Vol. 444(2009/2/15)

[今日の天然記念物]東京都23区天然記念物巡りの旅・その1

「天然記念物」というと何を思い出されるでしょうか。
トキ、イリオモテヤマネコ、コウノトリ、ヤンバルクイナ、アマミノクロウサギ、オオサンショウウオ…こういったスターたちの名前が挙がってくるでしょう。天然記念物というと動物ばかりが目立ちますが、植物や地質鉱物もあります。例えば阿寒湖のマリモ、屋久島のスギ原始林、山口県の秋芳洞などなどです。
天然記念物は勝手に名乗っていいものではありません。「文化財保護法」という法律によって指定されなければなりません。なお、各地の自治体が独自に天然記念物を指定することもできますが、これは自治体の条例に基づくものです。文化財保護法の指定のものは「国の天然記念物」、県の指定のものは「県天然記念物」などと区別します。単に「天然記念物」と呼ぶ場合は普通、国の天然記念物のことを指します。

現在、国の天然記念物は約1000件あります。では、東京都23区にはいくつの天然記念物があるでしょうか? 1つも無い、と答える方がかなりいるのではないかと思われます。確かに、すぐに思いつくようなものはありません。東京都全体ならあるかもしれないけど、23区には無いよねえ…というのが普通の推論でしょう。
しかしゼロだと今回の話は成り立たないわけですから、天然記念物はあるのです。

調べてみたところ、23区内には次の5つの天然記念物があることがわかりました。

文化庁・国指定文化財等データベース

まずは西側から訪問してみましょう。


●三宝寺池沼沢植物群落

東京都23区にも天然記念物があるんだ、と最初に気づいたのがこの三宝寺池です。気づいたのはタヌキの本(「タヌキたちのびっくり東京生活」)を書いている途中でした。ですからもちろん、三宝寺池はタヌキと関係がある場所なのですが、それは別の機会に話すことにしましょう。

三宝寺池といってもピンとこない方が多いかもしれません。石神井公園の西側の池、と言えばわかる方も増えると思います。練馬区にある石神井公園は池がある公園です。東側の池は「石神井池」でボートに乗れる普通の池です。西側の池が天然記念物である「三宝寺池」です。
三宝寺池の周囲は林に囲まれていて、ここが23区だとは思えない景観です。三宝寺池はくぼ地になっていて、周囲の林は標高が高い位置にあります。そのため林の外側の建物はまったく見えません(まあ、近くに高層建築が無いからでもありますが)。
この池の何が天然記念物なのかというと、池の水棲植物群落が指定されているのです。三宝寺池の中央には小島があるのですが、その島と周囲にある植物群落に価値があるとされています。そんなに特別なものなのか?と思われる方がいるでしょうが、天然記念物とはそういうものです。
しかし、この植物群落が天然記念物指定当時の植物相をそのまま残しているかというとそうではないようです。水量・水温の変化でかつてとは異なった植物相になっているのが本当のところです。さすがにこれはまずいと思ったのか、10年ほど前に調査と維持作業が行われたようですが…。天然記念物というものは「手をつけてはいけないもの」という大原則があるため、状況が変化しても何もできない、ということが時々発生してしまいます。
それを差し引いても三宝寺池の自然環境は良好です。カワセミやバンがいますし、冬はオシドリ他カモ類がやって来ます。バードウォッチングにはちょうどいい場所です。

天然記念物の碑。右奥が植物群落の一部。

碑の隣の解説板。

(2008年8月撮影)


文化庁・国指定文化財等データベースより

三宝寺池沼沢植物群落
(さんぽうじいけしょうたくしょくぶつぐんらく)
東京都練馬区石神井台一丁目
管理団体:東京都(昭11・8・15)
指定年月日:1935.12.24(昭和10.12.24)

三寳寺池ノ小島ニアリ地面ハかきつばたヲ以テ被ハレ其ノ他みづがしは、みくり、てんつき等ノ濕草發生ス旧時ノ武藏野中著シキ沼澤植物群落ノ一部今日ニ残レルモノトシテ學術上有益ナルモノナリ


交通機関:
西武池袋線・石神井公園駅下車。三宝寺へは徒歩20分ぐらいか(直線で約1km)。意外と遠い。
バスはJR荻窪駅、JR阿佐谷駅から出ている。「石神井公園前」または「石神井公園」下車。これは石神井池の東端にあたり、三宝寺池から最も遠い。
JR阿佐谷駅、大泉学園駅、長久保<大泉>からのバスは「三宝寺池」で停車する路線もある。ここは三宝寺池の入口なので便利。


●練馬白山神社の大ケヤキ

天然記念物でよくあるのが巨樹です。このケヤキもそのひとつです。
白山神社は練馬駅から北西に行った所にあります。この付近はお寺が多いのですが、神社はここだけのようです。神社の本殿は高台の上にあります。
その階段の下に大きなケヤキの木がありました。

説明板によると、高さ19m、幹の周囲8mとのことです。確かに立派な大樹です。
ただ、隣で集合住宅が建設中、ブルーシートが風情ぶち壊しです。完成後も景観を損ねることになってしまいそうで心配です。

源義家が奥州征伐に行く時に植えたケヤキなのだそうです。ということは11世紀に植えられたことになり、樹齢1000年近くになります。近くで見ると確かに古い木であるのは間違いありませんが、本当に1000年かなあ…? 説明板によると鑑定結果は700〜800年とのことです。伝説の真偽はさておいても、相当古いのは確かなようです。

さて、説明板を読むとケヤキはもう1本あるようなのです。

階段を登ったところにもう1本がありました。まさか天然記念物が2本あるとは想像もしていませんでした。こちらは高さ14m、幹の周囲7.2m。(やはり隣のブルーシートが気になる…。)

根元に大きなこぶがあるのが特徴です。

(2009年11月撮影)


文化庁・国指定文化財等データベースより

練馬白山神社の大ケヤキ
(ねりまはくさんじんじゃのおおけやき)
東京都練馬区練馬四丁目
管理団体:(白山神社)
指定年月日:1940.07.12(昭和15.07.12)

根元ニ高サ約一メートルノ盛土アリ根元ヨリ一.五メートルノ高サニ於ケル幹圍約十メートルナリ 主幹ハ折レ東側ヨリ出デタル支幹之ニ代レリ 欅ノ巨樹トシテ有數ノモノナリ


交通機関:
西武池袋線・練馬駅、西武豊島線・豊島園駅、東京都営地下鉄・大江戸線・練馬駅または豊島園駅で下車。
練馬駅からは徒歩10分ぐらい。大江戸線・豊島園駅からは徒歩5分もかからない。


残り3ヶ所は次回に。


[いきもの通信 HOME]