Vol. 306(2006/3/5)

[今日のいきもの]東京ガマガマ探検隊!

ヒキガエルはどこで産卵している?

去年の秋のことです。私は杉並区高円寺の住宅地の狭い道路を歩いていました。その時、私の足下に大きな黒いカタマリがちらりと見えました。あやうく踏みつけるところだったのですが、私は瞬間的に足を止めなんとか回避しました。足を止めることができたのは、とっさにそのカタマリの正体に気づいたからです。その正体とは、もうおわかりと思いますが、アズマヒキガエルだったのです。いやはや危ないところでした。実はそのしばらく前にも同じ場所でアズマヒキガエル(おそらく同じ個体)を2回見ていたので、反射的にカエルだと判断できたのです。この時は昼間だったのですが、普通は夜行性といわれるアズマヒキガエルも雨が降っている時やその直後には昼間でも現れるということを知っていたのも幸いでした。
それにしてもその場所は商店街にも近く、私でも「まさか」と思うような場所でした。アズマヒキガエルは東京都23区内に普遍的に生息しているということを改めて感じることができた一件でした。

さて、アズマヒキガエルについては以前「夜の散歩者2」でもちょっと取り上げました。
アズマヒキガエルは、実は東京都23区内で最も数が多いカエルです。生息数は不明ですが、都心近くでも確実に生息していること、近くに水場が無いような場所でも生息していることを考えると、その数は非常に多いのではないかと推測できます。

私が東京都23区内のタヌキを調べていることは、この「いきもの通信」でもたびたび紹介してきました。私はタヌキにも興味がありますが、都市のアズマヒキガエルにも興味を持っています。そこでまたまた勝手ながら「東京ガマガマ探検隊!」を名乗ってアズマヒキガエルを調べたいと考えています。
ちなみに「ガマ」とは「ガマガエル」のことで、ヒキガエルの別名です。ガマというと「ガマの油売り」の「筑波のガマ」が有名ですが、あれはアズマヒキガエルのことなのです。児雷也が変身する大ガマというのもやはりヒキガエルのことですね。いや、あれは大ガマの背中に乗るんでしたっけ? 世代が違うのでよくわからんのですが…(苦笑)。


さてさて、アズマヒキガエルのことを調べるといっても、東京都23区内でも普遍的に生息しているわけですから、ここにいた、あそこにいた、という情報というものにはあまり意味がありません。調べるならわからないことを調べましょう。
アズマヒキガエルでわからないこと、それは繁殖場所です。アズマヒキガエルもカエルですからどこか水場で産卵する必要があります。これだけの数が生息しているわけですから、毎年利用できる水場があちこちに存在するはずです。それがどこなのかを知りたいのです。
既にわかっている繁殖場所のひとつは公園の池です。しかし、公園の池もどこにでもあるものではありません。民家の庭の池も有力な候補地です。問題は面積が広くないこと、魚(例えばコイ)の先客がいると卵やオタマジャクシが食べられてしまうことで、必ずしも条件が良いわけではありません。もっと条件が良く、あちこちに普遍的に存在する繁殖場所があるような気がするのです。
実は、それにぴったりの場所の見当はついているのです。それは学校のプールです。アズマヒキガエルが水場を利用するのは3〜5月だけで、人間がプールを利用する期間とは完全にずれています。つまり、プールはアズマヒキガエルにとって非情に都合のいい場所なのです。
私は実際、4月に学校のプールがオタマジャクシだらけになっている様子を観察したことがあります。ですからアズマヒキガエルがプールを利用するのは間違いないのですが、それがどの場所のプールでも同様なのかどうかはわかりません。学校関係者の皆様、情報がありましたらぜひ知らせてください。

また、その他にもアズマヒキガエルが繁殖に利用している場所がありましたら教えてください。


そろそろアズマヒキガエルは産卵の季節になります。
東京23区では、だいたい3月中旬頃に産卵をします。卵はチューブ状の白い寒天質に包まれた形をしています。池の浅いところで白いヒモ状のものがのたうち回っている様子はすぐに発見することができるでしょう。
卵が孵化するとオタマジャクシが現れます。小さく黒いオタマジャクシがたくさん泳いでいるのがわかるはずです。
4月下旬、ゴールデンウィークの頃には早くも成体になって上陸を開始します。そして、ゴールデンウィーク明けには池はすっからかんになります。
以上のタイムテーブルを参考に、アズマヒキガエルの繁殖を観察してみてください。
アズマヒキガエルの繁殖は学校の授業でも利用できるでしょう。ただ、春休みやゴールデンウィークなどの長い休みにかかってしまうのが難点です。
学校でオタマジャクシを飼育するのも面白いかもしれません。いろいろな飼育の本を参考にしてください。ただし、上陸直後の小さな小さな成体の時期は飼育は非常に困難です。カエルは生きている動物を食べます。といってもあまりに大きなものを飲み込むことはできません。体が非常に小さい時は小型ハエやその他の小型昆虫を食べているのですが、これらを入手するのは非常に難しいことです。また、死んで動かないものも食べません。こういった理由から、小さな成体の飼育は(片手間では)まず無理とお考えください。成体になりそうな時期になったら、元の池に放すなどした方がいいでしょう。


ということで、またまた勝手に始めた「東京ガマガマ探検隊!」、皆様の情報をお待ちしております。


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