Vol. 508(2011/2/20)

[東京タヌキ探検隊!]東京タヌキを目撃できる確率は600人に1人

生息密度は800m×800mに1頭

東京都23区でタヌキを目撃できる確率はどれくらいでしょうか? タヌキを見たい!と思ってもなかなか見ることはできないもの。一方で、タヌキをよく見るラッキーな人もいます。実際のところの確率はどの程度なのでしょう。東京タヌキ探検隊!のデータベースなどから計算してみます。

期間を区切らないと目撃者は増えていきますので、「1年間での目撃確率」で計算しましょう。
東京都23区の人口は8,742,995人です(以下、人口、面積は2011年現在の東京都ホームページによるものです)。東京タヌキ探検隊!のデータベースによると1年間の目撃件数は2008年〜2010年の平均で153件です。ということは、57144人に1件の割合ということになります。かなり低い数字なのでびっくりがっかりしてしまいそうです。ただ、これはメールをくれた人の数です。タヌキを見ても何とも思わない人、タヌキを見ても見間違いだと思う人、タヌキを見てもネット検索をしない人、東京タヌキ探検隊!のホームページを見てもメールをくれない人などなどがたくさんいると思われるので、実際には2桁ぐらいは遭遇確率は上がるでしょう。ということは600人に1人ぐらいの確率、ということになるのではないかと推測できます。
これでも確率的にはかなり低い数字です。例えば小学校なら全校で数人はタヌキを直接目撃している可能性(伝聞情報は除く)があるというぐらいの確率でしょうか。

ただし、タヌキの生息分布には偏りがあることも考慮に入れなければなりません。東京都23区のタヌキの生息分布は、報告書にも掲載しているように北西に偏っています。
まず、タヌキが多い地域での遭遇確率を計算してみましょう。
目撃情報が最も多い練馬区は、人口709,598人で、目撃件数は2008年〜2010年の平均で26件です。これは27292人に1人ということになります。板橋区の場合は人口533,529人、目撃件数は2008年〜2010年の平均で22件。24251人に1人となります。上記と同じように2桁補正をすると、250人に1人ほどの確率になります。かなり改善してはいますが、やはり遭遇しやすいものではなさそうです。
逆にタヌキが少ない地域ではどうでしょうか。隅田川以東ではタヌキの目撃情報が極端に少なく、この地域では生息数も非常に少ないと予想できます。これらの地域では目撃確率は0に限りなく近いと言えます。
試しに江東区の場合、人口447,352人、目撃件数は2008年〜2010年の平均で0.33件(つまり3年間で1件しかなかった)であり、確率は1,355,612人に1人、2桁補正をしても1万3500人に1人しか目撃できません。これは練馬区・板橋区よりも2桁も悪い数字で、かなり絶望的です。


次はタヌキの生息密度を計算してみましょう。東京タヌキはどれだけの面積に1頭がいることになるのでしょうか。

東京都23区の面積は621.97km2です。生息数を1000頭と仮定すると、0.62km2に1頭ということになります。これは0.782km四方ということりなり、おおざっぱにいうと800m×800mに1頭となります。
練馬区・板橋区・杉並区の3区は目撃情報の約50%を占めていますので、500頭が生息していると仮定してみましょう。この3区の合計面積は114.35km2ですので、0.23km2に1頭となります。これは0.478km四方であり、だいたい480m×480mということになります。
江戸川区や江東区など隅田川以東の生息数が極端に少ない地域では、計算するまでもなく生息密度はゼロに限りなく近くなります。
以上のいずれの数字でも、東京タヌキの生息密度はかなり低いことがわかるでしょう。1000頭というととてもたくさんのタヌキがいるように思えてしまいますが、この面積で1000頭というのは非常に少ない数なのです。

生息密度の数字からは別のこともわかります。
タヌキの行動範囲は半径数百m程度とされています。800m×800mでは行動範囲を明らかに超えていますし、480m×480mでも広すぎるかもしれません。これでは他の個体と出会ってつがいになることは難しいでしょう。しかし現実のタヌキたちはちゃんと繁殖しています。これが意味するのは、タヌキの生息地には偏りがある、ということです。タヌキが多い地域と少ない地域があるのです。
収集された目撃情報からは半径数百mに1家族(つまり2頭以上)いると推測される例が多くあります。タヌキはおそらく生息しやすい場所に集中してすんでいるのだろうと考えられるわけです。

タヌキが生息しやすい場所、それは「緑地」であるのは間違いありません。
東京タヌキがすぐにも絶滅するようなことはないでしょう。しかし、長期的な生息を守るためには今存在する緑地を維持することは絶対に必要なことです。

東京都23区内での最新のタヌキ情報については
東京タヌキ探検隊!
のページをご覧ください。

[いきもの通信 HOME]