Vol. 67(2000/11/6)

[今日のテレビ]アニマル・レスキュー・キッズ

(NHK教育 火曜夜6時45分〜7時15分放送)

それは10月のある日のこと。新聞のテレビ欄をチェックしていた私はある新番組のタイトルを見て仰天しました。その番組名は「アニマル・レスキュー・キッズ」。

げげっ。

私自身、「動物探偵 理子!」というストーリーを考えていて、ホームページtakumi-cb.comのillustration:charactersでこっそり紹介しているのですが、番組名からして内容が近いような予感がします。しかも実は「動物探偵 理子!」のサイドストーリーとして「アニマル・レスキュー有限会社」というものも構想にあったので、これは完全に内容がぶつかってしまうのではないか?!という懸念もでてきました。これは番組を見て確認するしかない!
NHK教育のこの時間帯は確か海外の子供向けのドラマが多かったはず、日本には動物番組を作るような知恵も基盤も無い、するとやはりアメリカかイギリスの番組だろう、という予測はつきました。しかし、動物が登場するならペットだけとは限らないでしょう。時には猛獣が登場するかもしれません。すると実写ではなく、アニメーション作品かもしれないな…などと思いつつ、第1回の放映を見たのでした(ビデオ録画でですが)。


「アニマル・レスキュー・キッズ」(原題:Adventures of Animal Rescue Kids)、アメリカのハイペリオン・エンターテインメント社の実写のドラマ作品です。(NHKにはちゃんとホームページもあります。)
「アニマル・レスキュー・キッズ(ARK)」は高校の同級生4人によるグループです。「ARK」の仕事は動物を助けること。ホームページを持っていて、メールで依頼を受け付けています。情報収集にもインターネットを使ったりしています。このあたり、いかにも現代らしい設定です。そういえば携帯電話も使ってますね。
メンバーを紹介しますと、

バレット 男、17才
リーダー。「ARK」の設立者。コンピューターに詳しく、ARKの資金もそれで稼いだ金を使っている。

ケイト 女、17才
サブリーダー。強い信念を持つ行動派。そういう意味では彼女が主人公なのかもしれない。菜食主義者。

ノア 男、16才
メカ担当。オタクっぽい感じ。彼が作るメカや仕掛けはARKに欠かせない。記録を撮るためにビデオカメラを持っていることが多い。

エリッサ 女、16才
俳優志望。(ここまでのところでは役回りがどうもはっきりしない存在)

番組はこれまでに4回放映されましたが、その内容を簡単に紹介すると、

レース用のグレイハウンド犬を虐待から救う話
ゴルフ場の池にすみついたワニ(アリゲーター)を保護する話
民家のプールに入浴に来るようになったアメリカグマを捕殺処分から救う話
オサガメの赤ちゃんを保護する話

といったものでした。
ワニやクマは本物が登場します。もちろん野生ではなく、専門プロダクションの動物タレントでしょう。それでもワニにクマとはさすがアメリカです。これからの放映で何が出てくるか楽しみです。
番組中での動物の扱い方も理にかなっています(クマの檻が二重檻になっている、ワニを捕らえるときに口をテープでしばる、など)。もちろん、ストーリーの都合上いくぶんの演出も出てきますが、それは仕方のないことでしょう(だけど、クマの檻の外側の柵の中に一般人がぞろぞろ入ってくるのはちょっとまずいかも)。

番組は当然いつもハッピーエンドですが、ARKのメンバーが動物について少々詳しいとしても子供ですので、事件を本当に解決しているのは市長であったり専門家であったりNGOであったりします。このあたりは非常に現実的な筋書きです。(彼ら自身で解決することもありましたが、それでも大人の協力は必要でした。)
私の「動物探偵 理子!」でも主人公は高校生なのですが(なんという偶然の一致!)、やはりストーリー上の大きな問題のひとつは「高校生に大人顔負けの活躍ができるのか?」ということです。これは「大人のふりをさせる」ということで回避していますが、子供が主人公のストーリーには常について回る難題ですね。
「アニマル・レスキュー・キッズ」では彼らの味方になる大人たちが必ず登場するのですが、では日本だとどうだろうかと考えさせられてしまいました。動物を保護する行政当局が活躍する話はあまり聞きませんし、NGOの活躍もあまりないような気がします。いや、原油流出の時や火山噴火の時の活動例はありますか。それでも、そういう事件がなければメディアに登場する機会もあまりなかったのではないでしょうか。もっと対外的な広報・宣伝をしてもいいのではないかな、と思います。
番組には味方になる大人がいる一方、理解してくれない大人もいます。ドラマを盛り上げるには欠かせない存在ともいえるのですが、これもまた現実です。そういった大人をどう説得するか、自分たちの考えをどうやって伝えるか。時には主人公たちも悩みます。単なる理想論だけでないのもこのドラマの面白さです。

さて、この番組は全部で何回の放映されるのかはわかりませんが、ずっと見ていこうと思います。動物が登場するからだけではなく、アメリカの動物事情や動物観・自然観を知るにも最適だと思うからです。


「アニマル・レスキュー・キッズ」その後

2001年冬からの第2クールからは、メンバーが一部入れ替わり、舞台も「キニョンガ動物保護センター」という民間施設に移りました。やはり子供だけで動物事件にかかわるという設定にはつらいものがあったのでしょう。動物保護施設なら、黙っていてもいろいろな事件が持ちこまれてくるわけです。また、施設には専門家などの大人もいるわけで、より話が進めやすくなったとも言えます。(その代わり、「アニマル・レスキュー・キッズ」という番組名の意味があやふやになった。)

2001年春からの第3クールは、舞台はそのまま、子供メンバーだけ入れ替わりました。第3クールは2001年7月に終了、「アニマル・レスキュー・キッズ」放映も終わりました。

(2001年7月22日)


[いきもの通信 HOME]