いきもの通信 Vol.61[今日のいきもの]シドニー・オリンピックのマスコット動物たち 

Vol. 61(2000/9/17)

[今日のいきもの]

シドニー・オリンピックのマスコット動物たち

ついにシドニー・オリンピックも始まり、テレビはそればかりやっているようですが、「いきもの通信」でも今回はオリンピック特集といきましょうか。オリンピックといえば最近ではマスコット・キャラクター(しかもたいていはなぜか動物)がつきものですが、今回も例外ではなく動物マスコットがいます。権利関係の都合上グラフィックでの紹介はできないのですが(オリンピックは金が絡むことには非常にうるさい)、これらの動物たちを解説していきましょう。


まずは全身黄色で不気味な顔の「ミリー」。「ミレニアム」からとった名前でしょうか。
この動物はハリモグラ(学名Tachyglossus aculeatus)です。名前は「モグラ」ですが、モグラの仲間ではなく、「単孔目」(たんこうもく)という原始的な哺乳類の仲間なのです。「単孔」とは、消化器系の出口(肛門)と泌尿器系・生殖器系の出口が分かれておらず、1つの総排泄孔しかないという意味です。これは他の哺乳類には見られない特徴で、爬虫類などと同じ特徴です。また、単孔目は卵を産むという哺乳類らしからぬ特徴がある一方で、母乳で子供を育てるという哺乳類とい名前にふさわしい特徴もあります。これらの奇妙な特徴こそが「原始的」あるいは「哺乳類と爬虫類の中間的存在」といわれる理由です。
さて、ハリモグラに話を戻しますと、頭胴長は30〜50cm(メスの方が小さい)、背中にはトゲがびっしりはえていて、足には爪があります。この爪で地面を掘ることができ、そのため「モグラ」という名が付いているのですが、いつも地下にもぐっているというわけではありません。
背中のトゲが武器になるほどとがっているのかどうかはわかりませんが、このトゲとは別にオスの後ろ脚のかかとにはトゲがあって、弱い毒を出すそうです。
オーストラリア、タスマニア島、ニューギニア島に生息。いろいろな環境に生息しているそうです。主に夜行性。主食はシロアリ、他にも昆虫などを食べるようです。野生での寿命ははっきりしませんが、飼育下では49年生きた例があるそうです。


次は、赤い体に青いくちばし、そしてこれまた不気味な顔の「シド」。「シドニー」からとった名前です。
この動物はカモノハシ(学名Ornithorhynchus anatinus)です。これもハリモグラと同じ単孔目に属しています。やはり卵を産む哺乳類です。
カモノハシが最初にヨーロッパに持ち込まれたとき、それは剥製だったのですが、それを見た学者は「これは作り物だ!」と思ったそうです。なにしろ、毛皮のある体、カモのようなくちばし、水かきのある脚…どう考えても複数の動物をつなぎ合わせたまがい物としか見えなかったからなのです。
水かきがある、ということからもわかるように、カモノハシは水中での活動を得意とする動物です。巣は陸上にあるのですが、水面近くの岸辺に穴を掘ってそこを巣としているので、陸上でカモノハシを見ることは少ないのではないでしょうか。水中でのカモノハシはなかなか素早いようですが、なんと彼らは目を閉じて泳いでいるのです。カモノハシは魚やザリガニなどの水中の動物を食べるのですが、目を閉じていてどうやって獲物を捕らえるのか、その仕組みは完全にはわかっていません。エサの捕獲にあのくちばしがなんらかの役割を果たしているようで、一説にはくちばしから微弱な電気的信号を発して、レーダーのように使っているとも言われています。
頭胴長35〜45cm(メスの方が小さい)、尾長13〜15cm。オーストラリア東部、タスマニア島の川や湖に生息します。カモノハシのオスにも後ろ脚のかかとにトゲがあり、強い毒を出すそうです。


最後はカラフルな鳥の「オリー」。「オリンピック」からとった名前です。
この動物はワライカワセミ(学名Dacelo gigas)です。
名前の通りカワセミの仲間です。日本のカワセミは全長17cmとスズメよりちょっと大きい程度ですが、このワライカワセミは全長は45cmもある巨大なカワセミです。ハトよりも大きく、カラスよりも小さいぐらいの大きさにあたります。日本ではヤマセミというカワセミの仲間がいるのですが、これが全長38cm。ヤマセミもかなり大きいのですが、それよりもさらに大きいわけです。これだけ大きな鳥が鳴くと、かなり騒々しいと想像できます。その鳴き声ですが、名前の通り笑い声のように聞こえるといいます。インターネットの検索サイトで「ワライカワセミ」を検索してみると、いくつか音声ファイルを掲載しているサイトがあります。それを聞いてみると、これがまたなんとも形容しがたい声なのです。言葉にしにくい鳴き方です。あえていえば、調子っぱずれのかん高い声で笑うような感じでしょうか。なんとも不思議な鳴き声です。
オーストラリア東部・南部、タスマニア島の森林に生息しています。普通に見られるそうです。日本のカワセミは小さな魚を食べるのですが、ワライカワセミも同じく動物食です。体が大きければ食べるものも大きくなります。ヘビ、トカゲ、カエル、ネズミなどを食べるそうです。


普通、オーストラリアといえばカンガルーあるいはコアラが人気の筆頭なのですが、今回はそれをわざとはずしているという、マニアックなチョイスになっています。こういう機会にカンガルー・コアラ以外の動物も宣伝してしまおう!という意図があったのかなかったのかはわかりませんが、オリンピックという大イベントのためのキャラクターならばもうちょっとはかわいいデザインにした方が良かったのではないでしょうか、とはイラストレーターでもある私の意見です。それともオーストラリアの人たちはこのデザインこそが「かわいい」(あるいは「かっこいい」?)と思っているのでしょうか?


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