Vol. 56(2000/8/13)

[今日の観察]夜の散歩者

以前は会社からの帰りも遅く、明るい商店街のはずれに住んでいたので、夕方から夜にかけてのまだ少々明るさの残る時間帯のことはほとんど知りませんでした。会社を辞め、同じ町内でも駅から遠い住宅地に引っ越してから、夕暮れの時間帯に外出することも増えてきました。

この季節、夕方から増えてくるのが犬の散歩です。暑い暑い昼間に散歩をする人はさすがに少ないようです。人も犬も、やはり涼しいときに散歩をしたいのでしょう。
そんな犬たちを観察していると、犬種の流行がよくわかります。近年の人気者はミニチュア・ダックスフンドです。特にロングヘアー(長毛)。室内でも飼えるのが人気の理由のひとつでしょうか。若い女性が飼っていることが多いようです。犬全体で見ると、このような小型犬がかなり多くいるように思えます。昔なら「飼い犬=番犬」だったのでしょうが、今では室内で一緒に暮らすというライフスタイルに変わってきたようです。アパートやマンションで飼うことが増えているのを考えると、そうなるのも無理はありません。結果として小型犬が増えてくるわけです。この他の小型犬で多いのは、もしゃもしゃの毛のヨークシャー・テリア、鼻ぺちゃのパグ、小さな小さなチワワといったところでしょうか。他にはキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ビーグル、パピヨン、テリア各種、珍しいものではイタリアン・グレーハウンドといった種類を見ます。
中型〜大型犬で相変わらず多いのがゴールデン・レトリーバーです。しばらく前にブームになったときに飼い始めた人が多いのでしょう。最近数が増えてきたような印象があるのが、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークです。これはダックスフンドのような胴長短足のかわいい犬です。意外と少ないのがラブラドル・レトリーバー。性格も良く、頭もいい犬なのですが、外見的な特徴がないため、あまり人気がないのでしょうか。盲導犬や警察犬としての実績もあるのですが、最近はそういう実用性よりも外見の方が重く見られているのかもしれません。まるでパソコンと同じですね。やはりほとんど見かけないのがジャーマン・シェパード・ドッグ、通称シェパードです。あのおっかない外見が敬遠されているのでしょうか。でも、シェパードは性格も悪くはありませんし、賢く、とても頼りがいのある犬です。警察犬、軍用犬というイメージで怖い印象が強すぎるのかもしれません。もっと見直されてもいい犬だと個人的には思うのですが。
やはり最近見かけることが少なくなった犬として、柴犬ははじめとする日本犬がいます。本当に柴犬やいわゆる「雑種」を見かけることは少なくなりました。やはり犬もブランド犬の方が好まれる時代になってしまったのでしょう。ペットショップで犬を購入するようになってしまったからというのも理由のひとつでしょう。でも日本人にとっての犬のイメージはやはり柴犬だと思うんですよね。もう少し見直されてもいいのではないかと思います。
とまあ、このように散歩を眺めているだけでもいろいろと勉強になるわけです。犬の種類を知りたい人は犬図鑑片手に彼らを観察してみるのもいいのではないでしょうか。

夜に散歩をするのは犬だけではありません。猫も涼しい夜になるとあちこちに姿を現します。彼らすべてが野良猫かというとそうではなく、飼い猫もかなりいるようです。これは首輪をしているのですぐ判別できるのですが、首輪をしていない飼い猫もいるでしょう。飼っている人間の方もあまり厳しく管理しているわけではないようです。
犬はいつも人間といっしょなのですが、猫はそうではなく、しかもすぐにわかるような場所にいるわけでもないので、探すのはちょっとコツが必要です。この時期、猫が好む場所はやはり涼しい所です。と言ってもこれはかなり微妙なもので、人間の感覚ではわかりにくいものです。猫を発見してからその場所を分析してみると、そこが他よりも涼しいということがわかる場合がほとんどです。それがわかれば、次からはその場所をチェックするようにすれば猫を発見できる確率も上がるでしょう。他に猫が好む場所は、建物と建物の隙間、塀の上といったところでしょうか。塀の上は意外と見落としがちです。あと、飼い猫は飼われている家からあまり遠出することはないようで、家のすぐそばにいることが多いようです。
とはいえ、猫は神出鬼没、昼も夜も探索したとしてもその地域に住む猫すべてを把握することは難しいでしょう。実際、私の自宅付近には10匹以上の野良猫、半野良猫がいるのですが、夏は他に涼しい所が多いせいか、ほとんど見かけません。
こうした散歩猫はほぼすべて「ニホンネコ」(そういう品種があるわけではないが、通称として)かその雑種です。今は猫もペットショップで買う時代なので、ペルシャとかシャムとかアメリカンショートヘアといったようなブランド猫を飼っている人がかなりいるはずなのですが、そうした猫は完全な室内生活をしているようです。屋外で見かけることはほとんどありません。猫の品種を勉強したいならば、ペットショップに行くのが良さそうです。

夜に行動する動物と言えば、タヌキやイタチ、ネズミなどいろいろいるのですが、普通の住宅地ではあまり見ることもないでしょう。大きめの公園や空き地があればコウモリが飛んでいるのを見ることができるかもしれません。

それでも犬や猫を観察しているだけでもいろいろと知識が増えます。この季節ならではの夜の動物観察、あなたも散歩がてらにいかがでしょうか。


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