いきもの通信 Vol.106[今日の観察]フクロウに集う人々 

Vol. 106(2001/10/14)

[今日の観察]フクロウに集う人々

今年の夏のある日、私は自然観察会の下見のために東京都内の某公園へ行きました。すると、公園の入り口近くの道路に面したところで20人ばかりの人たちが超望遠レンズ付きのカメラをずらりと並べているのでした。「あっ、何ということになってしまったんだ…」と私はがく然となってしまいました。この場所は数年以上前からアオバズクという小型のフクロウが営巣・子育てをしている場所ということを私は知っていたからです。この大勢のカメラマンがアオバズク目当てなのは明らかでした。夜、帰りがけに通った時もその数は減っているようには見えませんでした。フクロウ類は夜行性ですが、昼間も枝にとまっていたりするので撮影できる場合もあります。今までこんなことはなかったのに、今年突然こうなってしまったのは、新聞などで紹介されたからに違いありません。これだけの人数が集まるとかなり異様で、通りがかりの地元の人と「これはいったい何を撮っているんですか? フクロウがいるんですか? いつもたくさん人がいるから何だろうとは思っていたんですけど。でも、どこにいるの? わからないわあ…。(私のビデオカメラのモニタを見て)あら、ほんと!」というような会話をしたほどでした。地元の人でも鳴き声を聞かなければまず見つけることは不可能でしょう。ここに集まったカメラ機材を合計すると1000万円を超えているな、と(貧弱な装備の)私は思いました。

そういえば、これと同じような光景を前にも見たことがあります。
今年の1月だったか、都内の別の公園でのことです。公園内の池の岸辺に、たくさんの人がいました。ここも何度も来ているので、私はすぐに「カワセミか」とわかりました。それにしてもこの人数、休日とはいえ20人ほどもいるとは…。カワセミはすぐ近くにいるので、超望遠レンズ付きのカメラの人だけでなく、通りがかりの散策者も集まっているのです。

このように、自然観察に出かけると大きなレンズをつけたカメラがずらりと並んだ光景に出くわすことがあります。こういったカメラの列は、間違いなく野鳥を撮影するカメラマンによるものです。そしてその場所は「野鳥を確実に撮影できる場所」なのです。撮影対象になる鳥はほぼ決まっていて、フクロウ類かカワセミです。
このようなカメラマン全員がプロとは思えません。年齢も中年以上ばかりで、アマチュアと推測されます。私が不思議に思うのは、彼らはプロでもないのになぜこんなに熱心なのか、ということです。まあ、これは趣味の問題ということにしておけばいいことかもしれません。しかし、これだけの人数がフクロウに与えるプレッシャーを考えると、ここまで熱心すぎるのも考えものです。彼らはそこまで考えているでしょうか。
もうひとつ不思議なのは、彼らの撮る種類がフクロウ類かカワセミ、あるいは珍鳥に偏っていることです。私のようにドバトやスズメのような地味な種類でも撮り、さらにはカエルでも昆虫でも撮るという人はほとんどいません。特定の種類ばかりに人気があるというのは自然保護の観点からはよくありません。自然環境を構築しているのはこのような人気者だけではないのですから。
このようなカメラマンたちに対しては不満もあります。それは、彼らが「いいとこ撮り」、つまり、いい写真が撮れる時期だけ現れるということです。某公園のカイツブリも、ヒナの孵化直後にはカメラマンが集まるのに、他の時期にも継続的に観察をしている人はほとんどいません。長期的に観察すればさまざまな生態を目撃する機会も多く、その動物に対する理解も深まりますし、写真撮影にも良いフィードバックがあるでしょう。一時期だけしか現れない人というのは非常に損をしていると思います。

動物の写真を撮ることがいけないというのではありません。動物たちへの影響を考えること、特定の種類にこだわりすぎないこと、特定の種類を見るのなら長期的に観察すべきであること。単に写真を撮るのではなく、幅広く自然をとらえる視点を持ってほしいものです。


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