Vol. 502(2010/11/28)

[今日の勉強]MacOS Xとネコ科動物

アップル社のパソコンMacintoshのOSは最近は「Mac OS X」という製品名になっています。そしてMac OS Xの各バージョンには動物の名前が愛称としてつけられています。それぞれのバージョンと動物名を並べると次のようになります。

10.0 Cheetah(チーター)
10.1 Puma(ピューマ)
10.2 Jaguar(ジャガー)
10.3 Panther(ヒョウ)
10.4 Tiger(トラ)
10.5 Leopard(ヒョウ)
10.6 Snow Leopard(ユキヒョウ)
10.7?(2011年発売予定) Lion(ライオン)

眺めてみればおわかりのように、ネコ科に分類される動物ばかりが登場しています。わかりにくい動物をまず説明しましょう。

Puma=ピューマは別名クーガー、mountain lion、 American lionとも呼ばれます。

LeopardとPantherはいずれもヒョウのことで、同一の動物を指します。なぜ同じ動物が2回も登場したのかは不明です。Pantherは「クロヒョウ」という意味もあるので別扱いということかもしれません。しかしクロヒョウは別種ではなく、ヒョウの体色のバリエーションでしかありません(毛色が黒だけで、模様がでない)。アップル社には動物分類学がわかる人がいなかったのでしょうか。

Jaguarは一見するとLeopardに似ていますが別の動物です。ジャガーはアメリカ大陸に、ヒョウはユーラシア大陸とアフリカ大陸に分布します。

上記の動物たちを分類から見ると、10.2以降はヒョウ属に分類される動物です。そしてヒョウ属はこれら5種だけしか存在しません。
残るチーターはチーター属、ピューマはピューマ属に分類され、いずれもネコ亜科に含まれます。ヒョウ属はヒョウ亜科に含まれます。ネコ亜科とヒョウ亜科では同じネコ科でも系統が異なるといえるものです。

アップル社がどのような基準で動物を選んだのかはよくわかりません。ただ、分類学的に考えたものではないようです。おそらく「かっこいいから」という理由だけで選んだのではないかと思われます。

それでは、もし次のバージョンでも動物を選ぶとすれば何が来るでしょうか。
ヒョウ属はすべて使ってしまいました。ヒョウ亜科だとウンピョウ、マーブルキャットの2種が残っています。アップル社がアメリカの企業であることを考えると、アジアにしか生息しないウンピョウは脱落しそうです。マーブルキャットはイエネコぐらいの大きさしかないのでこれも脱落。ヒョウ亜科からのノミネートはなさそうです。

ネコ亜科は約30種がいますが、おそらく見映えがいい動物が選ばれることが予想されます。これまで選ばれた動物は体格が大きく、頭胴長1mを超えるものばかりです。最大体長が1m以上になるものは、サーバル、ボブキャット、ヨーロッパオオヤマネコ、カナダオオヤマネコ、スペインオオヤマネコがいます。1mにやや足りないのがオセロット、アフリカゴールデンキャット、カラカルです。
ヨーロッパオオヤマネコ、カナダオオヤマネコ、スペインオオヤマネコ、ボブキャットはいずれもオオヤマネコ属に分類され、英語では「リンクスLynx」と呼ばれます。ヨーロッパオオヤマネコは「Eurasian lynx」、カナダオオヤマネコは「Canadian lynx」、スペインオオヤマネコは「Iberian lynx、Spanish lynx」が正しい英名ですが、これらをまとめて「リンクス」と総称します。ボブキャットは「Bobcat」ですが「Bay Lynx」とも呼ばれます。
Mac OS Xはワールドワイドな商品ですので、特定の地名がつく名前は採用されないでしょう。よって、アフリカゴールデンキャットは不採用です。ヨーロッパオオヤマネコ、カナダオオヤマネコ、スペインオオヤマネコは地名がついているものの、まとめて「リンクス」と扱えば問題ありません。またオオヤマネコ類は欧米での知名度が高いのもアドバンテージです。ボブキャットはオオヤマネコ類の1種ということで採用されにくいでしょう。

以上をまとめると、次に選ばれる動物の最有力候補はリンクス(オオヤマネコ類)であると言えます。体格も大きく、知名度も高いのがその理由です。
次点はサーバル、オセロット、カラカルです。このあたりになるとそろそろ知名度も体格も大きなものではなくなってきますので、ネコ科シリーズは打ち切られ、別の動物グループ、例えばイヌ科へ移ってしまう可能性も高いでしょう。その頃にはMac OS Xという製品名も変わってしまうかもしれません。iPhoneやiPadのOSである「iOS」との統合もあり得ます。動物名の愛称が使われなくなるかもしれません。


2012年3月1日 追記

OS X 10.8の名称は「Mountain Lion」になりました。これは上にも書いたようにピューマの別名です。どうもアップル社は動物学とか分類学とかの厳密性には興味がまったくないようですね…。別名が許容されるならcougar (ピューマの別名)も候補になります。ピューマはアメリカ大陸に生息していますので、アメリカ人にはなじみがある動物です。また、上では候補から外しましたが、ウンピョウ(clouded leopard) というのも「クラウド」つながりでノミネートしておくべきなのかもしれません。
アップル社の命名には一貫性がありませんので、予想をしたところで意味はないと思いますがね…。

2013年6月11日 追記

OS X 10.9の名称は「Mavericks」になりました。これはカリフォルニア州の地名です。「ネコ科はネタ切れ」と言われたりもしてるようですが、ネコ科は約40種もいますし、別名異名品種名も採用すればもっと数は増やせます。ですが、それらすべてがAppleのイメージ戦略にふさわしいわけでもないでしょう。ここらで路線変更というのも悪くない選択です。
ということで、このネコ科問題はこれにて終了です。


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