Vol. 129(2002/4/28)

[今日のいきもの]空飛ぶ動物

動物には空を飛ぶ種類がたくさんあります。
その代表は鳥です。鳥類の多くは飛ぶことができます。体の構造は飛ぶために適したものになっています。
哺乳類ではコウモリが飛行可能です。こちらも鳥類とは異なるものの、体の構造は飛ぶためのものに進化しています。哺乳類には他にムササビやモモンガやヒヨケザルなども空を飛びますが、これらは自力飛行ではなく「滑空」なので、今回は対象外としましょう。
脊椎動物では、かつて中生代に恐竜の一部が空を飛んだとされています。始祖鳥がその代表でしょう。これらの系統は現在の鳥類の祖先(またはその分派)であることは確実です。中生代にはやはり爬虫類の中に「翼竜」というグループがいました。これらの飛行爬虫類は現存していません。
脊椎動物の中で空を飛ぶのは、現存種では鳥類と哺乳類(コウモリ)だけです。

次に無脊椎動物。
空飛ぶ無脊椎動物といえば、昆虫です。チョウ、ガ、甲虫、ハチ、トンボ、セミ、バッタ…と飛行昆虫は数えきれないほどいます。
昆虫の他に空を飛ぶのは……?ん?……いない? あれっと思って資料を調べたのですが、無脊椎動物で空を飛ぶのは昆虫だけのようです。これは私にとっても意外でした。無脊椎動物は脊椎動物よりもはるかに種類数の多いグループです。空を飛ぶ種類はたくさんいると考えたくなってしまいますが、実際は昆虫だけなのです。これは言い換えると、「空飛ぶ無脊椎動物は、すべて6本足である」ということでもあります。

以上をまとめると、現存の空を飛ぶ動物というのは、鳥類、哺乳類、昆虫だけに限られるということになります。昆虫は全動物の中でも最も繁栄している種類ではありますが、それでもたった3グループしかない、というのは少なすぎるような気がします。
生物が最初に出現したのは水の中でした。そして、長い歴史の中で陸上、さらには空へと順に進出していきました。最も生物種が多く生息するのは水中です。次が陸上、最も少ないのは空中です。これは、生物が進化した順序を考えれば当然のことと言えます。
なぜ動物たちは空へと行動範囲を広げていったのでしょうか? 高い所にある食物を食べるため、敵から逃げるため、あるいは移動範囲を広げるためと言った理由が考えられますが、今では確認することのできない謎です。恐竜の一部が鳥類へと進化していった理由も当然不明ですが、もしかしたら空を飛ぶ昆虫をつかまえるためだったのかもしれません。では、その昆虫は何のために空を飛んだのか? これまた大きな謎です。

水中→陸上→空中という進化の過程を見ると、人間が空に進出したのは当然のことのように思えます。ただし、人間は自らの身体を進化させるのではなく、飛行機という外部のシステムを構築して利用する、という他のどの生物にも真似のできない、生物進化的には掟破りの方法によって飛行を達成しました。そしてあっという間に宇宙空間にまでも進出しました。他の生物が達成できなかったことを短期間のうちに成し遂げたということには、人間の持つパワーの巨大さを思い知らされます。しかし同時に、通常の生物界ではありえないスピードでの進化(変化)は環境に対してかなりのプレッシャーになっていることも想像できます。人間はこのままのペースで進化してもいいのか? 一度立ち止まって考える必要がありそうです。


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