Vol. 252(2005/1/2)

[今日のいきもの]タカとワシ、イーグルとホークの違いとは?

新年明けました。さて、今年は酉年ということで鳥の話を今年の最初の話題にしましょう。そして正月でもありますので、「一富士二鷹三茄子」ということでワシタカの話です。
そういえば、昨年のニュースのひとつにプロ野球球団の新規参入というものがありました。結果的には、楽天がオーナーとなった「東北楽天ゴールデンイーグルス」が新たにパシフィック・リーグに加わることになりました。
ちなみに「ゴールデンイーグル」とは、もうご存知の方も多いと思いますが「イヌワシ」のことです。イヌワシは日本各地の山岳地帯に生息する大型のワシタカ類のことです。日本、朝鮮半島に生息するのは亜種Aquila chrysaetos japonicaで、種としてのイヌワシは北半球に広く生息しています。特に東北を象徴する鳥というわけではありません。
以上の情報は日本イヌワシ研究会のホームページから引用しました。

さて、パシフィック・リーグには「福岡ソフトバンクホークス」という球団もあります。イーグルとホークの違い、おわかりになりますか? 日本語に訳すとeagleは「ワシ(鷲)」、hawkは「タカ(鷹)」となります。辞書で調べてみると、

ワシ=ワシタカ目ワシタカ科で大型のもの
タカ=ワシタカ目ワシタカ科で中小型のもの

という風に載っていることが多いと思います。えー、この説明はこれはこれで間違いというわけではありません。ですが、専門家の一致した見解によると、ワシとタカの分類上の区別は無い、というのが定説になっております。実際、ワシタカの仲間でも「ワシ」「タカ」という名前がつかない種類は多いのです。例えばトビ。あれはワシですか?タカですか? ミサゴは? ノスリは? サシバは? ワシともタカとも言い難い種はたくさんあるのです。「ワシ」とか「タカ」というのは便宜上の名前でしかないのです。

実際に分類上ではどうなっているか見てみましょう。参考にしたのは「世界鳥類和名辞典」(山階芳麿・著、大学書林・発行、1986年)です。タカ目は以下のような分類になっています。

タカ目

コンドル科
4属
7種
タカ科
59属
218種
ヘビクイワシ科
1属
1科
ハヤブサ科
10属
58種

コンドルもタカの仲間なんですねえ。
狭義でいうところのワシタカとは、「タカ科」を指しますが、ここにはいろんな種が含まれます。主な属を拾っていくだけでもミサゴ属、ハチクマ属、トビ属、オジロワシ属、ハゲワシ属、カンムリワシ属、チュウヒ属、ハイタカ属(ツミ、オオタカを含む)、サシバ属、ノスリ属、イヌワシ属、クマタカ属…とまあ、非常に細分された動物群なのです。これだけ多様な種が並ぶと、「ワシ」と「タカ」という言葉は非常に大ざっぱなものであり、厳密な分類にはあまり意味がないことがわかるでしょう。
ひとつ注意してほしいのは、ハヤブサ科はタカ科とはっきりと区別されていることです。ハヤブサは英語では「ファルコン」と呼びますが、タカ目の中では小型の部類に入ります。カラカラやハヤブサがこの仲間になります。最大勢力はハヤブサ属で、チョウゲンボウもハヤブサ属に含まれます。

ちなみに英語ではどうなっているかというと、

ミサゴ=osprey(アメリカ軍のプロペラ式垂直離着陸機の名前です)
ハチクマ=buzzard
トビ=kite(凧という意味もありますが、原義はもちろんトビの方でしょう)
ハゲワシ=vultureまたはgriffon
チュウヒ=harrier(有名な垂直離着陸戦闘機の名前ですね)
ツミ、ハイタカ=sparrow hawk
オオタカ=goshawk
ノスリ=hawkまたはbuzzard
クマタカ=hawk eagle(ホークでありイーグルである…という変な名前)

といった具合です。が、これら英語名と日本語名の関係は必ずしも一致しているわけではありませんのでご注意ください(例えば、「オオタカ」の和名がつくものの中に「sparrow hawk」と呼ぶものがあったりします)。
ハヤブサ属は一般にハヤブサ=「falcon」、チョウゲンボウ=「kestrel」ですがこれもやはり日本語と完全一致しているわけではありません。


とまあ、「イーグル」だろうが「ホーク」だろうがどうでもいいことではあるのですが、「ホークス」の本拠地・福岡出身の私としては「ホーク」よりも大型の鳥である「イーグル」が球団名になるのはちょっと気に入りません。「阪神タイガース」と「西武ライオンズ」のように、同じネコ科でもリーグが分かれていればまだいいのですが、こちらは同じタカ科が同じパシフィック・リーグですよ。ライブドアの「フェニックス」の方がまだ良い名前だったのになあ、と思います。


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