Vol. 509(2011/2/27)

[東京タヌキ探検隊!]タヌキVSネコ、勝負は既についている

2011年2月19日放映のTBS「飛び出せ!科学くん」という番組で東京タヌキが取り上げられていました(宮本は登場していませんし、取材の打診すらありませんでした)。
この番組中でタヌキとネコが争う場面がありました。それはまるでタヌキとネコが互角のような映像でした。
でも実際はそうではないのでんですよね…。タヌキとネコの関係を世界で一番多く観察しているのは間違いなく私です。過去にも書籍「タヌキたちのびっくり東京生活」や東京タヌキタイムズ2009年12月号、2010年8月号で報告しています。
今回はタヌキとネコの関係について正しく解説します。


普通のタヌキの研究というものは山中や山里などで行われてきました。そういう場所が最も観察しやすいからです。ネコの方はというと、野良猫が真面目に学問の対象とされることはほとんどありませんでした。また、ネコは人家の近くにしかいないのでタヌキと遭遇する機会はめったにありません。このような事情から、タヌキとネコが鉢合わせする場面を観察し研究した人はこれまでいなかったはずです。つまり、タヌキとネコとの関係性はこれまで注目されることもなかった現象だったのです。
ところが東京タヌキでは事情が違ってきます。東京都23区は面積の多くが住宅地です。そのためネコをあちこちで見かけます。そしてそこにタヌキもいるならば、タヌキとネコとの遭遇は日常的なものとなります。
宮本はそのことに気付き、特に注意して観察してきました。


結論から言うとタヌキVSネコは「タヌキが圧倒的に優勢」であり、これは間違いないことです。「飛び出せ!科学くん」で言っていることとは違うのです。

宮本が観察している状況は、「場所は地域ネコのエサやり場。そこにタヌキ家族が現れ、ネコのエサを横取りする。」というものです。
一般的な場合は次のようになります。ネコたちがエサを食べていると、突然食べるのをやめて暗闇をじっと見つめます。そしてネコたちはさっとエサから離れていきます。するとタヌキたちが現れ、エサを食べ始めます。私の観察ではこういう状況がほとんどです。

まれにネコが攻撃することもあります。タヌキが来てもエサの場所から離れず、威嚇したり、ネコパンチをしたり(当たらない距離であることがほとんど)しますが、結局はネコが引き下がります。このようなことをするのは気が強いネコだけで、弱いネコは近づくことはありません。
タヌキVSネコでは明らかにタヌキの方が強いのです。

この場所ではタヌキが同時に多数現れることもあり、少数のネコは数の上でも不利です。しかし「数が多いからタヌキ優勢」というわけでもなく、1対1でもやはりタヌキ優勢です。

ここで注意しなければならないのは、タヌキがネコを攻撃することはほぼない、ということです。タヌキたちは無言でまっすぐエサの所に行き、食べます。まるでタヌキはネコに関心が無いように見えます。威嚇すらしません。無視していると言ってもいい様子です。
タヌキがネコを攻撃することはありますが、非常にまれで、2010年の場合は2回しか見ませんでした。その時も、かみつこうと吠えただけで、実際にはおそらくかみついていませんし(ネコは無傷)
逃げるネコを追うこともありません。

ネコのエサが無い時にタヌキが現れることもあります。そのような場合は、ネコがそもそもその場にいないか、いたとしてもエサが無いので接近することもなく、何も起こらないことがほとんどです。ネコの機嫌が悪い時にタヌキが近づいてくると、ネコが威嚇の声を出したり、ネコパンチなどの攻撃をすることもあります。それでタヌキが帰っていくこともありますが、威嚇に逃げ出すというよりも、エサがないから帰ったというようにも見えます。

以上の観察例から「タヌキが圧倒的に優勢」ということがわかるでしょう。
そして「お互いに直接攻撃することは少ない」という点にも注目すべきです。タヌキもネコも相手を殺すような死闘をすることはありません。体格が近い相手と戦うことは自らもケガを負うリスクが高くなるからと考えられます。
ただ、私たちの見ていない所で死闘を繰り広げている可能性もありますが…観察例からはその可能性はゼロではないとしても非常に低いと思われます。


「飛び出せ!科学くん」ではなぜタヌキとネコが互角のように言ったのでしょうか。
ネコはタヌキが来る前に逃げ出すことがほとんどです。つまりタヌキとネコが近接している場面は非常に少なく、撮影していなかったのでしょう。また、カメラがタヌキばかりを狙っていると、ネコの動きは見落としてしまうものです。その結果、全体的な状況を把握できず、ネコがタヌキを攻撃する場面ばかりを撮ってしまうことになるわけです。
それに、ロケ隊は短期的に現場を見ているだけあり、生態学的な観察目的があるわけではありません。目についた面白そうな場面だけを選んで見せているにすぎないのです。
長期的な注意深い私の観察の結果とは違ったものになってしまうのも当然です。

テレビの言っていることがすべて正しいわけではありません。残念ながら。
私に話を聞きに来ればこのような誤りを放映することはなかったでしょうが、今回、私への取材は一切ありませんでした。テレビ局は取材不足・勉強不足だと再確認した番組でした。

東京都23区内での最新のタヌキ情報については
東京タヌキ探検隊!
のページをご覧ください。

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