Vol. 59(2000/9/3)

[今日の事件]2000年夏・今年も大脱走な動物たち

困った困った困りました。毎年夏になると、何かしら動物事件が起こるものなのですが、どうしたことか今年は何も起こりません。雪印食中毒事件に始まる一連の「細菌からトカゲまで食品にいろいろ混入事件」があったために動物事件がかき消されてしまったのでしょうか。去年は東京都心の逃走ニホンザル事件があったのですが、今年は本当に何もなかったですね。
だからといって、「いろいろ混入事件」については特にコメントはしないことにします。もういろいろな人が新聞や雑誌などのメディアで語っていますから。このような混入事故は100%回避可能とも思えません。買う側もそれなりの(かなり低いとは思いますが)リスクを覚悟する必要があるということでしょう。

さて、動物事件は何もなかったというのは正確ではなくて、いくつも小事件は起こっています。ただ、どれも大きな話題にはならなかっただけです。そのような事件の中から、脱走事件を3つ取り上げてみましょう。

[東京都心でハクビシン事件]
8月11日、東京都大手町のビルの庭にハクビシンが現れた。丸の内署の署員が捕獲した。この場所は毎年カルガモが産卵・育児に利用する場所として有名。(朝日新聞・東京版 2000年8月12日)

そもそもハクビシンという動物はほとんど名前も知られていないでしょう。分類では食肉目ジャコウネコ科。「ネコ」といっても、私たちが知っているネコとは異なる動物です。イエネコ、ヤマネコ、ライオン、トラ、ヒョウなどは「食肉目ネコ科」に属しています。一般的に「ネコの仲間」と言える種類です。ジャコウネコ科は外見的にもネコに似ていません。分類的には、マングース科と近いと言われていますので、マングースのようなものを想像してみてください。このハクビシンは元々は日本にいなかった帰化動物だと考えられています。
新聞記事には書いてありませんが、このハクビシンは人間が飼っていたものと思われます。でなければ東京のど真ん中に出現するはずがありません。ハクビシンはこれといって特徴もない動物ですが、飼う人はいるということなんですね。
ただ、可能性としては「皇居内に生息していたハクビシンが外に出てきた」ということも考えられます。これは皇居内で繁殖をしているということでもあるのですが、この説を完全に否定できないのは、皇居の森が「野生動物の楽園」と言っていいほど自然環境がいいからなのです。

[ゴリラ脱走事件]
8月19日、愛知県犬山市のモンキーパークのローランドゴリラ(オス)が飼育舎から脱走、見物の女性を襲い背中や腹に10日間のケガを負わせた。係員は棒などで女性からゴリラを引き離し、麻酔銃も発射。ゴリラは約1時間後に自分で飼育舎に戻った。脱走の原因は、飼育舎の扉の閉め忘れだった。(朝日新聞・東京版 2000年8月20日)

ゴリラは攻撃的な動物ではありませんので、被害がこれだけですんだのかもしれません。とはいえ、体格も大きなゴリラですからちょっとじゃれるだけでも人間にとってはかなり危険であることは間違いありません。この事件は人災です。檻で飼育しなければならない動物の場合は管理に慎重さが必要なのは当然のことです。

[水田にワニ事件]
茨城県の水田でワニがいるのが発見された。このワニはわなを使って捕獲された。体長約60cm。(NHK総合テレビ:首都圏ニュース845)

この事件はNHK総合テレビの夜8時45分の首都圏ニュースで放映されたものです。日付をよく覚えていないのですが、8月第4週の放映分です。当然、新聞にも載るものと思ってちゃんとチェックしていなかったのでした。最近はワニぐらいでは報道もしないのでしょうか?
このワニは体長から見て、まだ子供です。私は種類は判別できないのですが、おそらくメガネカイマン(アリゲーター科)ではないかと思います。というのは、メガネカイマンは飼育用として知られている種類だからです。メガネカイマンは全長2.5mにもなるワニです。メキシコ南部からアルゼンチン北部に分布しています。
ワニははっきり言って、一般家庭で飼育可能な動物ではありません。成体の飼育には6畳の広さは必要となりますし、そこには水場だけでなく陸地も必要になります。また、温度管理が難しく、紫外線も必要です。餌はマウス、ラット、ハト、ニワトリ、ウサギなどをまるごと与えなければなりません。「まるごと」というのが重要で、肉片では栄養的に問題があるのです。飼育スペースも問題ですが、この餌をどうやって確保するのかがこれまた大問題なのです。個人でワニを飼うのというのはそれほど難しいことなのです。
それでも世の中には飼いたがる人がいるんですよね。ワニに限らずトラのような猛獣を飼いたがる人というのは少数ながらも存在します。中には本当に飼ってしまう人もいるのですが、飼いきれなくなって逃がしたり、動物が自主的に脱走してしまったりしてこのような事件沙汰になってしまいます。

ワニの飼育については「爬虫類・両生類800種図鑑」(ピーシーズ)の記述によります。

その後の報道で、場所は茨城県小川町、種類はメガネカイマンということを確認しました。

以上3事件を紹介しましたが、全国各地のニュースをていねいに拾えぱもっとたくさんの脱走事件が発生していたのではないかと思われます。最近はこの程度のことでは報道もされないのでしょうか。脱走事件は飼育動物の流行や帰化動物の分布の一断面を知ることができる重要な情報源です。もっと注目されてもいい事がらだと私は考えています。


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