[東京タヌキ探検隊!]ストリートビューも役に立つ
ストリートビューとは、パソコンの画面上で、実際の街中の風景を再現するネット上のサービスです。これはGoogleマップの機能のひとつで、地図とストリートビューを連動して使えるためとても便利です。
しかし新聞などで既に話題になっているように、家の中がのぞけてしまう、表札の文字が見える、通行人の顔が特定できる、自動車のナンバーが特定できる、などの問題が指摘されています。
そんな問題があるとしてもストリートビューは役に立ちます。東京タヌキの研究でも間違いなく役に立っています。
ストリートビューはGoogleマップの一部です。もちろんGoogleマップも役に立っているわけですから、まずGoogleマップから紹介しましょう。
Googleマップでまず使う機能が、「住所を入力するとその位置が表示される」というものです。
タヌキの目撃報告メールでは、目撃の丁目番地が記されています。その住所を入力すれば、その位置が表示されます。これは当たり前の機能ですが、住所データの入力にどれだけの手間がかかっていることか…。多くの人力を投入した力技であることが推測できます。
住所は完全でなくてもだいたいの場所が表示されます。間違った住所であっても、正解と類推される候補をいくつか並べてくれます。これによって、メールに書かれた住所が誤っていることが判明したりすることもあります。
地図を「航空写真」に切り替えると、植生がよくわかります。ひとつひとつの樹木の種類までわかるわけではありませんが、林か芝生かぐらいは一目でわかります。特に東京都23区は写真の解像度が高いのでかなり詳しくわかります。航空写真は暖かい季節に撮られているものを採用しているようで、葉がよく茂っているのがわかります。また、サクラの開花時期に撮影されたものが採用されていることも多いようで、見事な桜並木を確認することができ、この場合に限って樹種の特定ができます。
林の中はいろいろな生物がいるので、それを食べにタヌキがよく行く場所と考えられます。ですので、目撃場所の近くの植生を確認することも大切です。
Googleマップではその場所の緯度経度もすぐにわかります。
目的の場所をマウスで指して右クリック→「この場所について」を選ぶと、上の入力ボックスに2つの数字が表示されますが、それがその地点の緯度経度です(2009年8月現在。緯度経度を知る方法は他にもあり、また、これまでも何度か変更されてきた)。また、同時に地図左側にはその地点の住所も表示されます(これは2009年になってからの新しい機能だったと思います)。
「東京タヌキ探検隊!」で公開している生息分布の地図は、Googleマップで得られた緯度経度を元に作成しています。
これだけでもGoogleマップは十分に役に立つのですが、ストリートビューはこれらとはまた違った役に立っています。
これまでは現場の様子は航空写真から想像するしかありませんでした。しかし、ストリートビューならばその場に立っているかのように現場の様子をパソコン上で確認できます。現場に足を運ばなくてもある程度の情報が得られるのですから、これはとても便利です。
また、目撃位置を詳しく特定する際にも役に立っています。ストリートビューの画面に写っているものを目印に、目撃情報提供者とやりとりするのです。「トラックが停車している場所の後方xxメートル」とか、「赤い車がとまっている民家」といった具合にです。
もちろん、あらゆる道をgoogleカー(撮影車)が走っているわけではないので、役に立たない時もあります。例えば私道や生活道路にはあまり入っていないようですね。また、大田区のかなりの面積はまだデータがありません(これも2009年8月現在)。
ストリートビューの問題点は、視点が高過ぎることです。カメラはgoogleカー(普通乗用車)の上にすえつけられていますので、人間の目の高さよりもずっと高くなります。これは高すぎで、実際に現地に行ってみると、ストリートビューと実際の人間の目の位置から見える風景の印象が違っていて驚くことがあります。カメラの位置は人間の目の高さぐらいがいちばんいいと思います。これなら塀の向こうをのぞいたりする心配はありませんしね。
報道によると、2m45cmほどだったカメラの高さを40cm低くして再撮影する予定とのことです。これでもまだ高すぎるのですが、違和感は少しは薄れるかもしれません。
こういった最新のサービスを利用できるのは東京だからこそです。地図、航空写真の解像度は都市部ほど高く、ストリートビューのような最新サービスは最初は東京からスタートします。例えば福岡市のような大都市でも航空写真の解像度は低いですし、ストリートビューはまだ始まっていません(これまた2009年8月現在)。
動物の研究というと山奥か離島でやるものが多いでしょうが、そういう場所ではこのような最新テクノロジーの恩恵は得られません(それでも現在はGPSのおかげでずいぶんと助かっているはずです)。
東京都23区はどう考えても動物研究の僻地ですが、そのマイナスを最新テクノロジーが十分に補っていると言えます。