[今日の勉強]東京タヌキ研究のパソコン活用術
タヌキの研究というとローテクなイメージがあるかもしれません。まあ、実際に現場に足を運んで…ということは必要ですのでローテクな部分は必ずあります。部屋の中にいるだけでは研究はできないのです。しかし、研究成果を整理し、まとめ、書類を作るためにはパソコンの力が絶対に必要になります。今の時代、パソコンが扱えることは必須です。
私のタヌキ研究の重要な一部分は、主にメールで寄せられる目撃情報を蓄積し、分析するというものです。これは現場に足を運ばなくても調査研究ができてしまうという、動物学らしくないものです。学問的にはかなり異端かもしれません。この研究はパソコンなくしてはできないものです。私がどのようにパソコンを活用しているか、今回はそれを紹介しましょう。
もしあなたがパソコンを縦横無尽に使いこなしている方ならば、この記事は読む必要はありません。そうだなあ、まだパソコンをどう使っていいかわからない学生の方には勉強になる内容ではないでしょうか。
私が使っているパソコンはMacです。もう20年近くずっとMacintoshを使い続けていますのでWindowsを使う気にはなれません。ですが、ここで紹介することはWindowsでもできることばかりです。
また使用しているアプリケーションは私が使っているものであり、他にも同等の作業ができるアプリケーションはいろいろあります。参考として見てください。
まず最初は情報を収集するための窓口であるホームページを作らなければなりません。ホームページ上で、これこれこのような研究をしていて目撃情報を集めています、ということをアピールするのです。そうすればネット検索でこのホームページを見つけてくれた人が目撃情報を教えてくれるかもしれません。
ホームページを作るアプリケーションは「Adobe Dreamweaver」を使っています。ですが、私はもっと細かいレイアウト調整をするために、テキストエディタでHTMLを直接打ち込むこともあります。実は、現在の「東京タヌキ探検隊!」のホームページは、最初の大枠はHTMLを直接打ち込んで記述しています。今も微調整はHTMLを直接いじっています。そうしないとDreamweaverでも時々変なコードになってしまうからです。まあ、そういう細かいことには目をつぶってもいいのですがね。
ブログを利用すれば作業はずっと楽になります。文章や写真を貼りつけていくだけでできあがりますから。デザインもそこそこのものが用意されていますから楽ちんです。しかし、ブログでは情報量が多くなった時の情報整理が難しいですし、デザインに凝ることもできません。ですので私は昔ながらのホームページのスタイルでやっています。それでもCSS(スタイルシート)とか新しい技術は採用しています。
メールはGmailを利用しています。メールソフトは誰でも使っているので特に説明することはないでしょう。特別なテクニックといえば、タヌキやハクビシン関係のメールは、フィルターを使ってiPod touchにも転送するように設定していることぐらいでしょうか。
メールで得られた目撃情報はデータベース・アプリケーションに記録していきます。使用しているのは「Bento2」(ファイルメーカー)です。
以前はテキストエディタを使って、普通のテキストファイルとして記録していましたが、情報件数が数百を超えるとその管理は大変になってきます。また、記録された情報を元に統計処理をするにはテキストファイルではやりにくく、データベース・アプリケーションを使った方が有利です。
簡単な統計処理、例えば「2007年の板橋区のタヌキの目撃情報数」といったものはデータベース・アプリケーションだけですぐにわかります。もしそれ以上のことをするならば、表計算アプリケーションが必要になります。私が使っているのは「iWork」(アップル社)に入っている「Numbers」というアプリケーションです。
データベースのデータは表計算アプリケーションでも読み込めるように保存することができます。それを利用して、複雑な計算は表計算アプリケーションでやってしまうのです。例えば、グラフを描いたりするのは表計算アプリケーションの得意技です。
私の場合、さらに高度な使い方として、目撃場所の位置情報から生息分布のメッシュ地図を作ってしまう、ということをやっています。といっても、地図のグラフィックまで作ってしまうのではなく、それぞれのメッシュに入る数字を自動計算する、というものです。
もともとの位置情報は、緯度経度の数値としてデータベースに記録しています。それを計算して、どのメッシュに入るのか計算、それを積算して表として完成させるのです。その表を画面キャプチャして、Photoshopでメッシュ地図に重ね合わせて地図を完成させます(言葉での説明ではわかりにくいでしょうが…)。この作業は、白地図にひとつひとつ点を打っていく方法では効率が悪すぎてやってられません。タヌキだけでも400件もあるのですから!
表計算といえばビジネス向けアプリケーションの代表ですが、もうひとつの代表がワープロです。私が使っているのはやはり「iWork」に含まれる「Pages」というアプリケーションです。
「ワープロはやっぱりWORDだ!」という人は多いでしょうが、私に言わせるとWORDはレイアウトやデザインの細かい調整がやりにくく、不満足なデザインしかできません。Pagesは細かい調整ができるのでありがたいです。もっとも、WORDの問題点はフォントにこそあるのかもしれませんが…。
ホームページに掲載している東京タヌキの報告書や東京タヌキタイムズはすべてPagesで作り、PDFに出力しています。私はこれでもイラストレーターでありデザイナーでもあるので、レイアウトとデザインには気を使っています(例えば行間や余白にも)。
PDFはちゃんとした、見た目のいい書類を作り、流通させるにはとても良いファイル形式です。印刷しても良し、パソコン上で見るのも良し、あるいはiPhone/iPod touchなどのモバイル機で見ることもできます。「東京タヌキ探検隊!」では毎年の報告書や東京タヌキタイムズでPDFを採用しています。
ビジネス向けアプリケーションといえば、もうひとつ、プレゼンテーション・アプリケーションもあります。一般的には「PowerPoint」が有名ですね。しかし、私が使っているのは(ここでもやはり)、「iWork」に含まれる「KeyNote」です。私は講演などの機会が少ないのであまり使いませんが、そのめったにない機会で実用的に役立っています。プレゼンには必須の道具です。
ただし、プレゼンテーション・アプリケーションを使えるようになっても、上手なプレゼンができるわけではありません。上手なプレゼンをしたいのならば話術の訓練やコンテンツ(写真やイラスト)の収集方法を知ること、デザインの基礎知識の勉強の方がよっぽど大切です。
タヌキの調査ではビデオカメラで撮影することもあります。映像はわかりやすくアピールできるので、ビデオ編集ぐらいできなければいけません。
私が使っているアプリケーションはiMovieです。これはアップル社のパソコンには最初からインストールされています。多機能ではありませんが、私の場合は複雑なことをするわけではありあせんので、これで十分です。必要なカットだけを切り取って、MP4形式で保存するだけです。
完成した映像はプレゼンの時に利用しています。画面サイズを小さくしたMP4ファイルを作り、iPod touchへも転送しています。
この他には、静止画を加工したり、イラストを描くためにPhotoshop(アドビ社)も使っています。
ビジネスマンでもここまでパソコンを駆使している人はなかなかいないのではないでしょうか。職種によって必要とされるスキルは違いますので、すべてを一人でやらなければならないということはあまりないでしょう。ですので、それはそれでいいのです。私の場合は東京タヌキの調査研究のあらゆるシーンを一人でこなさなければならないため、このようなことになっているのです。
学生の方々は、「え〜、こんなに使いこなせないよ〜」と思うでしょうが、今は使えなくても、必要に迫られればいやでも覚えなければならなくなる時が来ます。その時は臆せずに、新しいことができると考えてチャレンジしてください。