Vol. 538(2012/2/26)

[今日の事件]鹿児島県でマングースが分布拡大

ジャワマングースは南アジアや東南アジアに生息する動物です。ハブやコブラと対決する見世物でも有名な動物です。また、ジャワマングースはネズミやハブなどを駆除する目的で沖縄島や奄美大島に持ち込まれてきました。ところがジャワマングースはヤンバルクイナやアマミノクロウサギといった希少な動物をも食べてしまっていたのです。農業被害とはあまり関係のないケナガネズミや、カエルなども食べています。つまり外来種によって自然生態系が脅かされているのです。
そのため、ジャワマングースは外来生物法によって特定外来生物に指定され駆除の対象になっています。

ジャワマングースはこれまでは沖縄県、鹿児島県の島嶼部だけに生息していました。
ところが、2006年から鹿児島県の本土部で目撃されるようになり、2009年6月には鹿児島市喜入地区で捕獲されました。その後も喜入地区で115頭を捕獲されましたが2011年度には捕獲数がゼロになり、厳冬のために絶滅したのではないかと言われました。
ところが2011年12月、ずっと北の薩摩川内市高江町でジャワマングースが目撃され、2012年2月4日には1頭が捕獲されました。
鹿児島市喜入から薩摩川内市までは40kmほども離れています。東京都心からだと八王子市辺りまで行ってしまう距離になります。この距離を数年でたどり着くのは確かに難しいことです。
2月16日の鹿児島県マングース生息確認調査・防除事業検討会では、「以前より定着」「周辺地域で繁殖」「鹿児島市喜入地区から分布を拡大」「人為的持ち込み」の可能性が示されました。

人為的持ち込み説には私は賛成しません。
そもそも、これまで喜入だけで捕獲されているというのは非常に不自然なことです。数年で100頭以上も捕獲されているということは、既にその周辺地域にも多数生息していると考えるのが当然です。
薩摩川内市に1頭だけしかいない、ということも不自然です。1頭が生息しているということは、他にも生息している可能性があると考えるべきです。
また、「ジャワマングースは長距離移動しない」と言われているようですが、これも本当でしょうか。ほとんどのジャワマングースが長距離移動しないとしても、まれに長距離移動する冒険者がいるかもしれません。あるいは世代交代しながら何年もかかって移動してきたのかもしれません。
これらを考えると、ジャワマングースは鹿児島県西部では広く定住・繁殖しているのではないかと疑うべきで、調査や駆除もそれを前提とすべきです。おそらくマングースは2006年以前から定住を開始していたのではないかと予想されます。

県当局などはこれまで目撃情報が無いことからジャワマングースの生息地が限られていると考えたのかもしれませんが、もしそうならばその推測は誤りです。
「目撃が無い」=「生息していない」ではありません。人口密度が低い地域では目撃されずに見逃されている可能性が非常に高いです。イタチなど他の動物と誤認されてきた可能性もあります。
県当局は目撃情報収集のやり方を再考した方がいいかもしれません。

タヌキもジャワマングースも分類上は同じ食肉目に属します。体の大きさも近いです。ただ残念ながら東京タヌキ探検隊!の経験(つまり私の経験)はあまり役に立たないでしょう。
東京都23区は人口密度が非常に高いため、人間と動物が遭遇する確率も高くなります。そのため「目撃情報のメールを待つ」という消極的な方法でもそこそこの目撃情報数を収集できるのです(他にも、ネット検索で上位に表示されるといったことなども有利に働いている)。鹿児島県で(いや、鹿児島県に限らず大都市圏を除くすべての地域では)「目撃情報のメールをください」と呼びかけても統計的に十分な量の情報は集まらないでしょう。そのために広報宣伝にコストをかけるのも無駄な出費です。
ジャワマングースが定住しているとしても、生息密度はまだ非常に低いはずです。これも目撃される確率を下げる要因になっています。
ジャワマングースの場合は「目撃情報を待つ」という受動的調査ではなく、広範囲に調査員を送り込んで痕跡の捜索や聞き取り調査を積極的に行うべきです。今それを行わないと、後でもっと大変なことになるでしょう。薩摩川内市内の一部では聞き取り調査を行うことになっているとのことですが、全県レベルで実施することも考えるべきです。

これまでジャワマングースは本土では寒くて越冬できないと言われていました。今となってはそれは誤りで、九州南部なら越冬可能であることは確実と思われます。やはり南方系のハクビシンが関東地方で生息していることを考えると、もっと分布を広げることができるだろうと予想されます。
アライグマのように手遅れになる前に、行政は有効な対策を実行できるでしょうか。


東京タヌキ探検隊!は、東京のタヌキだけでなく、東京以外の、タヌキ以外の動物も調査研究の対象にしています。具体的には中型哺乳類すべてが対象です。その例としてタヌキ、ハクビシン、アライグマ、アナグマ、キツネを挙げてきましたが、ジャワマングースも当然対象に含まれます。ジャワマングースを目撃されたならば、まずは県へ連絡することをお勧めしますが、東京タヌキ探検隊!にもぜひしらせてください。
(今回のニュースの件もデータベースに記録しました。(DBN1949、DBN1950))


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