いきもの通信 Vol.70[OPINION]フィールドのすすめ 

Vol. 70(2000/11/26)

[OPINION]フィールドのすすめ

幸か不幸か今年は仕事らしい仕事がほとんどないため、写真やビデオを撮りによく出かけました。と言っても、もっぱらカイツブリの子供の成長を見続けるために井の頭公園にばかり行っていたのですが。
フィールド——動物観察の現場のことをこう言っているのですが——に通っていると、その環境や動物たちの姿がよく見えるようになってきます。目が慣れてくるため、そして経験的な知識が増えてくるためにだんだんと見えないものも見えてくるようになるのです。
フィールド(現場)に足を運ぶのは生物学の基本です。生物を知るには座学だけでは全然役に立ちません。フィールドで生活している本来の動物たちの姿を見ることこそが本当の勉強になると言えるでしょう。そのためにも日頃から現場に行って目を慣らしておくことは大切です。そうしないと目の前にいるものさえ見えないこともあるのです。また、目が慣れれば普通の人が見逃すものも見えてくるようになります。
実際、私は井の頭公園に通ったおかげでカワセミを目撃する確率が高くなりました。井の頭公園を毎日のように歩く人は多いのですが、カワセミを見たことがある人は少ないでしょう。カワセミに興味がある人ばかりではないでしょうが、たとえ注意深く目をこらしていたとしてもなかなかお目にかかれるものではありません。カワセミの行動範囲は水面近くに限られているとはいえ、その環境をすみずみまで利用しているらしく、ここには必ず来る、という場所を特定することができません。以前ここで目撃できたからまた同じ所で見れる、というものではないのです。それでも慣れてくればカワセミが好む場所というものがわかってきます。ここはカワセミ好みの場所だな、としばらく待っていると、本当にカワセミが飛んできたこともあったぐらいです。これもフィールドに通って観察眼をきたえた成果でしょう。

経験を積むにはあちこちのフィールドへ行ってさまざまな環境を体験するのも大切ですが、特定のフィールドに定期的に通うこと、つまり定点観察も大切です。いつも同じような風景に見えても、現れる動物は日々変化していきます。1年の内の限られた時期にしか現れない鳥や昆虫がいます。渡り鳥もすべての種類がいっせいに来るのではなく、種類によって時期が異なることがわかるでしょう。夏にはカルガモなど鳥の子育てをずっと観察できるかもしれません。1つの場所でずっと観察をしていても新しい発見はあるのです。自然観察は山奥や離島などの秘境でなくても可能なのです。

自然に親しむためには身近な所にフィールドを持つことを私はおすすめします。ただ、いきなりフィールドに行っても初心者にはどこに何があるのかわかりませんし、目の前にいる生物の名前さえわからないでしょう。最初のとっかかりが無くては、興味も持続しないでしょう。そこで、私が初心者におすすめするのが「自然観察会」です。これはその名の通り自然観察を目的にしたもので、専門家が講師としていろいろな説明をしてくれます。初心者でも気楽に参加できるものも多くあります。自治体が無料の自然観察会を主催していたりすることもあります。また、新聞のイベント欄に紹介されることもあります。
初心者はまずはこのような自然観察会で勉強をするのがいいでしょう。勉強といっても受験勉強ではありませんから、気楽に参加してみてください。


最後に、私もちょっとかかわってかる自然観察会を紹介しておきましょう。いずれも民間の、というか同好会的な観察会です。

水元自然ウォッチングクラブ コゲラの会
その名の通り、東京都葛飾区の水元公園で自然観察をしているグループです。1999年度までは同公園の緑の相談所が主催していたのですが、その緑の相談所が2000年度から無くなってしまったために、参加者有志で自主運営の会として引き継いでいます。講師はプロ・ナチュラリストの佐々木洋氏です。こちらに興味がある方は私にメールしていただければ連絡先をお知らせします。ほぼ隔月開催(だいたい第2土曜日)。

ブルーシートの会
一般の自然観察会よりもやや高度な内容を追求しているグループです。年に10回ほど観察会をやっています。詳細はホームページをご覧ください。

どちらの会でも1回だけ参加してみることが可能です。
実は来年(2001年)はこの両方で私が観察会の講師をすることが何回かあるかもしれません。


[いきもの通信 HOME]