Vol. 378(2007/9/23)

[今日の勉強]バッタとキリギリスの違い

秋は直翅目の季節です。
「直翅目」とは、別名「バッタ目」という昆虫の分類群のひとつで、この中にはバッタやキリギリス、コオロギの仲間が含まれます。日本では基本的に春に孵化して、夏の間に成長し、秋までには成虫になり、冬には死ぬ、というサイクルを繰り返しています。体が最も大きくなるのは成虫の時ですので、秋に一番目立つことななります。また、成虫は翅があり、それを使って鳴くようになりますので、やはり秋に鳴き声がよく聞こえることになります。秋はまさに直翅目の活躍する季節なのです。

ところで、新聞やテレビを見ていると、バッタとキリギリスの区別もつかないような説明がされていることがあります。よくあるのは、キリギリス類を「バッタ」と呼ぶことです。まあ、どちらも直翅目なのでまとめて「バッタ」と言っても間違いではないのですが、それならばコオロギも「バッタ」と呼んでほしいものです。


ということで、直翅目の分類の話をすることにしましょう。
直翅目は大きく「バッタ亜目」と「キリギリス亜目」の2つのグループに分けることができます。

まず、「バッタ亜目」。これにはトノサマバッタ、ショウリョウバッタ、イナゴ、オンブバッタといったおなじみのバッタが含まれます。あまり有名ではありませんがヒシバッタ、ノミバッタなども含まれます。

「キリギリス亜目」にはキリギリス類、コオロギ類、カマドウマ類などが含まれます。
キリギリス類には、キリギリス、ウマオイ、クツワムシ、クビキリギス、ツユムシなどが含まれます。
コオロギ類にはエンマコオロギ、スズムシ、マツムシ、カンタン、カネタタキなどが含まれます。美しく鳴くことで知られる種類が多くいます。意外なことながらケラもコオロギ類の仲間です。
カマドウマ類はご存知の方も多い、屋内に入ってくる、翅の無いあの虫です。


さて、ここで「バッタ亜目」と「キリギリス亜目」の見分け方について説明しましょう。
見分け方はとても簡単、触角が短いのが「バッタ亜目」で、長いのは「キリギリス亜目」なのです。キリギリス亜目の触角はたいてい本体よりも長いものです。ケラはキリギリス亜目にもかかわらず触角は短いですが、これは例外。地中生活には長い触角は邪魔になってしまうのでしょう。
これから実物を見る機会があったら触角の長さを確認してみてください。あるいは、昆虫図鑑があればすぐに確認できるでしょう。

バッタ亜目とキリギリス亜目の違いは他にもあります。
例えば、キリギリス亜目は左右の前翅をこすりあわせて音を出します。バッタ亜目は前翅と後脚(または後翅)をこすりあわせて音を出します。複雑な音色を発することができるのは、ご存知のようにキリギリス亜目(特にコオロギ類)の方です。
また、耳の位置も違います。バッタ亜目の耳(鼓膜)は胸側面にあり、キリギリス亜目は前脚にあります。
これらの違いはぱっと見てわかりやすいものではないので、ちょっと実用性はありませんが…。

キリギリス亜目なのに「バッタ」と呼ばれることが多い種類は、キリギリスやクビキリギス、ササキリといった緑色のものであるようです。おそらく「緑色ならバッタ」という感覚なのでしょうが、実際には色と分類は関係ありません。色ではなく、まず触角を見るようにしましょう。


ところで、アフリカなどで大量発生するバッタのことを「イナゴ」と報道することがありますが、あれは「バッタ」と呼ぶ方が適切です。大量発生するバッタの種類はワタリバッタやサバクバッタといったものであり、イナゴではありません。


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