いきもの通信 Vol.227[今日のいきもの]ヨコヅナサシガメ/フリルがかわいいどう猛昆虫?! 

Vol. 227(2004/7/4)

[今日のいきもの]ヨコヅナサシガメ

フリルがかわいいどう猛昆虫?!

初夏の頃から見られるこの写真の昆虫、名前を知らない人は多いでしょうし、一見何の仲間かもわからないかもしれません。今日はそんな謎の昆虫の話です。


最初に結論です。この昆虫の名前は「ヨコヅナサシガメ」といいます。「サシガメ」とはカメムシの仲間で、名前の通り「刺すカメムシ」です。横から見た写真でわかるように、細長い針のような口を持っています。これでぷすりと刺すのです。何を刺すのかというと、チョウやガの幼虫を刺して、体液を吸うのです。つまり動物食の昆虫なのです。
針のような口というと、普通のカメムシもそうですし、近縁のセミも同じなのですが、こちらの方は植物の樹液を吸う植物食です。動物食のサシガメは、人間が手でつかむとちくりと刺すこともあります(けっこう痛いそうです)。普通のカメムシと違ってくさいにおいは出さないらしいのですが、刺される危険を考えるとさわらない方が無難です。めったに飛んだりしないようですので、さわらずに眺めるだけにしておきましょう。

ヨコヅナサシガメによく似たサシガメに「シマサシガメ」という昆虫がいます。見分け方は、ヨコヅナサシガメの方が一回り大きいこと、シマサシガメは脚が白黒模様である、ということです。


このヨコヅナサシガメは図鑑にもあまり載っていない種類で、資料が意外と少ないのです(サシガメというのはマイナー扱いされることが多いからです)。
なにかいい参考文献はないかな、とネットで検索してみたところ、以下の文献を見つけることができました。

http://nh.kanagawa-museum.jp/kenkyu/alien/22.html

神奈川県立生命の星・地球博物館のホームページに掲載されている文章です(しかも2003年執筆なので情報も新しい)。ネット上の文献は、内容の信頼性に疑問があることがほとんどなのですが、さすが専門家が書いた文章は的確なものです。こういう場合、アマチュアのホームページはほとんど役に立たないものなのです。
さて、この文献によると、ヨコヅナサシガメは中国原産で、日本で初めて発見されたのは1928年の九州とのことです。その後、東へ分布を広げており、現在は関東でも広く見られるようになっています。ただし、関東各地で目撃されるようになったのはここ10年ほどのことで、関東住民にとっては目新しい昆虫というわけです。昔昆虫少年だった人も知らないような新参者、となるわけです。古い資料を見ると、ヨコヅナサシガメの生息分布は「西日本」となっているはずです。ホームページで検索してみると、生息地を「西日本」としている所が多いのですが、これこそ参考にした資料が古い証拠です。

ヨコヅナサシガメはサクラによくいる昆虫です。都市でもソメイヨシノは普通にあるので、住宅地などでもよく見られる種類です。分布を広げる方法は、自然に分散している場合が多いのでしょうが、サクラの植樹にともなって生息域を広げている可能性もあるのではないかと思います。


さて、ここでもう一度ヨコヅナサシガメの写真を見てください。腹の左右にある白黒のフリルがとても目立ちます。このフリルは翅(はね)ではなく、腹の一部がせり出しているのです。本物の翅は、フリルの間に重なって収まっているのが写真でもわかるかと思います。
このフリルが横綱の綱、または化粧回しを思い起こさせるために「ヨコヅナ」の名前がついたとのことです。あるいは、サシガメの中では大きい方なので「横綱」と名付けられたのかもしれません。

それにしてもこのフリル、なにかどこかで見たような記憶があります…。うーん…。ああ、そうえいば、エリザベス1世の頃(1600年頃)のファッションにこういうのがありましたよね。ほら、首のまわりに大きなひらひらがついているあれです。そういえば、イヌ・ネコが手術後やケガの治療後に首につける大きなえりも「エリザベス・カラー」と言います(傷口をなめないようにするための道具です)。
うん、それなら「エリザベスサシガメ」という名前なんてどうでしょう。

しかししかし、黒中心の配色、フリルの過剰装飾、ワンポイント的に使われた赤…う〜んう〜ん、これもどこかで見たような聞いたようなイメージです…。えーっと…。
あっ、わかった!
ゴスロリ
だっ!(爆)
うんうん、ゴスロリですよゴスロリ。なんかイメージ的にもぴったりです。これからは「ゴスロリサシガメ」と呼ぶことにしてはどうでしょう。
*「ゴスロリ」の意味がわからない方はgoogleで調べてみましょう!(笑)

勝手に別名を付けてしまうのは生物学的にはあまりよろしくないことなんですけれど、親しみを持ってもらったり、姿形を覚えやすくするにはなかなか有効な方法です。こういう楽しみ方も面白いものですので、皆様も珍しい動物を見つけた時には試してみてください。


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