今年もまた東京カラスの季節になりました。
2009年度分の東京都の発表は以下のページです。
「カラス対策の状況をお知らせします」(平成22年4月30日、東京都環境局)
都のカラス対策についての私からの苦情はいつもの通りなので、それは省略します。
まずは生息数の推移を見てみましょう。最初に数が減っているものの、その後は大きな変化はありません。だいたい2万羽前後で均衡してしまっているようです。つまり、現在の対策ではこれが限界ということをこれは示しています。
もうひとつ、捕獲数のグラフも見てみましょう。これを先ほどの生息数に加算してみると、毎年だいたい3万羽を超える数になります。つまり、カラスを捕獲(そして殺処分)しなければ、本来の生息数は3万羽程度のままだったであろうことがわかります。つまり、対策を打ち切るとまたカラスが増える、という結果になるのは目に見えているため殺処分を止めることができなくなってしまっているのです。都はこのままずっとカラスを殺し続けるしかないのです。
私たちは永久にカラスを殺し続けなければならないのでしょうか。これは非常に虚しいことだと私は思います。ただひたすら殺し続ける、これが行政のやるべき仕事なのでしょうか。誰か仕分け人を連れてきて、ばっさり切り捨ててほしいものです。
またこの結果は、都がこれまでやってきたことが根本的な解決になっていないことを示していると言えます。私が、そして私よりももっと信頼できる鳥の専門家の方々も対案を示してきたにも関わらず、都は安直な対策をごり押ししてきました。根本的な解決のためにはこれまでのやり方を批判的に検討し、専門家の意見を尊重することが必要だと思います。しかし都知事が替わらない限りそれは不可能なのかもしれません。来年の都知事選ではもう少しましな新知事が誕生することを願います。
都の発表にもありますが、「防鳥かご」は有望な対策です。これは単純なネットではなく、金属製のカゴ状のネットです。これは昨年も紹介しました。私も実際にあちこちで見るようになった印象があります。もっと普及することを願いますが、防鳥かごの問題は面積をとることです。東京都の住宅地は車1台しか通れないような狭い道路も多くあります。設置場所の確保が難点なのです。
さて、今回は私の主張の変更も述べなければなりません。
私はこれまでゴミの夜間回収を主張してきました。カラスは昼行性ですので、夜の間に回収してしまえばカラスは食べ物にありつけなくなります。カラスは食べ物のある地域へ移動していき、カラス問題は自然に解消するだろう、という理屈です。
しかし、夜間回収も必ずしも得策ではないことを私は認識せざるを得なくなってきました。カラスが夜活動するようになった、とかそういうことではありません。カラス問題ではなく東京タヌキの問題なのです。
現在、私は23区内某所でタヌキのためフンの長期調査を行っています。この調査はまだ始まったばかりなのですが、フンの中から人間由来物が出てくることがわかってきました。過去のフンの調査でもその傾向は見られていました。人間由来物とは輪ゴムやビニールといった人工物、生ゴミや食材ゴミなどの自然物(一部人工物も含まれる)といったものです。つまり人間生活に由来するもので、その大半はゴミとして出されるものであろうと推測できます。
どうやらタヌキが生ゴミを食べているのは確かです。ただし、その量はおそらくそれほど多くはなく、自然環境下の動物植物もよく食べているのは間違いありません。少量だとしてもタヌキが生ゴミを食べるのは、栄養や衛生の点から好ましいことではありません。野生動物が人間に依存してしまうのも良くありません。
タヌキは夜行性です。夜にゴミを出せばタヌキが興味を持ってしまうのは当然のことです。つまり、ゴミの夜間回収にも問題があるのです。
となると、最も効果があるのはやはり防鳥かごあるいは頑丈なゴミボックスのようなものということになるわけです。これならカラスもタヌキも手出しできませんから。
対策のポイントは「動物とゴミの接触を断つ」ということです。これを徹底できれば、ネズミ対策にもなるかもしれずより良い結果を期待できるかもしれません(ただ、現在の防鳥かごでは地面辺りの隙間からネズミは侵入できるかもしれません)。
東京都のカラス対策は、代わり映えのしない方法で代わり映えのしない結果しか出せていません。そしてカラスの命ばかりが無駄に消費されていくのです。こんなことを既に10年も続けているのです。こんな虚しい政策はもう終わりにすべきです。