Vol. 380(2007/10/7)

[OPINION]自然観察会の難点

展覧会とか展示会とかコンサートとかスポーツ試合とか、世の中にはいろいろなイベントがあります。大きいものだと1日で万単位を動員するものも珍しくはありません(例えばプロ野球の試合)。
自然環境とか自然観察への興味を増してもらうためにそういうイベントを行うというのは魅力的ですが、なかなか簡単にはいきません。自然モノのイベントの代表は自然観察会ですが、これにはいろいろと制約があるのです…。

自然観察会では、参加人数に上限があります。何万人どころか、何百人という数でも容量オーバーです。講師1人当たり20人ぐらいが限界ではないでしょうか。これを超えると、声が行き渡らなくなり、移動する時の集団の統率も難しくなってきます。10人以上になったら講師の補助がいないとちょっとつらいです。
講師50人をそろえれば同時に1000人をさばけるぞ、と思いたくもなりますが、そうすると自然環境への負荷が大きくなりすぎます。公園(例えば東京でいえば代々木公園や井の頭公園とか)に同時に1000人もやって来たら、足下の植物はかなり踏み荒らされることでしょう。また、すごい混雑で観察どころではなくなります。

自然観察会は季節や時間や天候や場所を選ぶ、という問題もあります。
天気に左右されるのは、まあ、仕方がありません。小雨ぐらいなら決行するものです。
活動する時間が決まっている動物は少なくありません。例えば、夜行性のタヌキを昼間見るのはまず不可能です。昆虫の中には活動時間が決まっているものも少なくありません。ヒグラシは主に夕方に鳴きますし、コオロギ類は暗くならないと鳴きません。
季節の制約も大きな要素で、鳥の子育ての時期はかなり限定されますし、昆虫の場合も成虫が見られる時期はたいてい限定されるものです。

こう書くと制約ばかりでイヤになってしまいそうですが、そういう厳しい条件下でも「自然」はそこに存在しているのですから、説明することには事欠かないはずです。とにかくネタをたくさん仕込んでおくことは、自然観察会の講師には欠かせない仕事です。
それでも、多人数を受け入れることだけは難しいということは動かしようがありません。自然観察会というものは効率良く稼げる商売ではないのです。

アウトドアの自然観察会に比べて、インドアの科学実験イベントは恵まれているように見えます。季節とか天気といった自然現象に左右されませんので、同じシナリオを何度でも繰り返すことができます。
もっとも、参加者が多くなると講師の補助は必要でしょうし、機材をそろえるのも大変そうですが…。

それでも自然観察会が面白いのは、ハプニングがつきもの、ということでしょう。科学実験イベントのシナリオは一定であり、ハプニングは起こりえません(それにハプニング=事故となる可能性があるわけで…)。
自然観察会では、予期せぬことが必ずのように起こるものです。渡りの途中の鳥がいるぞ、とか、猛禽類が出た!、とか、でっかいイモムシがいたぞ!、とか、うわタヌキだ!?、といったサプライズが発生するのです。サプライズは発生しないこともありますが、立て続けに発生することもあったりで、何が出てくるかはお楽しみ!なのです。こういうのはすべてのイベントが事前に定められている映画やレジャーランドでは体験しえない面白さと言えます。
自然観察会は同じ場所で開催したとしても、季節や時刻や天気といった変化があるため、同じことが繰り返されることがありません。動物たちも現われる場所が固定しているわけではありませんので、それを探す面白さもあります。季節も時刻も天気も場所も、これらは難点ではありますが、同時に利点にもなりうるわけです。
そして、季節も時刻も天気も場所もどれも自然の現象(事物)であり、「自然」観察会の名にふさわしいものと言えるのではないでしょうか。そう考えれば、一見地味な自然観察会もなんだか壮大な気持ちを感じることさえできそうです。


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