いとネコは簡単に引きはがしてしまうでしょう。特に、端の方は構造的に弱くなりがちですので、しっかりと固定するようにしてください。

さて、このネコ撃退法いかがでしょうか。私が試した例はうまくいきましたが、さまざまなケースで実際にどこまで通用するか非常に興味があります。これをお読みになって試してみられましたら、その成否にかかわらず経過・結果をお知らせいただけないでしょうか。よろしくお願いします。


[いきもの通信 HOME]