Vol. 401(2008/3/30)

[東京タヌキ探検隊!]東京都23区内にもアライグマ侵入?!

「東京タヌキ探検隊!」(そしてNPO都市動物研究会)の関心はタヌキだけではありません。というのも、寄せられる情報の中にはタヌキに似た動物の情報もあるため、それらの動物のことも把握しておかなければならないからです。その「タヌキに似た動物」とはほとんどの場合、ハクビシンです。寄せられる情報から、ハクビシンはタヌキよりはおそらく数は少ないものの、タヌキ同様に23区内に広く分布しているだろうことがわかります。

タヌキは分類上では「食肉目」の動物です。食肉目にはイヌ、ネコ、クマ、イタチなどの動物が含まれます。東京都23区内あるいはその近辺に生息している食肉目には、タヌキの他にハクビシン、アナグマ、アライグマ、イタチといったものがいます。これらも広く言えばタヌキの仲間ですので、「東京タヌキ探検隊!」の守備範囲に入ります。食肉目というくくりで言うならば、ツキノワグマやアシカ・アザラシまでもその仲間ですので、やっぱり守備範囲なのですが、こういった種類はちょっと手に負えないかもしれません。「東京タヌキ探検隊!」の守備範囲は、主に陸生の中型小型の食肉目の野生動物、と言えばいいでしょうか。
人間にとって身近な動物であるイヌ、ネコも当然食肉目ですが、これらは飼育動物ですので対象外になります。ただし、タヌキを調査する時にはネコにも注目することが大切なので、ネコを見かけたらよく観察するようにしています。このあたりのことは近日発売予定の本の中に書いてありますので、そちらをご覧ください。

さて、東京都23区内に生息する野生の食肉目動物の中で最も生息数が多いのはタヌキであることは確実と思われます。その次はハクビシンです。
イタチは東京都23区内にも生息しているはずですが、今のところ目撃報告は来ていません。自然の水場が少ないため生息場所は限られているはずで、数はそれほど多いとは思えませんが、具体的な生息数は不明です。
アナグマは東京都23区内には生息していないと考えられます。

そして、アライグマです。
アライグマは、東京の近くでは鎌倉市で大繁殖して問題を起こしていることがよく知られています。近年はアライグマたちは鎌倉の外へと進出しているようです。鎌倉から東京へはかなり遠いように思えるでしょうが、実際は三浦丘陵を北上すれば、やがて多摩丘陵に達します。そこから東京都23区へはまだ遠いものの、アライグマが生息分布を広げていけば、いずれは到達可能な場所と思われます。
現在、アライグマが東京都23区内に生息しているという確実な情報はありませんが、断片的な目撃情報が無いわけではありません。昨年末、朝日新聞(東京版)に私たちのタヌキ調査の記事が載りましたが、その後に寄せられた情報の中に、アライグマとしか思えないものが2件ありました。それらの情報では、アライグマとタヌキを区別していましたので、タヌキの誤認ではなさそうです。これだけの情報ではアライグマの状況を把握することはできません。まだ危機的な状況ではないようですが、警戒を怠らず情報を収集しなければなりません。
また、2008年1月15日付け朝日新聞(東京版)に、横浜国立大学による外来生物の分布拡大予測の記事が載っていました。その記事の予測図によると、アライグマは鎌倉市を含む三浦半島から50年後には神奈川県全域さらに静岡県方面へと分布が広がるだろうとされています。東京都23区内については50年後も生息はないとの予測ですが、これはちょっと楽観的な気もします。私はアライグマの生態に詳しいわけではありませんが、アライグマの生息条件はタヌキに近いようにも思われます。タヌキが生活できるならばアライグマも生活できるかもしれません。その場合、アライグマが東京都23区内にも進出し、定着することはありえることです。


タヌキはOK(基本的に保護されるべき動物)で、アライグマはダメ(駆除の対象になる)、ということについて補足しておきます。
タヌキはずっと昔から日本に生息していた動物です。日本の自然環境を構成する一員です。対してアライグマはアメリカ大陸にのみ生息する動物です。日本には本来いない動物です。そんな動物が日本に入り込んだらどうなるでしょうか。ある場合では、繁殖できずに自然消滅してしまうかもしれません。しかしアライグマの場合はそうはなりませんでした。日本国内で数を増やしていったことは報道されている通りです。アライグマが増えた結果、似たような生態の動物たちが追いやられることになりました。アライグマに近い生態の動物とはタヌキ、キツネ、アナグマといったものです。つまり、本来の自然環境が変化してしまったのです。そのアライグマは人間によって持ち込まれたものです。アライグマたちが自主的に太平洋を泳いで横断してきたのではありません。このような人為的な自然環境の変化は好ましくない、というのが近年の環境保護の考え方です。それが反映されたのが「外来生物法」です。外来生物は駆除する、というのがこの法律の方針です(輸入させないことも重要な方針のひとつです)。

東京都23区内にアライグマが進出してきた場合、まずぶつかるのがタヌキであることは間違いありません。アライグマVSタヌキの問題が拡大する前に、アライグマの生息分布が拡大しないよう先手を打つことはどうしても必要なことです。そのためにもアライグマの目撃情報を継続して収集することは基礎的な研究として大切です。
「東京タヌキ探検隊!」もNPO都市動物研究会もタヌキだけでなく、アライグマやハクビシンなどの情報を集めているのはそういった理由があるからです。こういった動物(野生の食肉目動物)を東京都23区内(および周辺)で目撃することがありましたら、ぜひご連絡ください。

東京都23区内での最新のタヌキ情報については
東京タヌキ探検隊!
のページをご覧ください。

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