いきもの通信 Vol.258[今日の事件]解説・外来生物法 その2・「特定外来生物」「未判定外来生物」の中身は? 

Vol. 258(2005/2/13)

[今日の事件]解説・外来生物法

その2・「特定外来生物」「未判定外来生物」の中身は?

さて、前回からの続きです。
まずは「特定外来生物」に何が選ばれたかを紹介しましょう。ただし、これらは現時点では「候補のリスト」に過ぎません。パブリックコメントを経て、正式に決まることになります。が、おそらくこのリストがひっくり返ることはないと思われます。

哺乳類
タイワンザル=霊長類オナガザル科マカク属
カニクイザル=霊長類オナガザル科マカク属
アカゲザル=霊長類オナガザル科マカク属
アライグマ=食肉目アライグマ科アライグマ属
カニクイアライグマ=食肉目アライグマ科アライグマ属
ジャワマングース=食肉目マングース科エジプトマングース属
クリハラリス(タイワンリス含む)=齧歯目リス科タイワンリス属
トウブハイイロリス=齧歯目リス科リス属
ヌートリア=齧歯目ヌートリア科ヌートリア属
フクロギツネ=有袋目クスクス科フクロギツネ属
キョン=偶蹄目シカ科ホエジカ属
鳥類
ガビチョウ=スズメ目ヒタキ科ガビチョウ属
カオグロガビチョウ=スズメ目ヒタキ科ガビチョウ属
カオジロガビチョウ=スズメ目ヒタキ科ガビチョウ属
ソウシチョウ=スズメ目ヒタキ科ソウシチョウ属
爬虫類
カミツキガメ=カメ目カミツキガメ科カミツキガメ属
グリーンアノール=有鱗目(トカゲ亜目)イグアナ科 アノール属
ブラウンアノール=有鱗目(トカゲ亜目)イグアナ科 アノール属
ミナミオオガシラ=有鱗目(ヘビ亜目)ナミヘビ科オオガシラ属
タイワンスジオ=有鱗目(ヘビ亜目)ナミヘビ科ナメラ属
タイワンハブ=有鱗目(ヘビ亜目)クサリヘビ科ハブ属
両生類
オオヒキガエル=無尾目ヒキガエル科ヒキガエル属
魚類
オオクチバス=スズキ目サンフィッシュ科オオクチバス属
コクチバス=スズキ目サンフィッシュ科オオクチバス属
ブルーギル=スズキ目サンフィッシュ科ブルーギル属
チャネルキャットフィッシュ=ナマズ目イクタルルス(アメリカナマズ)科イクタルルス属
昆虫類
ヒアリ
アカカミアリ
アルゼンチンアリ
無脊椎動物
ゴケグモ属のうち4種(セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ、ジュウサンボシゴケグモ、クロゴケグモ)
イトグモ属のうち3種
ジョウゴグモ科のうち2属全種
キョクトウサソリ科全種
植物
ナガエツルノゲイトウ
ブラジルチドメグサ
ミズヒマワリ

以上が候補のリストです。脊椎動物については分類まで細かく書きましたが、これは以下の説明にも続いていく大切なことなのです。
このリストに載せられた動植物は、有害外来種としてはよく知られたものです。人的被害を与えるもの、農業被害をもたらすもの、在来種と交雑するもの、在来種の生活をおびやかすもの、といった被害が実際にあるか、被害の可能性が非常に高いとされているものばかりです。問題になるのはこれらの生物だけではありませんが、まあ順当な選択だと思います。
具体的な選定理由については「特定外来生物等専門家会合(第2回)議事次第」の中の「資料3−2特定外来生物の指定対象とすることが適切である外来生物に関する評価の理由(案)」をお読みください。

未判定外来生物

未判定外来生物については、やはり上記ホームページの中の「 資料3−5未判定外来生物及び種類名証明書添付生物について(案)」に書かれています。それによると、
「未判定外来生物については、特定外来生物と似た生態的特性を有しており、生態系等に被害を及ぼすおそれがあるものである疑いのある外来生物について、基本的に我が国に定着記録がなく現在輸入されていない生物を選定し、1095 種の対象が挙げられた。」
とあります。
前回も書きましたが、「未判定外来生物」とは「今のところは被害はゼロかそれに近いが、今後被害が発生する可能性の高い生物」のことです。ただ、「現在輸入されていない生物」というのは正確ではないでしょう(動物園や研究目的での輸入はもちろん、ペット目的の輸入も既にあります)。
全部の種類を挙げるのは大変ですので、ここでは哺乳類を取り上げてみましょう。哺乳類の未判定外来生物には以下の109種が挙げられています。

・Macaca属全種(特定外来生物(以下「特定」)及び在来種除く)=霊長目オナガザル科マカク属全種
・マングース科全属全種(特定及びSuricata 属を除く)=食肉目マングース科全属全種
・Callosciurus属全種(特定を除く)=齧歯目リス科タイワンリス属全種
・Sciurus属全種(特定及び在来種を除く)=齧歯目リス科リス属全種
・クスクス科全属全種(特定を除く)=有袋目クスクス科全属全種
・オポッサム属全種=有袋目オポッサム科オポッサム属全種
・Muntiacus属全種(特定を除く)=偶蹄目シカ科ホエジカ属全種

最初のMacaca(マカク)属を例にちょっと説明しましょう。日本在来のサルであるニホンザルはこのマカク属に分類されます。そして、特定外来生物の候補に挙げられたタイワンザル、カニクイザル、アカゲザルも同じくマカク属です。同じ属に含まれる生物は交雑しやすいという性質があります。実際、ニホンザルとタイワンザル、ニホンザルとアカゲザルとの交雑が国内で確認されています。また、同じグループに属する種類は似たような生態(生活様式)を持っていることが多いので、日本での生息範囲を拡大させるおそれがあります。また同じ理由から、ニホンザル同様の農作物被害が発生しています。
上記リストのように「〜属全種」という幅の広い指定がされているのはこのような理由があるからなのです。

種類名証明書添付生物

「種類名証明書添付生物」とは外来生物法の本文には書かれていない項目です。これについては先ほどと同じ「 資料3−5未判定外来生物及び種類名証明書添付生物について(案)」にこう書かれています。
「種類名証明書添付生物については、輸入規制に際し、税関において特定外来生物又は未判定外来生物に該当しないことを外見から容易に判別することができない生物約3200 種について適宜内容の確認を行った。」
簡単に言うと、「未判定外来生物と外見がそっくりな生物。だから輸入する時には種類名を証明する文書を付けよ」ということです。
この「種類名証明書添付生物」は数がさらに膨大になっていますので、やはり哺乳類のみを取り上げてみることにしましょう。

・Macaca属全種
・アライグマ属全種
・マングース科全属全種
・リス科全属全種
・ヌートリア科・フチア科・パカラナ科・パカ科・マスクラット(ondatra属)に属する全種
・クスクス科全種
・オポッサム科全種
・Muntiacus属全種
(全428種)

「未判定外来生物」と同じようなリストに見えますが、微妙に異なるのがおわかりでしょうか。
例えば、リスについては未判定外来生物では「タイワンリス属全種」または「リス属全種」であったものが、種類名証明書添付生物では「リス科全部」に拡大されています。また、オポッサムも「オポッサム属全種」から「オポッサム科全種」に拡大されています。
リスの場合、リス科には256もの種が含まれます。例えば、モモンガやムササビの仲間もこの中に入ってしまうのです。もちろん、特定外来生物に指定されないものであれば輸入は可能です。外来生物法の本文には書かれていないものの、輸入防止のためにここまで気を使っていることがわかります。


さて、外来生物法に関しては、さらに「要注意外来生物」というカテゴリーがあります。今回は説明できなかったので次回に説明したいと思います。
そういえば、外来種として非常に有名なミシシッピアカミミガメやウシガエルがここまでの話の中では出てきませんでしたよね。そう、これらは実は「要注意外来生物」に含まれているのです。


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