いきもの通信 Vol.208[今日の事件]鳥インフルエンザ報道の氾濫/動物事件におけるマスコミの傾向と対策 

Vol. 208(2004/2/1)

[今日の事件]鳥インフルエンザ報道の氾濫

動物事件におけるマスコミの傾向と対策

1月になってからというもの、新聞を見ると毎日のようにSARS、そして鳥インフルエンザの記事が載っています。野生動物・飼育動物の生死がかかっているという意味では、これは立派な動物事件です。動物事件がこれだけ報道されるというのも珍しく、数ヶ月分の記事がどっと集中した感があって、整理する私の方も十分に追いきれないほどです。タマちゃんの時でもこれほどの報道はありませんでした。
鳥インフルエンザについては、今ここで私があれこれ言っても、状況は常に変動していますし、専門家以上のコメントをすることはできません。鳥インフルエンザがこわいならば、信頼できる情報に耳を傾けるようにしましょう、としか言いようがありません。
そこで今回は動物事件そのものではなく、それを報道するマスコミについて、その傾向と対策を見てみることにしましょう。一口に「マスコミ」と言っても、その媒体によってさまざまな種類があります。就職活動中の学生は「マスコミ志望です」とか「マスコミならどこでも入りたい」とかいまだに言ってますが、同じマスコミでもテレビ業界と書籍業界ではまったく違う世界なのです。「マスコミなんて、どこでも同じ」ではないのです。
今回は、テレビ、新聞、雑誌、書籍という4つの主要メディアについて、その特徴と動物事件での傾向を見ていきます。


テレビ

テレビの報道は、ニュース番組、ワイドショーなどです。ニュース速報まで含めれば、24時間常に情報を送出しているメディアです。もっともお金が潤沢にあるマスコミです。
テレビの特徴は、「映像の力」と言えます。「映像が動き、当事者がしゃべる」というコンテンツは非常に強力な説得力を持ち、多くの人を思わず納得させてしまうような影響力もあります。これは逆に言うと、間違ったことも正しいと思わせる力があるということです。こういう力はどのメディアでも多かれ少なかれ持つのですが、テレビは特に強力です。
動物事件の扱いは、「かわいい(いやし系)動物」または「恐ろしい動物」のどちらかであることがほとんどでしょう。いずれも「視聴者に受けが良い映像」です。テレビはそういう「絵になるもの」を求める傾向が非常に強く、例えばカラス問題を取材するときには必ず「人を襲うカラスが撮りたい」とか言い出すものなのです(実話)。あるいはSARS関連だと「どこの動物園にハクビシンはいますか?」とか私に聞いてきたりするのです(実話)。また、行政・企業の言い分をそのまま垂れ流すだけの場合が多いです。こういったことの結果、動物事件の報道の内容は、本質を外した無内容なものになることもしばしばです。
テレビのワイドショーでは「コメンテーター」なる人物たちがもっともらしくコメントをします。ですが、彼らは動物のエキスパートではありませんので、動物事件のコメントはたいていが的外れです。では、テレビでは何を信じればよいかというと、それは「専門家のコメント」ということになるでしょう。ただ、それも長いインタビューの一部だけを編集したものですので、正確なニュアンスが伝わらないこともあります。専門家の中にはそれを嫌う人も少なくありません。一番いいのはスタジオに生出演、または、生中継ということになります(が、動物事件でそういうことってあまりないんですよねえ)。

新聞

新聞は日刊で、朝刊、さらに夕刊もあります。ここでは全国紙について説明します。
新聞はテレビに比べると即時性は劣りますが、その分じっくり詳しく事件を分析しており、情報の整理もしっかりしています。信頼性も高いと言えますが、これは歴史的な伝統によるところが大きいように私には思えます。
ただ、科学関係の記事は相対的に低い地位にあります。動物関係となるとさらに低くなります。新聞の花形というと、政治・経済・社会の3つで、その下に外報やスポーツ、文化となるでしょうか。科学はその下のような気がしますね。科学関係の記事を書く専門記者もいないわけではありませんが、その人だけが動物事件を書くのではありません。カラス問題は社会部だったり、動物愛護法だったら政治部、BSEで牛丼がピンチ!となると経済部、となるわけです。専門でない記者が半端な知識で書くこともあるので、そのあたりを注意して読まなければなりません。やはり行政・企業の言い分をそのまま垂れ流すだけの場合もあるので要注意です。

雑誌

雑誌と書籍の区別ができない人はとてもとても多いようです。あなたはこれらの違いをちゃんと説明できますか? 実は、流通の仕方も雑誌と書籍は違っています。
雑誌とは簡単に言うと「定期刊行物」のことです。雑誌は発行頻度によって月刊誌、週刊誌などと分類されます。
雑誌の代表のひとつは、いわゆる「オヤジ週刊誌」「女性週刊誌」です。これらは新聞広告や電車の中吊り広告などがあるため、他の雑誌と比べて世間への影響力が意外と強いメディアです。つまり、新聞を読むと、あるいは電車に乗ると、「新型鳥インフルエンザの恐怖!死者XX万人の大流行」とかいう見出しが目に飛び込んでくるわけです。これを見ると、その雑誌を読まなくても読んだような気になってしまうんですよね(笑)。で、実際にその記事を読んでみると、すごく普通のことを書いているだけ、というのはよくあることです。広告は人目をひくために過激なことを書く傾向がありますのでご注意ください。
専門誌を除けば、雑誌で動物事件の記事を書くのはたいていの場合「非専門家」です。動物のことをよく知らないライターが書いているのが普通です。ですから、動物事件の記事も表面的なものが多くなります。そんな記事の中であっても、専門家のコメントには注目すべきです。が、これも都合のいいところだけを切り取ったものだということは頭に入れておくべきでしょう。
では、どういう雑誌が信頼できるかというと、専門誌ということになります。が、動物専門誌も科学専門誌も少ないんですよね。

書籍

書籍とはいわゆる「単行本」の他、新書や文庫も含まれます。雑誌とは違い、定期的に刊行されるものではありません。
書籍の特徴は、著者が明確で、著者の見解が内容に的確に反映されるということです。動物関係のものは一般的に専門家がかかわることが多く、その内容の信頼度は高くなります。
では書籍ならなんでもいいのかというと、そうではないのがまた難しいところです。書籍はいつ出版されるかわかりませんし、タイムリーな時に本屋に並ぶとは限りません。また、最近は店頭での回転が速いため、後から探すともう無かった、古い本が見つからない、といったこともあります。内容も、古い情報に基づくものだと役立ち度は減少しますし、超専門的な内容だと普通の人には読みこなせません。
こう書くと、書籍もやっぱりダメなのか?と思われそうですが、ここまで紹介した4つのメディアの中では最も信頼できると私は考えています。


さて、ここで4つのメディアの特徴をまとめてみましょう。

・情報の更新頻度

最新の情報をより速く伝える順に並べると、テレビ、新聞、雑誌、書籍、となります。情報伝達は速いに越したことはありませんが、速すぎて勇み足になることもあります。一方、書籍は遅いからダメ、ということではなくて、後でゆっくり大勢を振り返ることが出きるという利点もあります。

・書き手は誰?

「書き手がはっきりしている」ということは重要です。名前を出しているということは、書き手も責任を持って書いているということ。匿名の場合はその責任を回避しているようにも受け取られます。
書籍は書き手がはっきりしているので問題ありません。専門雑誌では書き手がはっきりしていることが多いと思います。新聞も最近は署名記事が増えてきたようです。もっとも、新聞では書き手が専門家ではありませんので要注意ですが。
逆に匿名なのが、テレビと一般雑誌です。これらのメディアは、時におおげさに騒ぎ立てることがありますが、これは匿名性と無関係とは言えないでしょう。

ついでにインターネットについてもちょっと触れると、新聞系やテレビ系のニュース報道のページは、新聞やテレビでの報道内容とまったく同じです。新聞なりテレビなりと同等と考えていいでしょう。
問題なのは個人ホームページ、掲示板です。この場合、上に書いたように「匿名かどうか」が重要な判断材料になるでしょう。匿名の情報は無視してもいいと思いますし、せいぜい参考にする程度で十分です。


こう書くと、どのマスコミを信用していいのかますますわからなくなるかもしれません。そこで「マスコミ対策2箇条」を最後に紹介します。

・おおげさに騒ぎ立てる報道は信用しない
・専門家の発言には注意する

この2つを念頭に報道を見聞きするようにしましょう。報道を丸ごと信じるのではなく、冷静に分析する能力も読者・視聴者には求められているのです。
なお、「専門家」には「専門機関」も含まれます。今回の鳥インフルエンザで言えばWHO(世界保健機関)の情報は注目です。自衛隊海外派遣で頭がいっぱいの政府(首相官邸)の情報よりよっぽど役に立ちます(笑)。


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