Vol. 344(2006/12/24)

[今日のお参り]年始に動物三社参りはいかが?

新年を前に、今回は初詣でについて書くことにしましょう。ここは「いきもの通信」ですから、当然、動物に関係する初詣でです。

「三社参り」という言葉があります。年始に3つの神社にお参りすると縁起がいい、ということです。たいていの人は地元の神社を巡ることが多いでしょう。
この「三社」とは、元々は朝廷が伊勢神宮、石清 水八幡宮、賀茂神社を参拝したことに由来するそうですが、いつからか全国各地の庶民にも広まり、それぞれの地域によって、それぞれの人によっていろいろな「三社」になっています。細かいことを言うと、三社の選び方にもルールがあるようですが、それを厳格に守っている人はほとんどいないでしょうね。
「三社参り」の由来について、Wikipediaの「三社参り」の項では「和歌山市にある日前神宮・國懸神宮(ひのくまじんぐう・くにかかすじんぐう)と竈山神社(かまやまじんじゃ)と伊太祁曽神社(いだきそじんじゃ)」と説明されていますが、そうなんですか? それってローカルな話題ではなく正当な由来があるのでしょうか。そのあたりの説明がないのでどうも信頼していいのかどうか…。


さて、今回私がお勧めするのは「動物三社参り」です。つまり、動物に関係する神社3つをお参りしましょう、ということです。例えば、お稲荷様や庚申樣がそうですね。お稲荷様のキツネ、庚申様のサルは神様そのものではありません。「神使(しんし)」つまり神の使い、神の代理なのです。多くの神社にはこうした神使がいます。
そこで皆様のご近所にもあるであろう代表的な動物関係神社をご紹介しましょう。

まず、稲荷神社。これはキツネで有名です。稲荷神社は大きなものよりも、別の神社に付属するもの、街中にひっそりとあるものという印象が強いでしょう。さらには会社がまつっているものまであります。たいていの街には存在するので最も見つけやすいでしょう。

次は猿田彦神社、別名「庚申樣」。猿田彦といえば日本神話に登場する猿田彦神のことです。「猿田彦」だから神使は「猿」となったようです。「庚申」は「こうしん」あるいは「かのえさる」と読みますが、元々は干支の組み合わせの一つにすぎません。これも「かのえさる」と「猿」が結びついたものだそうです。
庚申様といえば、年最初の庚申の日は「初庚申」と呼ばれ、猿田彦神社では祭りが行われます。私の生まれ育った福岡市で最も有名な猿田彦神社は早良区藤崎にあります。初庚申では猿の素焼きのお面が売られていましたね。

次は天満宮、別名「天神樣」。神使はウシ。京都の北野天満宮と福岡の太宰府天満宮が2大天神樣です。天満宮といえば受験生にはおなじみの学問の神様です。天満宮にまつられているのはご存知「菅公」こと菅原道真です。菅原道真とウシがなぜ結びつくのかというと、菅原道真が左遷された太宰府で死去して遺体を牛車で運んでいると、途中でウシが動かなくなってしまい、そこが太宰府天満宮の場所となった、ということからきています。この他にも菅原道真にはウシに関するエピソードがたくさんあるそうですが、うーん、ほとんどは後世の後付けなんでしょうね。
実は、天神様というのは菅原道真よりも以前の時代から存在していました。天神様すなわち天の神様=「雷の神樣」だったのです。雷→雨→農耕→ウシという連想からウシが神使になったようです。

もうひとつは、弁才天(弁財天)、別名「弁天樣」。弁財天と動物はあまり結びつかないようですが、神使はヘビ(白蛇であることが多い)です。
弁財天はもともとはヒンドゥー教の女神サラスヴァティー(Sarasvati)です。外国の神様なんですね。それが中国経由で日本に伝わり、仏教では妙音菩薩と同一視されたり、七福神にも列せられたりと大人気のアイドル…じゃなかった、女神樣なのです。
サラスヴァティーは芸術、学問の神であり、水と豊穣の神でもあります。そのため水や川との関係が深い神様でした。水の神様といえば龍神やヘビにまつわる伝承が多くあります。そのため弁財天とヘビが結びついたのでしょう。

だいたい以上の4つの神社ならたいていの場所にはあることでしょうから、動物三社参りもそれほど難しくないでしょう。
他には春日大社・鹿島神宮・厳島神社の「シカ」、住吉大社の「ウサギ」、八幡宮の「ハト」などがあります。詳しくはWikipediaの「神使」または「神社」の項をご覧下さい。
動物好きの方はぜひ動物三社参りに挑戦してみてください。


私がこのところ関心を持っている動物といえばタヌキですが、不思議なことにタヌキの神社というのはあまり聞きません。存在しないというわけではなく、全国各地に散らばっているようです。お稲荷様のように全国ネットワークがしっかりしていないから有名ではないのでしょうか。

東京のタヌキの神社といえば柳森神社があります。秋葉原のすぐ近くです。東京神社庁のホームページによりますと、もともとはお稲荷様の系列のはずですが、どうしてタヌキになってしまったのでしょうね。私はまだ行ったことがありませんので、年が明けたら一度行ってみようと思います。
札幌には本陣狸大明神社があります。これは狸小路商店街に建立された比較的新しい神社です。なかなかにぎわっているようで、一度は行ってみたい場所ですね。


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