Vol. 222(2004/5/30)

[動物写真を撮る]デジカメで昆虫写真

今回もまたNHKの放送に関連する話です。5月19日、20日のNHK総合テレビ「こんにちは いっと6けん」では「都会の生き物観察」というテーマで、私がいろいろな動物観察を紹介しました。19日の放送では、デジカメで昆虫を撮る方法をちょっとだけ取り上げました。今回はこれをもうちょっと詳しく紹介しましょう。

まず最初はデジカメ選びです。既にデジカメをお持ちの方は、自分のデジカメが以下の性能・機能を持っているか確かめてみてください。

・マクロ機能は必須

「マクロ機能」とは「近距離から撮影できる機能」のことです。普通のデジカメは、被写体から50cm以上は離れないとピントが合いません。マクロ機能があれば、もっと近くでもピントが合うようになります。
昆虫写真を撮る場合、最短の撮影距離が10cm以下のものを選ぶことをお勧めします。昆虫は非常に小さいので、これぐらい近づかなければならないのです。

・外付けクローズアップレンズは使えるか?

マクロ機能が無い、あるいは最短撮影距離が長い(10cm超)デジカメでも、外付けのクローズアップレンズを装着すれば、その機能を補えることがあります。
また、マクロ機能があったとしても、1cm以下の小さすぎる昆虫では十分に拡大して写すことができません。拡大率を上げるためには外付けクローズアップレンズが必要になります。
クローズアップレンズ(マクロレンズとも呼ばれる)はデジカメのメーカーが発売していることもありますが、他社からもいろいろと出ています。デジカメによっては特殊なアダプターが必要になるのでちょっとややこしいですので、ご注意ください。
買う時は、デジカメのアクセサリーがたくさんあるお店で聞いてみた方がいいでしょう。

・ズーム3倍以上

ただし、一般的にはズームすると最短撮影距離が長くなりますので注意してください(ズームすると近い距離ではピントが合わなくなる)。

・画素数は多いほど良い

昆虫にはとても小さいものが多く、どんなにがんばっても大きく撮影できないことがあります。その場合には、写真データの一部分だけを切り抜いて拡大する、というのは普通にありえる話です。こういう事情を考えると、画素数は多いものを選ぶべきです。

実際に購入する時には、小さいものがちゃんと撮れるかどうか、店頭で必ず確かめるようにしてください。
例えば、短い定規を持参して、1〜3cm程度のものがどれだけ大きく撮れるか(そしてピントが合うか)試してみるといいでしょう。定規を持ち合わせていなくても、腕時計の文字板や自分の指の爪、お店の値札、硬貨など小さいものを撮ってみましょう。

いい昆虫写真を撮るには、高価なレンズ交換型デジカメが良さそうに思えますが、実際はそうでもありません。実は、レンズ交換型デジカメは最短撮影距離が20cm以上になってしまうので、意外と昆虫写真が撮りにくいのです。いろいろ工夫すれば不可能ではないことですが、もっと安いデジカメ(中級機クラス)でも十分に昆虫写真はとれるのです。
(現在、デジカメは新製品のサイクルが非常に速いので、ここで具体的な製品名を紹介してもすぐに古い情報になってしまいます。よって製品名は紹介しません。)


さて、デジカメを買っても昆虫写真はすぐに撮れるわけではありません。まず、昆虫はどこにいるのかを知らなければなりません。昆虫の居場所については、図鑑類を参考にがんばって見つけてください。

そして次は、どうやって撮るか、です。
飛んでいる昆虫は初心者はまず撮影不可能ですのできっぱりあきらめましょう(笑)。でもがっかりする必要はありません。あまり動かない昆虫はとても多いのです。また、いつも飛んでいるようなチョウやトンボも、必ずどこかで休みます。
昆虫を撮るには、マクロ機能をオンにして(あるいはクローズアップレンズを装着して)、できるだけデジカメを昆虫に近づけます。近づけすぎると逃げてしまうので、最初は離れた所から撮っていき、徐々に近づいていくのがいいでしょう。
この時、デジカメといっしょにあなたの体ごと近づくと、昆虫に圧迫感を与えてしまい、逃げられてしまうことがあります。そういう場合は、液晶モニターを見ながら、デジカメを持った手だけを昆虫に近づけるといいでしょう(できるだけ両手でデジカメを持って撮影する)。ただし、この方法は手ブレ必至なので、十分に明るい場所(日なた)でないといけません(シャッター速度が十分に速くなければならない)。
林の中のような暗い場所では、三脚や一脚などデジカメを安定させる道具が必須になります。

昆虫の撮り方といっても、昆虫の種類は非常に多く、それぞれ大きさや生態や行動パターンは異なっています。つまり、昆虫の種類によって撮影方法は変わっていくということです。さらに、気温などの気象条件でも昆虫の行動パターンは変化します。
昆虫の撮影方法には単純な法則があるわけではなく、その場その場で適切な撮影方法を考えていかねばなりません。細かいノウハウはありますが、ここで書くには複雑すぎるので、また別の機会があれば紹介することにしましょう。

昆虫を撮影するにあたっては、昆虫の名前や生態、行動パターンを知っておくことは有利なことです。日頃からの観察や撮影で得られる知識もあります。まずは、外に出て昆虫探しから始めてみてはどうでしょう。


テレビで見るよりも昆虫写真というのはけっこう難しいんだな、と思われた方もいるでしょうが、難しい面もありますし簡単な面もあります。ただ、デジカメはマクロ機能が強いなど、昆虫写真の場合はアナログカメラよりも有利な点が多くあります。デジカメの登場で昆虫写真撮影がずっと身近になったのは事実です。昔よりもハードルは低くなりました。昆虫写真に挑戦するにはちょうどいい時代とも言えるでしょう。


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