Vol. 307(2006/3/12)

[今日の事件]小学校でハトを殺した事件

冷静に穏便にハトに対処するには

[ON THE NEWS]

大分県のある小学校で2004年秋から2005年春にかけて、ハトのフン害に困り、ハトを捕獲して燃えるゴミとして出していたことが判明した。
当時、最大50羽ほどが校舎に集まり、ベランダなどにフンが数cmつもることもあった。ハトがとまれないように突起物を置いたが効果はなかったとのこと。
(SOURCE:毎日新聞(オンライン) 1月21日)

[EXPLANATION]

動物愛護とか自然保護とか、生命を大切にしようという時代の流れがあるにもかかわらずこういう事件が起こってしまうものですねえ。しかも、教育の現場でこれですから。

この事件、鳥獣保護法違反になるのか動物愛護法違反になるのか迷ってしまうかもしれませんが、ハトに飼育者がいるわけではないと考えると、野生動物扱いということになり、鳥獣保護法違反になります。これは生死にかかわらず「捕獲」したことが法違反になります。
ところが記事には法違反についてはまったく書かれていません。新聞記事には普通何の法律に違反したのかは書かれるものですから、それがないということは警察は何もしなかったということになるのでしょうか? いやはやかんべんしてほしいですね、法は法なのですから。ここできちんと対応せねば、「ハトは殺してもいいんだ!」と誤解する人が必ず出てきます。この事件は明らかな法律違反として扱わなければならないのです。

そういう法律のことはとりあえず置いといて(だからといってどうでもいいことではないが)、ハトのフン害に悩まされている例は全国各地あちこちにあることと思います。この小学校でも「フンが数cmつもった」とのことですから相当困っていたというのもよくわかることです。何とかせねばならないと思うのも当然です。でも素人判断ではなかなかうまくいかないのが動物対策というものです。いろいろ試してもうまくいかないのなら、専門家に問い合わせてほしいものですし、それが(予算の都合などで)できないのならば周囲や教育委員会などへ相談をするべきだったでしょう。自分たちの手には負えないとわかったならば、外部の協力を求めるべきでした。ハトを殺せば問題解決、などという発想はあまりにも安直なものです。

では、どうすればハト害を防ぐことができるのか、その例を紹介しましょう。ただし、実際に対策を実施するにあたっては現場の状況によりやり方は変化します。本当にお困りの方は専門家にご相談ください。
私が目撃した例のひとつはある神社でした。そこはハトがとまりそうな場所、例えば軒下やはりが突き出た所などに徹底的に大きな金属針を設置していました。その徹底さには私もびっくりしたほどで、かなり狭い場所にもびっしりと(短い間隔で)設置されていました。文字通りすき間もないほどです。外見的にはちょっと異様な感じではあります。しかも神社ですからね。ただ、それに気づく人はほとんどいないようでした。ひょっとしたら何かのアクセサリーのようなものと思われているのかもしれません。
この神社では建物にとまるハトは皆無でした。もちろん、周辺にはハトはそれなりに生息しています。それでもフン害を防止するにはまず建物に寄せ付けないことが肝心です。ハトがフンがたまりやすい場所とは、夜のねぐらになっている場所、あるいは雨宿りできる場所です。そのような場所は恒常的にハトが滞在しますので、フンの量も多くなるのです。そういう場所から締め出すことが対策の基本です。
上の事件の記事によれば、針には効果がなかったとのことですが、それは配置の仕方が間違っていたということです。あるいは、小学校という場所柄、どこにでも針が置けなかったのかもしれませんが。

私が目撃したもうひとつの例は、これまた別の神社でした。こちらの場合は、ハトが入りそうな場所、とまりそうな場所を金網でふさいでしまうというものでした。当然ながらここでも徹底的に金網を設置していました。こうすればハトが来れないのは明らかです。ビジュアル的には針よりもこちらの方が穏やかな感じを与えるでしょうね。
この方法は、マンションのベランダに来る場合にも応用できます。繊維製のネットを張ってもいいのですが、破れたりすき間ができたりすると効果がなくなりますので、がっちりとした金網をおすすめします。

これらの例からわかるように、ハト対策の基本は建物に近づけさせないことです。爆音で驚かせるとか、目玉模様で追い払うといった方法は効果が長続きしない可能性が高いのです(それに音の場合は近所迷惑になる)。むしろ、物理的に近づけないようにすることこそが根本対策なのです。
できれば、近くでのハトのエサやりも止めてもらった方がいいでしょう。いつもエサを与える人がいると、その場所からなかなか去ってくれません。

とにかく、ハト害は防御できるものなのです。困った時は専門家や業者を探して対処してほしいものです。安直で短絡的な解決方法に走らないようお願いします。


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