いきもの通信 Vol.217[今日の勉強]「巣」と「ねぐら」は違います 

Vol. 217(2004/4/25)

[今日の勉強]「巣」と「ねぐら」は違います

この「いきもの通信」では、基本的な事がらの説明はたいていしてしまったのですが、まだちゃんとした説明をしなかったことがありました。それは「巣」と「ねぐら」の違いについてです。

「巣」と「ねぐら」の違い、わかりますか? たいていの人は同じものと思っているでしょう。しかし、鳥の場合「巣」と「ねぐら」ははっきりと異なっています。
簡単に説明すると、「ねぐら」は眠るための場所です。特別な構造物を建築することは普通はありません。一方、「巣」は卵を産み、あたため、ヒナを育てるための場所です。カラスやツバメの巣は住宅街でもよく見られるものですが、これらのように何らかの構造物を建築する場合がほとんどです(ほとんど手間をかけない種類もいます)。産卵からヒナの巣立ちまでの期間(繁殖期)は親も巣で眠ります。つまり、この時期だけは巣がねぐらも兼ねるのです。また、繁殖期以外の時期には巣を使うことはありません。
「巣」と「ねぐら」は野鳥観察の基礎知識ですのでぜひ覚えておきましょう。
他の動物の場合はどうでしょう。哺乳類は巣とねぐらが一致している場合が多いようです(人間も含めて(^_^))。爬虫類、両生類は卵を産んだらほったらかしですので巣はありません。昆虫もほとんどが卵はほったらかしなので巣は作りません。「ハチの巣」のようなものはかなり例外的です。
鳥類だけが「巣」と「ねぐら」をはっきり区別して使っているのです。

ところで、実際に鳥の巣やねぐらを見たことがある人は少ないでしょう。「都会には鳥がいないからね」と思っている人もまた多いでしょうが、それは誤りです。巣やねぐらが見当たらない理由は、鳥たちが巧妙に巣やねぐらを隠しているからです。子育ての場所、眠るための場所がそんなに簡単に発見されては身の安全が確保できません。
鳥が巣を作る季節は主に初夏です。この頃は樹木に若葉がおおいしげり、巣を見事に隠してしまいます。ねぐらも、樹木や建物の一部を利用したりしており、やはりよく観察しないとわからない場所を使っているものです。それでも普通は巣よりも見つけやすい場所にあります。
実際に観察しやすいねぐらは、ハシブトガラスでしょう。冬は公園や神社の林などに集団ねぐらを形成するので夕方観察をすればすぐにわかります。以前に紹介したハクセキレイのねぐらも、場所さえわかればとても観察しやすいです。
巣でわかりやすいのはツバメです。これは皆さんご存知のように、人家や建物の軒先に巣を作ります。普通の鳥ならば人間の近くに巣を作るようなことはないのですが、ツバメは人間がいる場所ならば外敵に襲われにくいことを理解しているものと思われます。つまり、人間を利用していると言ってもいいでしょう。
最も身近な鳥、スズメもねぐらや巣は見つけやすい場所にあります。私の新刊「動物の見つけ方、教えます! 都会の自然観察入門」でもちょっとだけ紹介しています。本当はねぐらの写真も載せたかったのですが、他とのバランスで載せられませんでした。スズメのねぐらと巣については、そのうちあらためて詳しく紹介したいと思います。


ところで、「ねぐら」は漢字では「塒」と書きます。私はこれまで「寝ぐら」と書いたりもしましたが、これは正しい書き方ではないようなのです。ただ、元は「寝座(ねくら)」と書いたらしいので、「寝ぐら」と書いても間違いではないと私は思います。こちらの方が印刷された文章上では読みやすいんですよね(でも、新刊「動物の見つけ方、教えます! 都会の自然観察入門」では「ねぐら」に統一しました)。


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