Vol. 471(2009/12/13)

[今日のテレビとか映画]鳥の効果音

テレビや映画のドラマなどに必須のもの、それは効果音です。
テレビでも映画でも、役者の発する声は別として、その他の音のほとんどは後から付け加えたものです。雨の音、風の音、自動車の音、電車の音、歓声、そして鳥や虫の鳴き声も後から足されたものです。
鳥や虫の鳴き声は、その状況を説明する役割があります。今回は鳥でその例を見てみましょう。


鳥の鳴き声は季節を表すことができます。

まず正月。
正月のテレビからはウグイスの「ホーホケキョ」という鳴き声がよく聞こえてきます。正月のイメージにぴったりのものとして私たちは認識しています。が、正月に本物のウグイスが鳴くことはないでしょう。実際はには2月ごろから「ホーホケキョ」と鳴きはじめます。ですから正月とホーホケキョの組み合わせは本当は正しくないわけです。
正しくはありませんが、正月とホーホケキョはまったくの誤りということでもありません。正月を旧暦と解釈すると、旧暦1月1日は現在ではだいたい1月下旬から2月中旬に相当します。これならばホーホケキョも正月になんとか間にあいそうです。
かつての旧暦のなごりが、現在のテレビの中でも生きているというわけです。
ただし、ホーホケキョは夏ごろまで聞くことができます。ですから舞台が春の場合でもホーホケキョが聞こえてもおかしくはありません。

夏といえばカッコウでしょう。
カッコウなんて1年中鳴いていそうなものですが、実は夏鳥で、夏に日本にやって来るのです。ですから、「カッコウ=夏」という公式は正しいのです。
ただ、どちらかといえば山にいる鳥ですから、都会の住宅地のドラマでカッコウが鳴くことはないでしょう。

秋はヒヨドリの「ヒー、ヒー」とうるさく鳴く声が季節感を感じさせます。都会でも普通に見られるので効果音としては使いやすいものです。
しかし、ヒヨドリは通年でいますので、季節に関係なく使ってもいいはずです。秋や冬に鳴き声が目立つのは、木の実に多数が集まって騒ぐからです。
カラスの「カーカー」という声も秋っぽい感じを出してくれます。しかししかし、カラスも1年中「カーカー」鳴いています。ハシブトガラスやハシボソガラスは秋から冬にかけては集団ねぐらを形成します。そのため鳴き声が目立つのです。これはヒヨドリの場合と同じです。


鳥の鳴き声は時刻も表します。

朝ならニワトリの「コケコッコー」が定番です。
ニワトリも朝だけ鳴くわけではありませんが、大音量は目覚ましとして非常に効果的で印象に残ります。そしてなによりも私たちの頭の中に「コケコッコー=朝」という公式が刷り込まれてしまっています。ドラマの場面で夕焼けのシーンがあったとしましょう。そこで「コケコッコー」という効果音が付いていたとしたら、私たちは違和感を感じるでしょう。

スズメの「チュンチュン」も朝の効果音の定番です。スズメも朝だけ鳴くわけではないので、昼や夕方の場面で使ってもいいはずですが、そういう例は少ないでしょう。

夕方を表す鳥の鳴き声というと、ここでもカラスが登場します。カラスも夕方だけ鳴くのではありませんが…。前にも書いたように、夕方になるとねぐらに集まるので鳴き声がうるさく感じられるのです。

夜に鳴く鳥もいます。たいていの鳥は昼行性ですが、夜行性の鳥もいます。
「ホーホー」と鳴くフクロウは定番ですね。
空を飛びながら「グェッ」と鳴くのはゴイサギです。
「ピー」と甲高い声を出すのはヒドリガモ(オス)です。ヒドリガモは昼ももちろん鳴きますが、静まった夜に響く声は遠くまで聞こえます。
私は福岡では川のそばに住んでいましたので、こういう鳴き声をよく聞いたものです。


ゴイサギやヒドリガモの例からわかるように、鳥の鳴き声は場所を表すこともできます。ゴイサギやヒドリガモの鳴き声は川や池が近くにあることを示すことができます。

カモメの鳴き声は海を表します。これはイメージ通りですね。
ただし、地域によって見られる種類が違いますので、どの種類のカモメの鳴き声を使うかは慎重に選ばなければなりません。また、渡りで見られなくなる季節もありますので注意が必要です。それから、ユリカモメのように川のかなり上流でも見られることもあります。
細かいことを考えると使いどころが難しい種類かもしれません。

トビの「ピーヒョロロ」という鳴き声も場所を表します。トビなんとどこでもいると思ったら大間違いです。トビは大きな川や海岸近くに生息しています。そういう場所で死んだ魚などを狙っているのです。


テレビドラマや映画を見る時には、画面だけでなく効果音にも注意を払ってみてください。場面の雰囲気を出すためにいろいろな効果音が付いていることに気づくでしょう。その中には鳥や虫の鳴き声もあるでしょう。その鳴き声の使い方が正しいかどうか考えてみるのも面白いものです。
ただ、気にしすぎるとドラマ本編を楽しめなくなる可能性がありますので、ほどほどにしておきましょう。


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