いきもの通信 Vol.58[今日の観察]カイツブリ子育て日記 その1 

Vol. 58(2000/8/27)

[今日の観察]カイツブリ子育て日記 その1

東京都内のI公園といえば、ちょっとした繁華街に接している、水と緑の豊かな公園です。この公園の池には当然ながらカルガモが多いのですが、ある程度の広さの止水域であるため、やはり当然のようにカイツブリも生息しています。このカイツブリ、小さい上に人間を警戒するので(カルガモと比べて)、なかなか接近できず、写真を撮るのも少々難しいのです。
カイツブリとはカイツブリ科の鳥です。大きさはカモ類よりもさらに小さく、カルガモの半分もありません。そのため、よく「カモの赤ちゃんだ!」などと言われたりするのですが、この大きさでも立派な大人なのです。そもそもくちばしの形がカモとはまったく異なります。漢字では「鳰」と書くのですが、いったいどう意味なんだかわかりません。それぐらい昔から日本にいた鳥ということなのでしょう。
今年はこのカイツブリの子育てをずっと観察し続けています。子育ての様子をずっと追跡できる鳥は、他にはツバメやカルガモ、キジバトぐらいでしょうか。それでも長期の観察はなかなか普通ではできないものです。幸い(?)、仕事があまりない私は、週に2回ほど通いながら、写真とビデオでカイツブリの姿を記録しています。今回はその記録を簡単にまとめてみました。

6月7日
いつものようにカメラをかかえて歩いていると、ボートの船着き場の脇にカイツブリが巣を作っているのを発見しました。杭と杭の間に渡したロープの途中に引っかかるような格好でこんもりとした巣がいつの間にかできていたのでした。このロープへのひっかかり具合は絶妙で、感心してしまうものでした。この巣の構造の秘密がわかったのはずっと先になります。
巣にはカイツブリのつがいの一方が座り込んでいます。その姿はいかにも卵を抱いているようです。さっそく写真を撮ったのですが、その場では卵があるかどうかわかりませんでした。後日、この日の写真を確認してみて、卵が1個あったのがわかりました。[写真A]

6月15日
先週からずっと強風と雨が続く悪天候でした。この日は久しぶりの好天。カイツブリの巣は雨にも負けず風にも負けず、しっかりとしたままでした。なかなかの耐久力です。この日は卵が4個あるのを確認できました。カイツブリのつがいは交代で抱卵を続けています。交代の間隔は20〜30分といったところ。外見からはどちらがオスかメスかわかりませんが、平等に育児負担をしているようです。
抱卵していない方の親は、おそらく食事もしているのでしょうが、頻繁に枯れ葉や小枝を持ってきて巣を補強しています。これらの材料は水面に浮いているものだけでなく、水底から持ってくるものもあるようです。
たまに、つがいの両方とも巣を離れることがあります。その時は、卵の上に枯れ葉を乗せて隠しています。外敵に見えないように、という意味もあるのでしょうが、卵の保温のためでもあるのでしょう。

6月20日
この日、卵を5個確認。[写真B]

6月23日
この日は雨。雨で体温が奪われて卵の保温に時間がかかるのか、抱卵の交代時間はいつもよりもかなり長く、1時間以上のようでした。

6月27日(孵化後 第1週)
24〜25日頃に孵化したようです。ヒナ3羽と卵1個を確認できました。もう1個の卵は行方不明。産卵から孵化までは2〜3週間のようです。
ヒナはもう泳ぐこともできます。ただし、巣からは遠くへは離れません。親がエサを運んできてヒナに与える場面も見ることができました[写真C]。ただ、エサが大きかったりするとヒナはうまく食べられないようでした。また、泳いでいる親の背中にヒナが乗っている姿も見ることができました。親の背中からちょこんと顔を出したヒナの姿はとても可愛らしく、大人気になること間違いなしです(多分)。
この日は池の別の場所で、別のつがいが巣を作っているのも見つけました。池に垂れ下がるように枝を伸ばしている木があって、一部が水面にまで垂れ下がっています。そこに、枯れ葉などを集めて巣を作っているのです。ところが、この巣は30日に行ったときにはもう無くなっていました。水位が下がったために、枝が水面から離れてしまったのです。この池は20cm以上は水位が上下するようで、水に浮いたような巣を作るカイツブリにとってはやっかいなことのようです。

6月30日
もうひとつあるはずの卵はこの日なくなっていました。カラスやヘビに食べられたとも思われません。無くなった2個の卵は、無精卵で、親が巣から落とすなどして処分したのではないか、というのが私の推測です。孵化しない卵をいつまでも置いておくと、中が腐乱して破裂するおそれがあるからです。
しかしそれにしても、5個の卵から3羽が元気に育っているのですから、非常に順調と言っていいでしょう。去年も観察していた方は、去年は1羽も孵化しなかったと言っていましたから、運不運の要素もあるのでしょう。

7月4日(第2週)
これまではヒナだけで巣から離れることはなかったのですが、この日からはヒナだけで巣から離れる姿も見られました。しかし、すぐに巣に戻ってこられる距離です。もちろん、親も時々エサを与えるために戻ってきます。[写真D]

7月7日
ヒナたちが巣から離れる距離もだいぶ遠くなってきました。ちょっとだけですが、潜水する様子も見ることができました。
この日は台風3号の直前で、夕方からは大雨となりました。

7月11日(第3週)
ヒナたちの行動範囲も本格的に広がったようで、この日は彼らのなわばりの東端付近でようやく発見できました[写真E]。かれらのなわばりはとても広く、巣はなわばりの西端付近にあります。ここまで遠出をするといっても、ヒナは3羽いっしょ、親も片方がそばにいます。ヒナも潜水をほとんどしないので、親からエサをもらっています。もう片方の親は、というとなわばりの別の場所にいたりするのですが、子供の世話を交代することがあるのかどうかはわかりませんでした。

7月14日
この日はいつもの巣のそばにヒナ3羽がいました。しばらくしてから親も現れ、エサを与えたりしていました[写真F]。このころになるとヒナも大きくなって、親の背中には乗らなくなりました。
巣の方はヒナたちが遠出できるようになってからはメンテナンス(葉や枝による巣の補強)をしなくなったようで、だんだんと形が崩れてきていました。

7月18日(第4週)
巣の付近で親1羽、ヒナ1羽を、なわばりの東端付近で親1羽、ヒナ2羽を目撃しました。このように親が子育てを分担することもあるようです。彼らは両親そろって子育てをしているようです。


と、ここまで書いたところで写真の準備が間に合いませんでした。続きはまた別の回にすることにします。現在は孵化後約2ヵ月。3羽とも順調に成長しています。


Vol. 65(2000/10/22) カイツブリ子育て日記 その2

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