Vol. 519(2011/6/19)

[今日のカラス]東京カラス問題2011

さて、今年も東京カラスについておしらせする季節になりました。

まず最悪のニュースから。
4月の東京都知事選挙で現職知事が再選されました。これによって、意味があるのかないのかはっきりしない都のカラス対策が継続されることは確実になりました。もう都知事本人も忘れてるんじゃないか?とも思えるのですが、「やめる」と言わない限りだらだらと続くのでしょう。
さすがに今回ばかりは引退かと期待していたのに残念です。さすがに4期続投は長すぎます。

次は、毎年恒例の都のカラス対策の発表です。
いつもなら、報道発表(プレスリリース)として公開されるはずなのですが、なぜか今年はそれがありませんでした。そのかわりに、都環境局のページでひっそりと公開されていました。このページには掲載日付が書かれておらず、いったいいつ公開したのか不明ですが、5月末〜6月頭のことだったようです。報道発表がなくなったということは、扱いが下がったということなのでしょうか。

カラス対策の状況について(東京都環境局)

この発表によると、生息数は20800羽で横ばい。捕獲数も17394羽でこちらも横ばいとなっています。
生息数は対策開始後の数年は減少しましたが、その後はずっと横ばいといえる数字です。捕獲トラップの効果はこのあたりが限界ということが示されています。

捕獲数は2008年(平成20年)以降増えていますが、これは壊れたりした捕獲トラップを改修したためと思われます。現在の捕獲トラップの数ではどんなにがんばっても2万羽以上の捕獲は無理でしょう。捕獲トラップの数を増やせば捕獲数は増えるでしょうが、それをなぜ実行しないのかがよくわかりません。これ以上予算を投入したくないということでしょうか。

苦情相談件数はずっと減少が続いていますが、これはマスコミで取り上げられる回数と相関関係があると推測されます。都の大がかりなカラス対策が始まった当時はテレビなどで取り上げられることが多かったので、それにつられて苦情も多かったのです。しかし、マスコミに登場する機会が減っていくと苦情も減りました。苦情の減少率に比べるとカラスの生息数はそれほど減っていません。


捕獲トラップが最初に設置されたのは2002年1月のことでした。これは2001年度にあたりますので、今年で10年が経過したことになります。

毎年言っていることの繰り返しになりますが、都のカラス対策は正しいのでしょうか? 他に方法はなかったのでしょうか? カラスを殺すことが本当に正しい対策だったのでしょうか? 
また、都のカラス対策は科学的な事後検証がなされていないため、効果があったのかなかったのかがあいまいなままです。

カラスの生息数と苦情件数が相関していないことにも注意を向けるべきです。「カラスが存在しているから苦情がある」のではなく、「カラスの害があるから苦情がある」と見なければなりません。それは主に「ゴミが荒らされる」と「巣に近づくと攻撃してくる」の2つです。前者の場合は、ゴミにカラスが近づけないようにする工夫をすることで解決できます。後者は期間が限定される害ですが、周辺に注意を喚起することなどでトラブルを避けることができるでしょう。
カラスを殺さなくても害を減らすことは可能なのです。

それにもかかわらず、硬直した都政では対策の見直しは行われないでしょう。都知事の権力は圧倒的に強く、対策はこのまま4年間継続されるのは目に見えてます。都議会も都知事の前ではしっぽを振るばかりです。
また無駄な4年間が続くかと思うと憂鬱になってしまいます。


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