Vol. 349(2007/2/18)

[今日の勉強]ヤモリとイモリ、どう違う?

ヤモリというとどうもあまりいい印象は持たれていないようです。夏の夜、家の外壁やガラスにぺたっとはりついているヤツ。目玉はぎょろっとしているし、どことなく不気味な印象です。
ヤモリをなんとかしてくれないか?とたずねられたら、私はこう答えます。
「別に毒も害もない動物なので放っておいて大丈夫ですよ。それにヤモリは『家守=家を守る』と書くくらいで、ハエとかカとかの害虫も食べてくれてるんですよ。」
さて、ヤモリとは別にイモリという動物もいます。これらはよく混同されるのですが、この違いわかりますか?


ヤモリは爬虫類の仲間です。分類は有鱗目トカゲ亜目。つまりトカゲの仲間なんですね。トカゲの仲間とは思っていない人も少なくないかもしれませんが、あの形はトカゲそのものです。
上にも書いたように、ヤモリは漢字では「家守」と書きます。ヤモリは家屋外壁でよく見られ、ガなどを捕食するので害虫を食べるいい動物と見なされていたのでしょう。もちろん害虫だけではなく益虫も食べていたりするのですが、生態系を構築する一員であるのですからその存在を軽んじていいものではありません。
日本本土ではヤモリとはニホンヤモリのことです。南西諸島などにはまた別の種類のヤモリがいます。

もう一方のイモリは両生類で、有尾目に属します。これはサンショウウオと同じグループになります。
イモリは漢字では「井守」と書きます。この場合の「井」とは井戸という説もありますが、水田を指しているとも言われます。実際、ニホンイモリは水田のような止水に生息しています。
日本本土に生息するのはニホンイモリ、別名アカハライモリです。名前の通り、腹が鮮やかに赤いのが特徴です。

こう説明しても、ヤモリとイモリの体型は似ているので区別するのは難しいと思われるでしょう。では、違う点を比べていくことにしましょう。

まず、ヤモリは水に入ることはありません。
イモリは、両生類であることからわかるように水が欠かせません。卵や幼生は水中ですし、成体になってからもだいたい水中生活です。

イモリが両生類であるということは、カエルやサンショウウオと同じような生態であるということになります。つまり、幼生の時は水中生活ですのでエラ呼吸をします。イモリやサンショウウオの場合、エラは体の外に枝のように張り出しています。これを「外鰓(がいさい)」といいます。ウーパールーパー(これも有尾目の仲間)を覚えている方なら、枝のような外鰓を思い出せるのではないでしょうか。これは両生類独特のものです。
当然、爬虫類であるヤモリにはエラはありません。

カエルの卵は硬い殻がない、柔らかなものですが、イモリの卵もやはり同じように柔らかいものです。これは両生類全般に共通しています。
一方、爬虫類の卵は硬い殻を持っています。陸上で産卵する爬虫類は、卵が乾燥しないように硬い殻を持つ必要があったのです(これは鳥類も同じ。鳥類は爬虫類から進化したことを暗示しています)。両生類の卵は水中ですので、乾燥対策の必要はないわけです(魚類も同様)。

このように、爬虫類・両生類がどういうものかがわかっていれば、ヤモリとイモリを混同する心配はないわけです。
それでも間違えてしまう、という人は、漢字の「家守」「井守」と結びつけて覚えてください! 家にいるのは「家守(ヤモリ)」、水場にいるのは「井守(イモリ)」、と暗記しましょう。

ところで、イモリというと「イモリの黒焼」というものがあります。そのアヤシイ雰囲気からヨーロッパの黒魔術っぽいイメージがありますが、実際は日本で江戸時代以降に現れたもののようです。ですから、西洋風ファンタジーでイモリの黒焼が出てくるのはかなり変なのです。
「イモリの黒焼」は「ほれ薬」なのだそうですが、実際にはそのような効果はありませんので詳しくは説明しません。興味のある方はネット検索でお調べください。


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