Vol. 406(2008/2/10)

[今日の観察]鳥の成長はとても速い

鳥のことを説明していて、時々驚かれるのは鳥の成鳥がとても速いことです。
身近な鳥で言うと、例えば…

ツバメは孵化から約3週間で巣から飛び立っていきます。
カルガモは孵化から6週間でほぼ親と同じ大きさ、模様になります。
カイツブリは孵化したその日から泳ぐことができます。そして、2〜3ヶ月ほどで親に頼らずに生活できるようになります。

これらの鳥は身近にいますので、実際に確認することができるでしょう。

他の例を挙げてみましょう。
ツルは孵化から数日で巣を離れます。その後は親といっしょに行動し、巣に戻ることはありません。当然、しばらくは飛べませんから歩いて移動します。これは、ツルが地面に巣を作るためで、いつまでも同じ場所にとどまっていては外敵に狙われてしまうのです。ですから幼鳥といえども移動して危険を回避しているわけです。
木の上に巣を作る鳥の場合は、飛べるようになるまで巣から離れることはできません。テレビでも見る機会があるコウノトリもそうです。他にもサギ類やウもそうです。これらの鳥が飛び立てるようになるには、孵化から数週間以上といったところでしょうか。一般に、体が大きいほど成長には時間がかかりますが、それでも数ヶ月以内には飛ぶことができるようになります。

この速い成長速度には理由があります。
渡りをする鳥の場合、初夏の頃に孵化したら、秋には渡りができるほどの体力を身につけなければなりません。このわずかな時間内に渡りをするための体にならなければならないのです。日本で生まれたツバメはその年の秋に南へ旅立っていきます。シベリアやオホーツク海沿岸で生まれたカモ類たちは、厳しい冬が来る前に南へ渡らなければなりません。彼らには急速な成長が必要なのです。
渡りをしない鳥の場合でも、いつまでも巣にい続けては外敵のターゲットになりやすくなるだけです。また、飛べない幼鳥に食べ物を運んでこなければならない親も大変ですしね。
鳥の急速な成長速度は、生存のための仕組みであると考えられます。

そんな鳥でも成長が遅い種類もいます。
南極大陸で繁殖するコウテイペンギン(エンペラーペンギン)は、孵化から巣立ちは約5ヶ月かかるそうです。また、ダチョウの飼育例を調べてみますと、孵化後1年でも成鳥よりは体格がやや小さいようです。
これは、一般的に「大きな動物は成長が遅い」ということを意味しています。哺乳類でもネズミとゾウを比べてみればよく理解できるでしょう。
コウテイペンギンとダチョウの場合は、生活する気候環境や外敵との関係もあるのかもしれませんが、今はそこまで分析している時間はありません。


さて、話を身近な鳥に戻しましょう。
ツバメやカルガモといった鳥の子育てを観察するのは、学校の理科教育向きの題材ではないでしょうか。ツバメは街中で子育てします。カルガモは水場が必要ですが、基本的に水面は見通しがいいので観察はしやすいでしょう。そして、巣作りに始まって幼鳥の巣立ちまで、長くても数ヶ月で完了します。学校の暦でいえば、ちょうど1学期に相当する時期です。授業でも取り上げやすいのではないでしょうか。
学校の理科での「生物の成長」というと、アサガオやヒマワリなどの栽培植物がスタンダードです。これには近くからじっくり観察できるという利点もありますが、花が咲くのが夏休みになってしまう、という難点もあります(これも品種の選び方があるのでしょうが)。一方、動物の成長ではどういう動物を使うのでしょうか? 昆虫とかカエルでしょうか。あるいは飼育しているウサギやニワトリでしょうか。それでもいいのですが、人間に介入されない野生動物=野鳥の子育てを観察するのも面白いのではないかと私は思います。
学校ではなくても、自然観察のひとつとして、このように手間をかけずに続けて観察をするというのは面白い題材でしょう。同じ個体をずっと見続けていくと、より愛着を持てます。生物や自然環境のことをより身近に感じることができるようになるはずです。


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