いきもの通信 Vol.221[今日の観察]お散歩昆虫観察のすすめ 

Vol. 221(2004/5/23)

[今日の観察]お散歩昆虫観察のすすめ

5月19日、20日のNHK総合テレビ「こんにちは いっと6けん」をご覧いただけたでしょうか。「都会の生き物観察」というテーマで、私がいろいろな動物観察を紹介しました。実はテレビに出演するのは今回が初めてではありません。ですが、丸2日もロケに同行し、長々とカメラの前でしゃべったのは初めてのことです。

さて、19日の番組で放送した昆虫観察方法について、あらためて紹介したいと思います。この観察方法は番組の後半で取り上げたのですが、あれだけではちょっとわかりにくかったかもしれません。
まだ名前も付けていなかったのですが、この観察方法をとりあえず「お散歩昆虫観察」と名付けておきましょう。この方法は最近気がついたもので、新刊「動物の見つけ方、教えます! 都会の自然観察入門」にも載っていません。番組1日目はこの観察方法だけを紹介しようと思ったほどの面白いユニークなものです。


観察の場所は公園の中。公園には写真(左)のような木の柵がよくあるはずです。「お散歩昆虫観察」はこのような木の柵をたどりながら、その表面を調べていくものです。柵は木製に限らず、鉄製の柵でもかまいません(写真右)。他にもフェンスの上、金網の上などでもいいのです。
柵に注目しながら歩いていくと、いろいろな昆虫を発見できるはずです。ただそれだけのとても簡単な観察方法なのです。
柵は表面がなめらかで模様も無いため、そこに何かがいると発見しやすいのです。昆虫が植物の上にいる場合、葉や枝などが複雑にのびているので、探そうとしても焦点が合わせにくいですし、葉の裏側に隠れていたりして、なかなか見つけにくいものです。

実際にどのような昆虫が現れるのか、私の体験から紹介してみましょう。
よく見かけるのは、テントウムシ類、カメムシ類、ガの幼虫類といったところでしょうか。昆虫ではありませんが、一番多く見るのはクモ類でしょう。クモといってもいろいろな種類がいますので、調べてみると面白いかもしれません。
現れる昆虫は季節によって変化します。
春から初夏はいろいろな昆虫が現れる季節です。
成虫で越冬したナミテントウは産卵し、幼虫→さなぎ→成虫への成長を見ることができます。カメムシの幼虫もよく見られます。運が良ければナナフシの幼虫、カマキリの幼虫も見られるでしょう。
夏も引き続きいろいろな昆虫がいるでしょう。林の中なら、暑さを避けてきたノシメトンボなどアカネ類のトンボが見られるかもしれません。カマキリもかなり成長しているはずです。
秋にはイナゴやキリギリス類も見られるようになります。カマキリは立派な成虫になっているでしょう。気温が下がってくると、暖かい場所を探しているトンボが休んでいるかもしれません。秋はこのように「大物」がよく現れますので要注意です。また、コカマキリが産卵しているところが見られるかもしれません。コカマキリは人工的な鉄柵や壁でも平気で産卵します。影になっているところ、すき間などをよく調べてみてください(実はコカマキリの卵のうは、ロケではちゃんと撮影したのにテレビ放送ではカットされたのです!)。
冬になるにつれて、昆虫の数は減っていきます。寒さに強い昆虫は何か、よく観察してみると面白いでしょう。
真冬には昆虫なんていないだろう、と思ったら大間違いです。成虫で冬を越す昆虫もいるのです。その代表がテントウムシ類やカメムシ類です。天気が良く、急に暖かくなった日には、日当たりのよい場所にこれらが姿を現すこともあります。

このように、「お散歩昆虫観察」は一年を通して継続できる観察方法です。年間を通じて観察すれば、昆虫の種類の移り変わり、季節の変化を実感できるでしょう。


「お散歩昆虫観察」のポイントは、草木が多い場所を選ぶことです。そのような場所にはいろいろな昆虫が現れる可能性が高いからです。なぜかというと、どうも近くの木の上から落ちてきたり、近くの植物から移動してくることも多いようなのです。草木にはもともと昆虫がたくさんいます。それらが何らかの理由で柵にやってくることがあるということのようです。そして、それを狙う動物食昆虫やクモ類も集まってくるのです。

「お散歩昆虫観察」の利点は、捕虫網を使わないということです(手ぶらでOK!)。昆虫観察というと、イコール昆虫採集、イコール捕虫網、と連想する方は多いでしょうが、この「お散歩昆虫観察」では捕虫網は不要です。実際に観察してみるとわかるのですが、昆虫というものは意外と逃げないものなのですよ(一般的な昆虫観察でも、捕虫網が必要になるのはチョウやトンボなどよく飛行する種類に限られます)。
できれば、小さな昆虫図鑑を持参するのがいいでしょう(腕に自信があるならカメラで記録するという方法もあります)。

一方、この観察方法の欠点は「偶然頼り」ということです。場所によっては昆虫がほとんど見られないこともあるでしょう。また、天気によっても左右されます。大した成果の無い日もあるかもしれません。
1日だけ観察してみて成果が無くてもがっかりしないでください。他の日にはいるかもしれませんし、他の場所を探してみるのもいいかもしれません。昆虫がたくさんいそうな場所を試行錯誤して探してみてください。

最後に1つだけ注意を書いておきます。
昆虫やクモにはむやみにさわらないでください。
昆虫の中には、くさいにおいを出すカメムシ類、刺すサシガメ類、やはり刺すチャドクガの幼虫など、不用意にさわると危ない目にあうものがけっこういます。名前も生態もわからない昆虫には手を出さないようにしましょう。


「お散歩昆虫観察」は、特殊な道具もノウハウもいらない簡単な観察方法です。文字通り、お散歩のついでに楽しめるものです。昆虫観察入門、自然観察入門としてぜひ試してみてください。


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