Vol. 74(2001/1/7)

[今日の事件]「イヌの足を切断して金稼ぎ」事件

[ON THE NEWS]

大阪市の無職男性(63才)が、購入した子犬の脚を切断し、街頭で治療費のカンパを集めていた疑いがあることがわかった。警察は「動物の保護及び管理に関する法律」違反の容疑で事情聴取、近く検察に書類送検する。この男性は1999年12月ごろから10頭の犬で同様のことをしていたという。
(SOURCE:朝日新聞(東京版) 2000年12月28日)

[EXPLANATION]

去年の年末はこの新聞記事を読んでとても暗〜い気持ちになりました。こういう気持ちで世紀末を迎えることになるとは…。そして、新世紀最初の話題がこのような事件になったのはとても残念です。この調子では21世紀も動物たちの受難は続きそうです。
この事件は何というか、最低の事件ですね。弁解の余地もありません。動物なら脚を切断してもいいとでも思ったのでしょうか? いったいどんな気持ちで脚を切断したのでしょうか。1匹だけでなく、10匹もですよ! 犬ははっきりとした感情を持っています。危害をくわえられれば悲鳴のひとつもあげるはず、それでも脚を切断したとは、犬をモノとしか見ていないのでしょうか。
今の世の中は、容疑者のような無職の高年者が仕事を探すのは難しいのが現実かもしれません。しかし世の中には職安のようなシステムもあります。わざわざ動物を傷つけなければ生きていけないような社会ではないはずです。

さて、この事件の容疑は「動物の保護及び管理に関する法律」(通称:動物保護法)の違反です。ただし、2000年12月からは改正された「動物の愛護及び管理に関する法律」(通称:動物愛護法)が施行されています。この事件は11月以前だったため、旧法が適用されることになっています。旧法・動物保護法によれば、保護動物(主にペットや家畜のこと。野生動物は「鳥獣保護法」で扱われる)を虐待または遺棄した者は3万円以下の罰金または科料、となっています(第13条)。たったそれだけ?と驚かれる方も多いかもしれませんが、それが日本でのペットの地位だったのです。現実にはこの罰則は軽すぎると見なされていて、動物保護法ではなく「刑法」の器物損壊罪を適用する場合がほとんどでした(日本の法律では、人(法人を含む)以外は「モノ」扱いですので、法的に間違っているわけではありません)。つまり、動物保護法は有名無実の状態だったのです。器物損壊罪では3年以下の懲役または30万円以下の罰金または科料となります。動物よりも「器物」の方が罪が重いという変な状態だったわけです。1997年夏には学校で飼育していたウサギが殺される事件などが起こり、この法律の問題点も話題になりました。そうして動物保護法が改正され、動物愛護法になったわけです。この新法・動物愛護法では、動物をみだりに殺しまたは傷つけた者は1年以下の懲役または100万円以下の罰金となりました(第13条第1項)。他にも虐待・遺棄には30万円以下の罰金(第13条第2、3項)とするなど全体に強化された内容になりました。
私から見るとこれでも不十分な印象があるのですが、法律全体との整合性の問題もあるでしょうから現状では仕方ないかもしれません。動物の地位がもっと向上すれば、さらに改善されることもあるでしょう。今はそれを期待しましょう。

それにしても、この事件のよくわからないところは、たいして儲かるわけでもないのになぜこんなことをやったのかということです。新聞記事によりますと、計10匹のイヌを購入し、カンパで集まった金は100万円だったとのことですが、その買ったイヌはダルメシアン、シーズーといったブランドものの子犬ばかりです。こういう子犬は10〜20万はするはずですので、結果として「利益」はほとんどなかったはずなのです。血統がはっきりしないとか、病気にかかっている、あるいは売れ残ったような安い子犬ばかり買っていたのでしょうか。それでも、飼い続けようとしたらエサ代などのコストもかかるわけで、どう考えても割りのいい仕事?とは思えないのです。こんな小銭稼ぎのために犬たちがつらい思いをしなければならなかったとは、本当に悲しい事件です。


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