Vol. 88(2001/5/20)

[今日の本]骨の学校 ぼくらの骨格標本のつくり方

骨の学校 ぼくらの骨格標本のつくり方
[DATA]
著:盛口 満(もりぐち・みつる)、安田 守(やすだ・まもる)
発行:木魂社(こだましゃ)
価格:1700円
初版発行日:2001年3月25日
ISBN4-87746-085-3

[SUMMARY]骨と共に15年

自由の森学園中・高等学校の理科教員の著者2名(盛口氏は2000年に退職)が、生徒たちといっしょに動物の骨と格闘した15年のエピソードを紹介する。全編、骨の話ばかりで、死体を回収したり、クジラの骨を探しに行ったり、骨格標本作成中に発見した謎など、動物を普段とは違った角度から見ることができる。最後にはかなり具体的な骨格標本作り(豚足!)の手順などが紹介されている。

[COMMENT]骨から見る動物の世界

最近仕事が忙しかったというか、貧乏でお金が無かったというか、あまり動物本を買っていなかった私です。というか、最近紹介したくなるような本が無かったというのも正直なところです。だからつい書店チェックをさぼっていて、この本も某新聞の書評欄で紹介されて、慌てて買いに行った私なのでした。数ページに目を通すだけで傑作であることがすぐにわかる本でした。いかんいかん、こういう本こそ新聞よりも先に紹介せねばならんのに…。

さて本題。
皆様は「骨」というとどういうイメージを持たれるでしょうか。
私の場合、「骨」と聞くと思わず目をキラキラ輝かせてしまうのです。普通、骨と言えば、「骨」→「どくろ・がいこつ」→「死体」→「怖い」という風に連想してしまうでしょう。これが私の場合、「骨」は即「動物学の基本!」と連想するのです。動物の分類では骨は頻繁に出てくるものですし、動物イラストでも骨格を理解して描くのがとても重要だといわれています。そういえば、恐竜などの古生物は骨(の化石)だけで食べ物や生態まで推測してしまうのですから、その重要性がよくわかります。
しかも骨はなかなか入手できないものです。だってお店には置いてませんしね。動物の死体から採取しようと思っても、そもそも死体にお目にかかる機会さえほとんどありません。私が見逃しているのか、死体は意外と見つからないからなのか。まあ、もし死体を入手したところでどう処理すればいいのかわからないのでどうしようもないのですが。だから私にとっては骨というのは博物館や本でしか見ることができない、遠い遠い存在なのです。
ところが、この「骨の学校」では、理科の授業や、理科準備室で先生も生徒も骨格標本作りをいとも簡単(それなりの苦労はあるのですが)にやっているではありませんか。ええーっ、と驚いてしまうようなことですが、死体の入手方法、骨格標本の作り方についてが本書の中でしっかり説明されています。なるほどなるほど。それなりの道具があれば、専門家でなくとも挑戦できることなんですね。そんな彼らの試行錯誤ぶりや発見のエピソードはとても面白く、普段は体験することのできない動物の世界を読者も楽しめるでしょう。この本を読めば、骨に対するイメージも変わるのではないでしょうか。

この本で特に私が気に入ったのは、誰でもできそうな骨格標本つくりの方法が紹介されていることです。1つは、某Kフライドチキンの骨付きチキンからニワトリの骨格を復元する方法。あの骨付きチキンがほぼ全身を使っているとは知りませんでした。道理で変な食べにくい形があったんだ…。骨付きチキン9ピースで、頭と足先を除く全身の骨格がそろうそうです。おおっ、すぐにでも挑戦したくなるような題材です(下記参照)。
もう1つは、豚足から骨格標本を作る方法。これは骨格標本つくりの具体例として、道具から作業手順、組立図まで詳細に説明されています。初心者が挑戦するには手ごろなものでしょう。これまたすぐに挑戦したくなってしまいます。
骨格標本は専門家だけに許された遠い世界のものではないのですね。私でもできそう!と思わせる本書の内容。著者の狙いは必ず読者に届くでしょう。

最後に、この本の楽しみ方をもう1つ。本書の表紙カバーにはある動物の全身の骨格の写真が載っています。この動物は何か、推理してみてください。
良く見れば特徴ある骨ですので、細かい分類は別としても「〜の仲間」ということはわかるはずです。難易度は初級というところでしょうか。種名まで見分けるのは上級と思います。答は表紙カバーの内側に書いてあります。


フライドチキンの骨格ですが、さっそくやってみました。やってみるとこれはかなり大変ですね…。フライドチキンは高熱で処理されているためか、一部の小さい骨がもろくなってしまってます。またどの段階でかはわかりませんが、小さい骨が無くなっているようです(私の見落としかもしれませんが)。そして、一番痛かったのは、背骨がすべて縦に真っ二つになっていたことです。そのため、背骨がぼろぼろ。これでは標本を組み立てることは不可能です。道理で本には完成写真が載ってなかったんだ。フライドチキンは初心者向けではないんですね…。残念。
となると、やはり詳しい説明の書かれている豚足にチャレンジするべきなんでしょうなあ。挫折したフライドチキンの方はといえば、大きい骨を残して、洗浄の練習に使っております。


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