Vol. 489(2010/7/18)

[今日のいきもの]床下のタヌキッティ

今年のスタジオジブリの映画は「借りぐらしのアリエッティ」だそうです。家の床下に隠れ住む小人たちの物語です。原作はメアリー・ノートン(Mary Norton)の「床下の小人たち」(The Borrowers、1952年)です。

床下というと、私のことですから何かの動物がモデルなのかな?とすぐに考えてしまいます。床下の動物といえばネズミでしょうか。普段は床下にひっそりと暮らし、時々人間の物を拝借する。姿を見られないようにする、見つかったら出て行かなければならない、といった小人たちの生活はネズミそのもののように思えます。

しかし、床下なら他にも思いつく動物がいます。東京タヌキ探検隊!の私がこういうことを書くわけですから、皆さんも予想通り、その動物とはタヌキです。
タヌキというと野山の動物と思われるでしょうが、建物の床下を巣にして、出産・子育てをすることがあります。現在の東京都23区内でもまれにそのような情報が来ることがあります。タヌキが出産・子育てをするには、雨風をしのげる安全な場所が必要になります。人間の生活圏ならば民家の床下はその候補としてとても有力です。ただし、最近の建物は床下がふさがれていることが多く、タヌキが入り込める家は少なくなっています。タヌキが都会で巣にしている場所は他にも側溝などが挙げられますが、目撃例が少なく、どこを巣にしているのかはいまだ謎だと言っていい状況です。

ちなみにハクビシンやアライグマは床下ではなく、上の方、天井裏・屋根裏にすみつきます。天井裏をネズミより大きな動物がどたばたと走り回るわけですから大騒音です。また、天井裏でフン尿をすると、天井板にシミが広がるだけでなく、悪臭に悩まされることになります。タヌキよりも非常にやっかいなことになります。
しかし、やはり最近の建物は天井裏・屋根裏に入り込む隙間もほとんどありません。ですから狙われるのは古い建物になってしまいます。

さて、「借りぐらしのアリエッティ」のモデルはタヌキなのでしょうか。原作はおそらくイギリスが舞台として想定されていますので、アジアに生息するタヌキがモデルということはありえません。では、タヌキに近い生態の動物はいるのでしょうか。
それがいるのです。それは皆さんもご存知のキツネ(アカギツネ)です。キツネもタヌキと同様に床下で出産・子育てをすることがあります。今でもイギリスの郊外の住宅地では、床下で出産・子育てをするキツネがいます。また、かつて明治時代の東京でも同じ光景が見られました。
ですから、小人たちのモデルはキツネかもしれません。

こんなことを考えながら映画「借りぐらしのアリエッティ」を見ると面白い発見があるかもしれません。これは人間と動物の関係性を暗示する物語なのかもしれません。

そして日本では、どこかのお家の床下で今年もタヌキッティが子育てをしていることでしょう。


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