Vol. 50(2000/6/25)

[OPINION]動物報道とインターネットと

私は動物全般に興味を持っているのですが、情報源として新聞は欠かせないものです。新聞を読んでいると、だいたい1〜2日に1件は動物関連の記事が掲載されているような印象があります。
ただ、雑誌やテレビも含めたマスコミ報道はセンセーショナルなもの、あるいはお涙頂戴人情もの・ほのぼの話が多いような印象があります。また、取り上げるのも一時的で、続報が無かったり、あっても簡潔すぎる場合が多いようです。事件の内容を掘り下げる解説記事が少ないのももうひとつの特徴で、結果的に内容が浅い報道になっています。
マスコミ各社はさまざまなニュースを扱わなければならないので、動物事件ばかりを取り上げるわけにもいかないのも当然かもしれませんが、報道内容が浅い理由はそれだけでもないように思います。新聞社、出版社(大手)では記者・編集者はひとつの部署にずっととどまるということはほとんど無く、一定の時期が来れば別の部署へ異動します。これは、いろいろな分野を経験させようという、「ゼネラリスト育成」的とも言える人事政策なのでしょう。その結果、記者・編集者の守備範囲は幅広くなりますが、特定分野への深い理解は期待できなくなってしまいます。重要分野の政治・経済・外交などの場合は長い経験を積むことで専門記者として活躍することもあるようですが、「動物にとても詳しい記者」というのは存在しそうにもありません。

一方、私が目指すのはそんなマスコミとは逆の方向、つまり「動物」への一点集中です。動物関連に特化することで情報・知識を集約し、マスコミ企業よりも効率的に、また的確に行動できると考えたのです。このようなやり方は現在の大マスコミ企業内では実現できないことでしょう。「1つのことしかできない社員」というのは歓迎されない存在だからです。これは私自身の経験や伝聞で実感していることです。

そういうわけで、私は現在個人的立場で活動をしています。しかし、個人でも法人でも同じなのですが、仕事を認めてもらうには、それを発表する場が必要になります。マスコミ企業の場合はそういう仕組みを既に作り上げてしまっているのでとても楽なのですが、個人の場合はそれを作るあるいは探す必要があるわけです。しかも動物関連は需要も市場も小さいので、そのような機会は非常に少ないというつらい状態です。
その意味で、簡単に意見表明をできるホームページは画期的であると言えるでしょう。印刷物を刷るよりもコストはかなり安く、多くの人がアクセスする可能性もあるのですから。
しかし、伝達効率が極端に悪いというのも事実です。現在、インターネットはインフレーション状態に突入しており、非常に多くのサイトが乱立しています。その中からこの私のホームページを探し出せる人はいるのでしょうか? サーチ・エンジンを駆使しても私のホームページを探し当てるのは非常に難しいと思います。自分のホームページの宣伝は、URLを記した名刺が一番効果的であるような気がしているこの頃です。
最近の私のホームページへのアクセス数は週に50〜70程度。「いきもの通信」は週に10〜30程度(最近は増加傾向)です。毎週アクセスしてくれる常連さんはおそらく5〜7割ぐらいでしょう(推測の手がかりがまったくないので、これは直感的推測です)。これでは同人誌レベルですよね。
おまけに私のホームページは無報酬です。広告バナーなんて付けたくないし、スポンサーも遠慮したいところです。かといって、有料化は成立しないでしょう。「インターネットの情報=無料」というのが世間の常識になってしまっているため、よほどの有用なものでもない限り有料化による黒字経営は無理でしょう(だから広告やスポンサーが必要になるのです)。無報酬でいつまでやっていけるのか、私にも見当がつきません。
ホームページよりも、やはり既存マスコミ上で活動する方が読者・視聴者も圧倒的に多く、また、原稿料などの収入もあるという点で明らかに優位なのです。インターネット上の報道が質も量もまだ不十分だという印象を持たれている方も多いでしょうが、それはこういった要因を考えれば当然の事なのです。
まして、マイナーな動物関連のこととなると、有用なホームページはどれだけあるでしょうか。また、有用なホームページがあったとしても、それを簡便に探し出すことが難しいとなると、有用さを損ねることになってしまいます。
「コンテンツの質と量」と「コンテンツの検索の容易さ」。この2つこそ現在のインターネットの問題点だと思うのです。最近はインターネットが非常にもてはやされていますが、私から見れば実力以上に評価されていると言わざるを得ません。

ここで私自身のことに話を戻すと、そもそも「動物」というマイナーなジャンルを、もっともっと多くの人に関心を持ってもらえるようにしたいというのが私の目標です。そうなると、既存メディアでもインターネットでもメディアを上手に利用していかなければなりません。そして、何よりも「質」を維持しなければならないな、と思うのです。報道(情報)の本質はやはり「質」なのです。


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