Vol. 63(2000/10/1)

[今日の観察]カブトムシを飼育しました
カブトムシに襲われた話

この「いきもの通信」でも何度か書いてきたことですが、私は動物が好きですが、動物を飼うことは好きではありません。それでもイラストを描くために昆虫を捕まえてくることはあります。ただしイラスト目的なのですぐに死なせなければならず、「飼う」と言えるものではありません。
この夏、隣駅近くのDIY店でカブトムシ・クワガタムシが売られていると知って、「よしカブトムシを描こう!」と考えた私なのですが、今回はちゃんと飼ってみようとも思ったのでした。生きている姿を観察してイラストにしたいという目的もあったのですが、カブトムシの飼育は手間もかからず簡単だと知っていたので挑戦してみようかなとも考えたのです。
さっそく買いに行きました。カブトムシ、オス・メスのペアで980円でした。

飼育道具

カブトムシを飼うには飼育のための器具も必要ですが、それほど悩む必要はありません。カブトムシを売っているような店なら飼育道具一式も必ず置いてあるはずですので、それをいっしょに購入すればいいわけです。私が買ったものを紹介しますと…
・ケース
 1匹だけなら小さめのケースでも大丈夫ですが、2匹なら少し大きめのケースがいいでしょう。オスを2匹以上入れるとけんかをしますので、オス・メス1匹ずつ入れるのが原則です。
・土
 カブトムシ、クワガタムシ専用の土です。園芸用の土は肥料などが入っているので使わないようにしましょう。
・昆虫ゼリー
 一見こんにゃくゼリーのようなものです。本来の食べ物である樹液の代わりになるものです。栄養的にも十分で、エサはこれだけでもかまわないでしょう。
・エサ置き台
 昆虫ゼリーが置けるようにくりぬいた木の台です。これがないと昆虫ゼリーの容器がひっくり返ったりするので必須です。
・止まり木
 カブトムシ、クワガタムシは地面を歩くのが苦手なので、引っかかりのある木の枝も入れておいた方がいいでしょう。
この他、土を湿らせるための霧吹きも買いました。

これらを設置すれば飼育の準備は完了です(写真[A])。

カブトムシに襲われる

彼らの生活は単調で、土にもぐって寝ているか、ゼリーを食べるか、うろうろするかといったところで、時々交尾をしたりしているようですが、たいていメスが逃げ回っていたようで相性が悪かったのかなとも見えました。
残念ながら記録に残すほどの大イベントは起きないのがカブトムシ・クワガタムシなのです。その点はちょっともの足りないかもしれません。日頃の世話といえば、昆虫ゼリーの供給と土が乾かないように霧吹きで水をかけるぐらいでしょうか。

私はイラストを描く目的があってカブトムシを飼っていたので、時々取り出して自分の腕を木の枝代わりにつかまらせて観察したりしていました。カブトムシの脚にはトゲがあって、ちくちく痛いのですが、それを我慢して観察していました。
ある日オスのカブトムシをそうやって観察していると、珍しくじっとしているので、これは観察のチャンスとばかりにじっくり見つめていたのですが、そのうちにカブトムシがぶるぶるっと体を震わせはじめるではありませんか。まるで悪寒に震えているようなので、「こ、これはなにか悪い病気になったのでは?!」と思ったのですが、どうもさっきから指先が痛いのでそっちを見ると、お尻から交接器官を出して私の指に交尾しようとしているではありませんか! さすがにこれはたまらないので、引き離してケースに戻しました。そういえば、このオスを観察する前にメスをちょっとさわつたのですが、そのメスのにおいが指先に残っていたのでオスは勘違いして交尾をしようとしたらしいのです。以前、カブトムシ・クワガタムシのCD-ROMを作ったときに、このようなオスの勘違いがあることは知っていたのですが、実際に体験できるとは思いませんでした。

標本にする

さて、このカブトムシ、思ったより長生きして、お店で買ってからメスは7週目、オスは10週目まで生きました。自然環境下では1ヵ月ほどの寿命と聞いていたので、この長寿は予想外でした。刺激のない静かな環境では意外と長生きするようです。

さて、死んだ後にも私にはやることがあります。イラストを描くためにはきちんと標本にしなければなりません。といっても本格的なやり方は知らないので、我流ですが私なりの方法でやってみました。
まず、死んでいるのを発見したら直ちに脚を伸ばして固定しなければなりません。時間が経つと硬直してしまって脚の関節が動かなくなってしまうからです。ダンボール紙のような何か固いものに死体を置き、メンディング・テープ(接着力の弱いテープ)で脚を固定していきます。そして、それを小さな箱に入れます。箱には防虫剤と消臭剤を一緒に入れておきましょう。2週間もすれば標本は出来上がりです。
できた標本は飾っておきたいものですが、何かケースに入れておかないと虫がついたりするかもしれません。そこで、写真[B]のような塩ビ・ケース(直径6cm。大きさは他にも各種ある)を買ってきました。購入場所は東急ハンズ新宿店の理化学用品売り場。なかなかいい入れ物でしょう? 
ガラスではないので割れる心配もありません。念のため一緒に防虫剤を入れておきましょう。本格的な道具がなくても標本は作れるのです。


カブトムシ・クワガタムシといえば、このCD-ROMを紹介しておきましょう。
海野和男著「マルチメディア カブトムシ・クワガタムシ図鑑」(発行:アスキー)です。書籍扱いですので、書店で販売されています。国内・国外のカブトムシ・クワガタムシを多数収録している他、カブトムシ・クワガタムシの生態や飼育の仕方まで紹介しています。楽しいQuickTimeムービーもいろいろ入っています。
ところでこのCD-ROMのディレクターは、実は私なのです。今年の夏発売の製品なのに、去年辞めたはずの私がディレクターとはいったいどういうこと?というつっこみはしないでください。これにはいろいろと事情がありまして…。


最後にもうひとつ。カブトムシを買った2週間後にノコギリクワガタ・オス1匹を買ったのですが、これは現在も生きています(買ってから12週目)。そして、屋外でつかまえてきたコガネムシ(種名は不明)1匹も同居してます(捕獲から8週目)。彼らがいつまで生きるのか、死ぬまで見守っていくつもりです。


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