Vol. 315(2006/5/7)

[今日の観察]自然観察にgoogleマップを活用する

自然観察の原則は「現場に行くこと」に尽きます。現場に行って本物を見ずして何がわかるか、ということです。まるで刑事ドラマの世界みたいです。現場とはたいてい屋外ですので電源がありません。そのため、自然観察では双眼鏡とか捕虫網とかハンディ図鑑といったローテクというか古典的なツールが今も愛用されています。もちろんハイテクなものも最近はありますが、デジカメ、デジスコ、GPSといった程度ですかねえ…。パソコンを持っていくことはほとんどないでしょう。重くて荷物になりますし、夏は強い日光で画面が見にくく、冬は寒くてバッテリーの持ちが悪くなります。それに高速回線に接続できないのではハイテクも活かせません。
そんなパソコンも家に帰れば強力なツールになることは間違いありません。今回は、最近私が活用しているツールを紹介しましょう。


googleといえば、パソコンを使っている人なら今では誰でも知っているネット検索サービスです。そのgoogleのサービスのひとつに「googleマップ」というものがあります。googleローカルとは、簡単に言うと地図検索サービスです。ためしに、あなたがお住まいの地名を入力してみてください。地図が表示されます。
説明をしやすくするため、場所を特定してみましょう。「新宿御苑」と入力してみてください。新宿御苑とは、その名の通り東京都の新宿にある大きな公園で、自然観察にも適した場所です。googleローカルで表示された地図には道や池などが書き込まれていてそのまま使えるレベルのものです。建物の名前とかもうちょっとほしいところですが、市販の地図にも匹敵するレベルであるのは確かです(地図図面はゼンリンの提供のようです)。
googleローカルのすごいところはこれだけではありません。右上に「サテライト」というボタンがありますので、それをクリックしてみてください。すると、画面は衛星写真に切り替わります。衛星写真では地図よりも細かい情報が読み取れます。樹木があるところ、芝生のところ、舗装されたところがはっきりとわかります。また、池に注目してみると、普通に水面がある池もありますが、緑に覆われている池があることもわかります。これは「マップ」(通常の地図画面)と「サテライト」を切り替えながら比較してみるとよくわかります。水面が緑に覆われているということは、抽水植物(ハスなど)、ホテイアオイ、水草といったものが存在すると推測できます(実際はハスがはえている、と記憶しています)。また、この水面や周囲の樹木の色や繁茂具合からこの衛星写真が撮られたのは夏だということがわかります。また、建物などの影から正午近い時刻らしいこともわかります(衛星写真は時々更新されているようですので、今回書いたことはいずれは通用しなくなります)。
こんなにすごいgoogleローカルですが、欠点もあります。今度は「那覇」を入力してみてください。通常の地図は問題ないのですが、衛星写真に切り替えると…こちらはかなり低解像度な写真になってしまうのです。これでは使い物になりません。これはどういうことかというと、高解像度の衛星写真は大都市部だけしか用意されていないのです。地方では使い物になりませんね…。ここでは那覇を例に出しましたが、これは那覇が田舎だと言いたいのではなくて、大都市以外の解像度はどこもこんな感じなのです。

この程度の解像度では自然観察には使えない!と思われる方も多いでしょう。しかし私の場合はそうではないのです。私のメインテーマのひとつは「都市動物」そして、私が活動している場所は主に東京都23区内(およびその周辺)です。この地域ならば、衛星写真も高解像度のものになり、実用的な価値を持つことになるのです。
高解像度の衛星写真では、空港の飛行機の種類がある程度見分けられるのではないかというほどです。また、人間までは見えませんが、道路を自動車が走っているのは見えます。これほどの解像度があれば、通常の地図よりも現場の自然環境をかなり正確につかむことができます。
また、通常の地図画面もかなり細かいもので、個々の建物が判別できるほどの縮尺です。市販の地図でもこれだけ細かいものはあまりありません。(ちなみに山奥になると目標となるものが少なすぎるためこの地図は実用的ではない。植生までわかる国土地理院の25000分の1地図の方がよっぽど役に立つ。)

では、googleローカルをどう使うのか。私の利用例を紹介しましょう。
一番よく利用するのは「出かける前の予習」です。これから行く場所とその近辺の自然環境をチェックするのです。私が注目するのは緑地と水です。動物というのはだいたいそういう場所にいるものですから要チェックです。通常地図画面と衛星写真を比べながら、足を運ぶべき場所を事前に決めていくことができるのです。予習せずに現場をだらだらと歩いてもいいんですが、それだと全体が見渡せず、絶好のポイントを見落とすことにもなってしまいます。
まあ、予習に時間をかけすぎると固定観念になってしまって現場を観察する妨げになる可能性もあるかもしれません。予習はほどほどにしておいて、現場を歩くことに集中するという方法もあるでしょう。その場合でも、帰ったらgoogleローカルで復習するのは悪くありません。歩いた場所を地図と衛星写真で確認すれば、まわりの状況も理解しやすいでしょう。また、見落としていた場所を発見できるかもしれません。次に行く時の参考になるでしょう。

私はまた、タヌキ調査にもgoogleローカルを利用しています。調査前の予習に使うのは当然ですね。周囲の住宅配置、道路や鉄道、学校、寺社…こういった調査のポイントになるものは必ずチェックしていきます。そして、衛星写真を使って緑地の場所を確認していきます。今までは緑地は普通の地図では十分に確認できませんでした。普通の地図では公園でも樹木は表記されていませんし、それ以外の寺社、学校、個人の庭といった緑地はまったく把握できません。しかし、衛星写真と組み合わせれば地図では見えない緑地が見えてくるのです。タヌキと緑地は切り離せない関係にあるので、この情報は非常に有用です。
タヌキについては別の利用方法もあります。この「いきもの通信」では東京都23区内でのタヌキ目撃情報を収集していて、時々メールで情報が寄せられます。情報が届いたらまずすることは、(もうおわかりでしょうが)googleローカルで現地の自然環境をチェックすることです。地図と衛星写真で現場周辺の緑地を確認すれば、タヌキがいそうな場所はだいたい予想がつくものなのです。
また、目撃情報がない場所でもgoogleローカルで眺めてみると「ここにはタヌキがいそうだなあ」と思える場所というのが見えてくるものです。ちょっと暇な時に、あるいは気になる場所の情報が入った時にそうやってgoogleローカルで「散歩」をしてみると面白いことがわかってきたりします。

※地図と衛星写真だけでなぜタヌキの居場所がわかるんだ?という疑問を持たれる方がいるでしょう。これは私の知識と経験の蓄積によるもの、とだけ言っておきましょうか。あんまりこちらの手の内を明かすのもなんですので、今は出し惜しみしときます(笑)。いずれ機会があれば紹介できることがあるかもしれません。

googleローカルを活用するといっても、そう複雑なことをするわけではなく、誰でもできることです。そしてまだまだ新しい活用の仕方があるかもしれません。


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