いきもの通信 Vol.402[今日のカラス]東京カラス問題2008 

Vol. 402(2008/4/6)

[今日のカラス]東京カラス問題2008

さて、今年も東京カラスの季節になりました。
まずは東京都の発表を見てみましょう。

「カラス対策の進捗状況をお知らせします」平成20年2月28日

2007年度は、これまでとちょっと違う傾向になったようです。

まず、カラスの生息数が増加しました。

16600(2006年)→18200(2007年)

そして、トラップによる捕獲数がかなり減少しました。

17391(2006年度)→10000(2007年度見込み)

また、都に寄せられるカラス被害の相談件数は減少しています。

2001年度3月末 3,800件
2006年度1月末 約900件
2007年度1月末 現在約750件

今回の発表でやはり目立つのは、カラスの生息数が増えていることでしょう。これはトラップ捕獲が始まってから初めてのことです。この数字だけを見ると、トラップによる捕獲も限界に来たのか、とも思わせます。
ただ、そもそどうやって生息数をカウントしているかが明らかでないため、どこまで信頼できる数値なのか不明です。数千羽程度は誤差の範囲内とも言え、「増加した」というよりも「生息数はあまり変化していない」と言った方が正しいかもしれません。

一方、トラップ捕獲数はきっちりと数えられる数なので過去との比較ができる確実な数字です。その捕獲数ですが、2007年度はかなり減っているのは誰が見ても明らかです。これはいったいどうしたことでしょう。都はその原因についてはっきりと説明をしていません。
そこで原因を考えてみることにしましょう。
まず、「カラスが学習してトラップにかからなくなった」と考えたくなりますが、うーん、それは考えにくいですね。なぜ今ごろになって突然学習したのか、説明がつきません。
別の原因候補は、捕獲期間の変化です。2006年度は通年で捕獲をしたらしいことは前にも書きましたが、2007年度はそれをやめて、以前通り春〜夏の間はトラップが稼働していなかったようです。その理由は不明です。都はこのことについてもやはり何の説明もしていません。
もうひとつ考えられるのは、トラップ設置数の減少です。トラップが設置され始めたのは2001年12月で、もう6年以上経過しています。トラップは木造で、ずっと屋外で雨風にさらされているのでメンテナンスされていなければそろそろ耐久限界が来てもおかしくありません。実際、私が最近見ることができた某所のトラップは、床が破損して穴があいていました。トラップは全部で120台あるはずなのですが、実際に稼働しているのはそれよりも少ないのではないか、と予想することができます。
ということを考えていたら、2008年3月26日付け朝日新聞夕刊(東京版)の記事にトラップの数が「60基」と書かれていました。本来の半数しか稼働していないのです。なるほど、これでは捕獲数が減っても当然です。雨風にさらされるきゃしゃな木造物の耐用年数が短いということは早くから予想できたはずで、更新(新築トラップへの置き換え)のタイミングを逸したのは都当局の失敗です。まあ、私としては無意味なカラスの犠牲が減ることになったことを歓迎しなければなりませんが。
同記事によると、更新できなかった理由は「対策費は年々減少」したからとのことですが、これもまた納得できることです。つまり、石原東京都知事は熱しやすく冷めやすいのです。カラス対策を開始した当初は石原知事はかなり力を入れていました。しかし、年数がたつにつれ関心を失っていったであろうことは容易に想像できます(それなりに結果も出せているので、知事本人の脳内では「成功」ということになっているのかもしれません)。ちなみに今、石原知事の中でブームなのは東京オリンピックであるのは確実です。ブームといえば新銀行東京もそうなのですが、こちらはあまり乗り気のしないブームでしょう。とりあえず残り任期の3年を乗り切れば逃げ切れると踏んでいるのではないでしょうか。
と、ここであることを私は思いつきました。都当局はわざとトラップの更新をしないでいるのではないでしょうか。都当局は実はカラス殺しをあまりやりたくなくて、石原知事が関心を失っていったことを口実にしてトラップ更新をサボタージュしているのかも…。もしそうならば、私は都当局を陰からこっそり応援しますよ!(笑)

さて、それはさておき…。
私が東京都のカラス対策に疑念を持っている理由は、都が具体的に何をやっているのか情報を明らかにしていないからです。トラップをどこに設置し、それぞれどれだけ捕獲をしているのか、生息数はどのようにして調べているのか、それ以外にはどのような対策活動を行っているのか、予算の具体的な内容はどうなっているのか、などなど…。こういったことを明らかにしなければ、何が対策として効果的だったのか、効果がなかったのか、検証することができません。都当局内部では検証をしているのかもしれませんが、検証は外部の第三者がクリティカルに行ってこそ、より意味のあるものになるのではないでしょうか。
そもそも、都行政は税金によって行われているものです。行政が何をやっているのか、納税者に公開するのは当然のことです。なぜ都当局が堂々と公開しないのか、非常に不思議なことです。まさか、どこかの知事のように「住民は何もわかっていないから知らせる必要がない」などと考えているのではないでしょうね。

都の発表からもうひとつ、「カラス被害の相談件数の減少」についても考察してみましょう。相談件数が減ったのはカラスが減ったからというのも大きな要因でしょう。しかし、カラスは半減したのに対し、相談件数はそれ以上の減少率です。このギャップはどこから来るのでしょう。これは、人々の関心がマスコミで取り上げられる頻度に比例しているのではないか、という仮説を提唱したいと思います。都がカラス問題に取り組んだ頃は、カラス被害についてニュースや新聞で取り上げられることが多かったように思います。そのため、多くの人に「カラス=悪役」のイメージができあがり、それが相談件数の上昇に結びついたのではないでしょうか。極端に言えば、屋根の上でカラスが「カァー」と鳴いただけで迷惑と思うようになっていたのではないでしょうか。ところが、現在はカラス問題が取り上げられることは滅多にありません。そうなると関心はあっという間に引いていき、カラスへの注目度も減少していくことになった。これが相談件数のいっそうの減少となっているのではないでしょうか。


東京カラス問題は成功しているように見えて、実際は多くの問題を抱え込んだままずるずると惰性で動いているような状況です。科学的検証の欠如、行政トップの個人的関心に左右される施策、行政の秘密主義…。この状態は、少なくとも次の都知事選挙が行われる3年後まで改善される見込みはないでしょう。このような自治体で生活せざるをえないというのはかなり不幸なことなのですが、ほとんどの住民はこのことに気付いていないでしょう。カラス問題や新銀行東京の件だけではありません。都政がどこかおかしくなっている、そういう認識を持つべきではないかと私は思います。


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